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お気持ち優先時代の怖さ

一昨年に私の住む家から車で10分くらいの所で悲惨な事件があった。その事件の第一審の判決が正に今日言い渡される。それに伴いここ数日ニュースになっていた。記事をそのまま引用する。

愛知県一宮市の自宅で2022年、当時0~5歳の娘3人を絞殺したとして、殺人罪に問われた遠矢姫華被告(29)の裁判員裁判の判決が11日、名古屋地裁で言い渡される。検察側は子どもたちと無理心中を図ったとして懲役25年を求刑。遠矢被告は法廷で「育児に悩んでいた」と話し、弁護側は心神喪失の状態だったとして無罪を主張している。

食へのこだわり 市販品ほとんど使わず

 「こんな母親でいいんだろうか」「追い詰められていました」  同地裁で5月に行われた被告人質問。満員の傍聴席の前で、遠矢被告は涙を流しながら、か細い声で語った。  公判で取り調べられた証拠などによると、遠矢被告は16年3月、21歳で結婚。同年11月に長女・姫茉梨(ひまり)ちゃん、18年12月に次女・菜乃華(なのか)ちゃん、21年4月に三女・咲桜(さくら)ちゃんを出産した。  長女を産んで数か月後、産後うつを患ったが、母乳への薬の影響を恐れるなどして4か月ほどで通院をやめた。21年11月に次女に食べ物のアレルギーがあることが分かると、食事への問題意識が強くなり、市販品をほとんど使わず手作りにこだわるようになっていったという。

事件当日 食事する娘の動画

 事件の数日前。「時間管理できない主婦」「親が無知すぎる」――。遠矢被告のスマートフォンの検索履歴に、子育てに悩んでいるような文言の内容が増えた。同じ頃、日本地図を模したパズルで子どもと遊んでいる時に、都道府県の名前を聞かれて答えられなかったと涙を流す様子を当時の夫が目撃している。遠矢被告は法廷で「自分には教養がなくて悩んでいた」と振り返った。  事件前日には、実父に「どうやって死のうか頭によぎる」などと長文のLINEを送り、心配して電話をかけてきた実父に対し、3時間近くにわたり悩みを語った。  「私、やっぱり無理かも」。事件当日の22年2月10日朝、実父にLINEを送った後、普段は子どもに与えていないレトルトカレーやドーナツ、ファストフード店のおもちゃ付きパンケーキなどを買った。遠矢被告は「自殺しようと思って、最後に子どもを喜ばせたかった」と振り返る。  遠矢被告は同日午後1時50分頃、長女と次女にパンケーキを食べさせ、その様子を撮影。スマホには、2人が食事する様子の動画と三女の声が残されており、これが3人の生存を最後に確認できる証拠となった。

コードで首絞める

 遠矢被告の供述によると、食事後に三女、次女、長女の順に2階の洋室に連れて行き、コードで順番に首を絞めて殺害。その後、自身も包丁で手首を切ったり洗剤を飲んだりしたが、死ねなかったという。  裁判の争点は、遠矢被告の責任能力の有無だ。検察側は、遠矢被告がまじめで頑固な性格のために悩みを募らせ無理心中を図ったとして、自分の行為の意味や違法性も理解しており、完全責任能力があると主張。  一方、弁護側は、両親との関係性が希薄だった生い立ちや過去の産後うつの影響などで、殺害時はうつ状態にあり、責任能力はなかったと訴えている。遠矢被告も法廷で、弁護人の質問に対し、子どもたちを手にかける直前に「死んだら楽になる」「(子どもたちを)置いていくな」という声が頭から聞こえたと説明。「(殺害時は)自分が自分の体から離れてフワフワしているようで現実感がない」状態だったと話した。  「重大なことをしてしまい、申し訳ありません」。最終意見陳述では、1分近い沈黙のあと、言葉を絞り出すように語った遠矢被告。有罪か、無罪か。裁判員は難しい判断を迫られる。

読売新聞オンライン 2024年6月8日

どうもマクドナルドのパンケーキだったようだ。被告の自宅のすぐ近くに店があるのを知っているので、胸がギュッとなった。こちらのニュースはヤフーに転載されコメント欄が開放されている。上から5つのコメントを引用する。

私も下が2歳の時に離婚して、3人の子供を1人で育てました。親も居なく、学もなく、ほんとに辛かったです、この歩道橋から飛び降りたら楽になれるとかよく思いましたが、3人の子供が私の帰りを待ってるって思うと死ねなかった。 寝顔みながら何度も泣きました。 生きてれば、どんな仕事しても子供のためなら頑張れました。 今まさに、大変な思いをしてるお母さんが沢山 いると思います。頑張っても頑張っても報われないこともあるかもしれないけど、いつか良かったなって思える日が絶対に来ます! 何とか乗り越えて欲しいです。

ヤフーコメント欄

本人は有罪実刑でも当然の報いと思っているかもしれない。うつの重さにもよるが責任能力はあると判断される可能性が高いかもしれない。さすがに25年の求刑通りではないと思うけど。 昔病気をしたときに主治医から聞いた経験でしかないが、うつはある種の脳疲労であり、自分の思考を見直す・軌道修正するというエネルギーがなくなり、思考が暴走・突如停止するので、対応をおろそかにすると極端な場合今回のような事件や自殺を結論として導き出すような状態にたどり着くことがある。 多くは休養、薬物投与及び心理療法を通じて、社会生活するうえで許容できる程度で復活できることが多いけど、今回はそれができない家庭状態だったのか。 何度か思考を見直す・軌道修正する(もしくは誰かが介入する)チャンスがあったのかもしれないけど、今となっては家族もつらいし本人もつらいし、子供は帰ってこない。

ヤフーコメント欄

辛い事件ですよね。 母親に殺された3人のお子さんが可哀想なのはもちろんだけど、 このお母さんも21才で子供を産んで8年間、一生懸命育児してきたんだろうと思う。 うちにも21の子がいるが、まだまだ経験不足で子育てするならサポートは必須だと思う。 8年で3人というと、妊娠してるか乳児を抱えてる期間が大半なわけで、まだ若いお母さんが疲弊してしまうのもわからなくない。 健康とか教育とか、子供に対して責任感が強く真面目だったからこそ悩みが深かったのかなと思う。 コロナで小さな子を抱える母親が孤立したのもあるんじゃないか。 いつも思うのだけれど、子育て一段落した親に乳幼児を抱えるお母さんが気軽に助けを求められる仕組みがあったらいいと思う。 子供を病院に連れてくとか、買い物とか、風呂に入れるとか、3人いたら大変すぎることが子育て経験者なら容易に想像つきますよね。

ヤフーコメント欄

この事件が起きたとき、私は2人目を産んで育休中で、1人目は保育園に行けてましたが、まん延防止で登園自粛のお願いが来たときでした。 なんでも自粛で児童館とか保健センターとかも閉館で、孤独で、明日は我が身だなと震えてました。 今は元の生活に戻ってきているので、悩んでるお母さんお父さんは役場とか保育園とか児童館とか頼れるものはどんどん頼ってほしい!

ヤフーコメント欄

娘さん3人を殺めてしまった事は許される事じゃない。 ただ母親に対する同情の気持ちもあります。 僕の弟の嫁さんも3人目の子供を出産した後にかなり酷い産後鬱になった。 まるで人格そのものが変わってしまったかの様に突如として行動や言動が凶暴化したり、意味不明な言動を繰り返したりと実際にその様子を見た僕も余りの変わり様にとても恐ろしくなった記憶があります。 家族総出で弟嫁に寄り添い、弟嫁に代わり子供3人の面倒を見たりしましたが最終的には精神病院に3ヶ月入院して快方に向かってくれ、今ではあの時の鬱状態は家族全員が悪い夢を見ていただけなんじゃないかと思えるくらいまでに回復してくれました。 だから何故この母親の家族はもっと彼女に寄り添い助けてあげようとしなかったのか?それこそ医師の手を借りてでもまずは母親を助けてあげるべきだったのではないかと思ってしまいます。

ヤフーコメント欄

う~ん、違和感がある。子ども3人を故意に殺害したという事実の割には同情論が多い。完全に被告を罵倒するコメントは上の方には全く見つからなかった。

別件で子育てに関するニュースで先週世間を騒がせたものがあった。そちらの方も同様に引用させて頂く。

「あの動画を投稿してから色々考えたんですけど、もう全て僕の責任です。いま現時点も、このYouTubeの動画を撮っていいのかもわからないまま撮影しています」

6月3日に公開した動画で、こう謝罪したのは家族YouTuber「ラウなのファミリー」の父親。騒動の発端は、5月24日に投稿された「炎天下の中…2歳娘が車に閉じ込められました。」と題する動画が炎上したこと。同月31日に反論動画を出していたが、どちらも予告なく削除され波紋が広がっていた。
車内に閉じ込められたのは、2歳の長女・なのはちゃん。0歳の次女・ふわりちゃんを後部座席のベビーシートに乗せようと、目を離した隙になのはちゃんがリモコンキーでロックを掛けてしまったという。しかし、父親は炎天下の車内で子供が閉じ込められている様子を、30分以上にわたってカメラを回していた。

最終的には祖母が呼んだ知り合いの整備士によって救出されたが、死の危険があったにもかかわらず撮影を続けていた父親に批判の声が相次いだのだ。 31日に投稿した動画では、父親が「皆さんを不快にさせてしまう映像を流してしまって本当に申し訳ございません」と謝罪。だが母親は、多く寄せられた「JAFをなぜ呼ばなかったのか」のコメントに対して反論。過去にJAFを呼んだ際に長時間待たされた経験から、「JAF信者多いのかな」「ママ的にはJAF全然信用ならんのよ」などと持論を展開していた。
この動画にも“逆ギレ”と批判の声が殺到し、動画は3日までに削除されていた。そうしたなか、改めて謝罪動画をアップした「ラウなのファミリー」。動画の概要欄には、「※この動画は収益化しておりません」と記されていた。両親ともにお揃いの黒いTシャツで登場し、父親は沈痛な面持ちで冒頭のように語り始めた。
続けて「これからSNSの活動を続けるかどうかも、もう考えれない状態です。もう何が、何をどうすればいいのかもわからない状態です」と、困惑している心境を吐露。母親も「私もみなさんへの配慮が足りなかったこと、色んな反省点を含めて謝罪したいと思いました。申し訳ございません」と、詫びていた。

そして10秒ほど沈黙した後に、父親は「自分の立場や子供に対してどうあるべきかっていうところに関して、改めて考え直したいので、申し訳ございませんが、少しお時間をいただきたいです」とコメント。応援してくれている人からはダイレクトメッセージも寄せられているというが、「どれぐらい時間がかかるか、いま現状、全く分かりません。少し夫婦で話し合って、頭の中の整理がつくまで待っていてくださると嬉しいです」と呼びかけていた。 父親は言葉を選びながら慎重に語っていたが、どのような点を反省しているか、なぜ動画を削除したのかなど、具体的な事柄には触れていなかった。不明瞭な内容の動画に疑問を抱いた人も少なくないようで、コメント欄の書き込みはすでに4700件を超えており、厳しい声が相次いでいる。
《戻って来るつもりなの?(驚)》
《なんか終始ダルそうな顔 謝っときゃいいや~じゃないのに 謝罪動画もいらんから子ども大切にしてあげてください、、》
《奥さんの逆ギレ動画が完全に火に油注いだよね あんなに逆ギレしてたのに1、2日で反省したと思えない》
《内容が薄過ぎる 何で炎上したのかも分かってなさそうやな》
《もちろん子供が今命の危機に晒されてるのを動画に晒すのもありえないけど、その後の動画で逆ギレ動画あげるのもよくない。視聴者さんへの謝罪もいいけど子供を本当に本当に大切にしてあげてください》
《2度と活動しないことが最善だと思います》

女性自身 2024年6月4日

私はこういう炎上系の人たちは大嫌いだし、この一連の出来事も理解に苦しむ。ただ同時に一定の人数このような人が出現するのも仕方がない気持ちもある。ある意味でたくましいとも感じるし、承認欲求が生まれるのも人間の自然な感情だからである。しかしその状態に依存しているとも感じられるので治療や専門家を頼った方が良い段階なのかもしれない。とにかく子が助かり保護者も一定の反省は示している。最悪の結果にならなくてよかったと思う。
そしてこちらのニュースにも、一宮の事件と同じくらいの数のコメントが付いていた。同じように上から5つ引用する。

普通の考えなら炎天下の車内に子供が居たら撮影する度胸なんて無いと思うのだが。それに知り合いの整備士呼ぶくらいならJAF呼んだ方が手っ取り早いし、それが最善の策だと思います。確かに誹謗中傷や度が過ぎた批判があってもダメだけど、これに関しては批判が沢山来ても仕方ない。この件に限らずに年代問わずネットリテラシーを守れない人はSNSには触れないのが一番。

ヤフーコメント欄

これみんな怖いって思ってるのは、炎天下の車内に子供閉じ込められてるのに、撮れ高優先にして撮り続けてるこの父親の神経だし。 普通ありとあらゆる事やって助けようとするでしょ。JAFだって呼ぼうとするだろうし、信頼できないとかじゃなく。 なんかお詫びしている内容が色々ずれてるし、本来はお詫びするような事でもないよ。自分自身で反省して心を入れ替えれば良いこと。それなのにわざわざお詫びの映像まであげちゃって。だからこの人たち理解出来てなさそうだし、また同じ事しそうってみんな思ってるんじゃないの。

ヤフーコメント欄

YouTuberって登録者に飽きられないように 常にネタ探しのプレッシャーを知らず知らずのうちに自分に掛けているんだと思う。 ちょっとしたことでも「これは使えそう」と すぐ動画を撮影しアップする。 それが習慣になってしまっていて 自分の子供が生命の危険に晒されている状況でも 親の立場を忘れてYouTuberとしての立場が 優先されるようなおかしな精神状態になっている。 一度冷静になって考えるべきだろうね。

ヤフーコメント欄

30分なら本当に「死ななくて良かったね」のレベルだと思う。「JAFはあえて呼ばなかった」みたいな書き方してるけど、慌てて頭に無かったんじゃ無いなら、遅かろうがまず呼ぶべきでしょ。その上で知り合いの整備士呼べば良いんだし、そもそも冒頭部分にホンダの作業着来た業者さんに工具借りて窓割れば良かったのに。 子供の為にも一般社会で普通に働いて、普通の感覚身につけた方が良いと思う。

ヤフーコメント欄

あの時間、自分の子どもの命が危機に瀕したという感覚があったかなかったか。 感覚がなかったのだとしたら、子どもを育てるには危ない知識レベルだと認識した方がよい。一旦YouTubeから距離置いて、しかるべき大人ともう一度子育てにある危険を再確認してほしい。 感覚があったのだとしたら、子どもの命より動画撮影を優先する危ない状態だと認識した方がよい。のめり込んだら我を忘れてしまうのだから、YouTubeにはもう関わらない方がよさそう。取り返しのつかない失敗をする前に。 後で振り返ればここで立ち止まってよかったと思える日が来るはず。動画upしなくても子育ては楽しくできるのだから。

ヤフーコメント欄

まあこれらのコメントには納得する。しかし子ども3人を直接殺めた母親には同情論が沸きおこるのに対して、こちらは批判一辺倒である。一方は殺人、一方は事の顛末はどうあれ子どもが助かったニュース。しかし世間の怒りの総和は後者のニュースが多いように感じるのだ。

この点は池袋暴走事故や牧之原の幼稚園のバス置き去り事故以来、私が考えるようになった部分である。これらの事故も子どもや若い母親が犠牲となる痛ましい事故であった。しかしこれらの犯人は故意ではない、重過失である。全く褒められた行為ではないが、故意と重過失の間にはそれなりの距離があると考えるのが自然ではないか。しかし飯塚幸三にしろ増田立義にしろ遠矢姫華被告の何十倍もヘイトを集めている気がする。そしてこの現象を非常に怖いものだと感じている。

事実よりもお気持ちが罪の重さを決める世の中は21世紀に相応しいのだろうか。こういうことは時代が進めば進むほど解消されていくと思っていたが、この6,7年完全に逆回りしているように感じる。7年時を戻すと朴槿恵の弾劾が行われていた頃になる。「韓国の感情優先社会は恐ろしいな。こうはなりたくないな」と見ていた時期だ。その後韓国はどうなったか。当時1.05だった出生率をたった7年で0.72まで一気に下げた。最も追随してはいけない国の空気に日本人は自ら突き進んでいこうとしている。

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