映画「PERFECT DAYS」
古びた畳の部屋で、暗闇の中、ベッドサイドランプに照らされながら、
読書する役所広司の姿が映る予告編に興味を惹かれたのと、
ダンサーの田中泯さんが出演すると知って、
先日、「PERFECT DAYS」を観に行った。
スクリーンには、東京の公衆トイレの清掃員である
平山の単調な日常が映し出される。
古びたアパートで、日が昇る前に起床して、
朝は、缶コーヒー1本で仕事に向かう。
仕事が終わったら銭湯の一番風呂に入って、
行きつけの居酒屋に行く。
平山の部屋は、大量の本と、彼が育てている
植物が置かれていて、とてもシンプルだ。
確かに、こんな暮らしがしたい。
だけど、ひどく孤独な生活だ。
平山の日常には時折、様々な年代の美しい女性たちが
登場する。
村上春樹の小説か!とツッコミを入れたいくらい、
彼女たちは平山に友好的だ。
平山は女性達にいやらしい下心丸出しで接したり
することはないけれど、見ているこちらが恥ずかしくなるくらい
子供みたいに素直に女性達を見つめているのである。
そういった意味で孤独と切なさを内包した人生の
美しい瞬間だけを写した映画だと思う。
また、田中泯さんの身体の動きは勿論、存在感があった。
何故、歩いたり、腕を上げたりするだけで、
心にジーンとくる表現が生み出せるのだろうか。
この映画を観た日から、私も街中で木漏れ日を
探し出すようになった。