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本当に秋は短くなったのか?
令和になって以降、日本の温暖化の進行が顕著である。2019年5月の北海道を襲った熱波、2019~20の記録的暖冬、2023年夏の東北の高温、そして今年の夏は太平洋側が猛暑に見舞われ、私の居住地に最も近い名古屋アメダスでは19日連続37度以上というかつて経験しなかった暑さに見舞われた。その暑さは秋も続き、特に西日本では観測史上最も高温の秋になった所が数多くある。
そのような中で、
「秋が短くなった」
「春がなくなった」
「もう日本は四季ではない二季だ」
こんな意見をよく見る。これには納得できる部分もあるが、やや大げさであるとも感じられることも少なくない。つまり発信する人が多くなっただけとも考えられるのだ。天気ほど発信しやすいジャンルもあまりないだろう。本当に秋は短くなったのか?気象好きの私が2024年の秋の気候を名古屋アメダスの数値を参考に調べてみた。
まず「秋の定義」をしなければならない。ここはやはり気温で区切ることにした。また気温も最低気温、最高気温、平均気温とあるが、24時間を網羅している方がより実感に近いと考え平均気温で考えることとする。また最も暑い日から気温が下がっていく期間でカウントした。
気温による季節の区切りは以下のように決めた。
猛暑 30.0℃~ ※最も平年値高い期間は8/3~8/10 28.6℃
夏 25.5℃~29.9℃ 7/4~9/11 70日
初秋 21.0℃~25.4℃ 9/12~10/4 23日
中秋 16.5℃~20.9℃ 10/5~10/26 22日
晩秋 12.0℃~16.4℃ 10/27~11/17 22日
初冬 7.5℃~11.9℃ 11/18~12/12 24日
冬 3.0℃~7.4℃ 12/13~3/1 79日
極寒 ~2.9℃ ※最も平年値低い期間は1/28~1/30 4.4℃
5℃ずつで区切ると分かりやすいかと考えたが、微妙に体感と異なってしまう為に4.5℃区切りとした。そして横に書いた日付は平年値の該当期間、日数を表している。
この基準を決めた時に「平年値きっかりでも秋は短いんだな」という個人的感想をもった。ほぼ全ての人が暑いと感じる日が70日、寒いと感じる日が100日余りに対して、秋は67日しかない。25.4℃→12.0℃の13度以上の変化がたった2カ月余りで起こるのだ。25.4℃だと昼間は暑いし、12.0℃だと朝晩は寒く感じる。そもそも皆が快適に感じる「秋晴れ」は10日ほどしか無いのかもしれない。
そしていよいよ2024年の数字を平年日数の横に入れてみる。夏季~12月3日までの日数は以下のようになった。
猛暑 0日 / 43日 初7/4 終9/20
夏 70日 / 49日 初5/18 終10/17
初秋 23日 / 21日 初8/29 終10/25
中秋 22日 / 24日 初10/8 終11/17
晩秋 22日 / 10日 初11/7 終11/27
初冬 24日 / 12日 初11/8 終12/3
冬 79日 / 0日
極寒 0日 / 0日
特筆すべきは夏期間の拡大である。そもそも平年値では0日の30.0℃以上の日が何と43日間もあった。それを含めて平均気温の面では92日間の夏であったといってよい。平年よりも22日間夏が長かったのだ。そして秋に当たる気温の日は67日の平年に対して55日と確かに短くなっていた。しかしより中身を見ると初秋と中秋に該当する気温の日はほぼ平年通りで晩秋に該当する気温の日だけが半分以下に減っていた。つまり11月上旬から中旬くらいの気温の日が少なかったと言える。9月10月までは季節の進みがゆっくりで11月は一気に加速した感覚だ。そして初冬に該当する気温の日はリアルタイムでどんどん増えているが平年並みになりそうな雰囲気である。
意外だったのは最も快適に感じる「中秋」の気温帯の日が平年日数よりも2日だけではあるが多かったことである。現代は何かと気候変動で「暮らしにくい」と愚痴る人が多いが、実は快適に暮らせる日はあまり昔と変わっていないのが分かる。次に「四季ではない二季だ」も現実を正しく捉えていないと思う。「夏がより暑く長くなった。その代わりに他の季節が短くなっている」がより正確であろう。
ただこの秋は2回急激な温度変化が起こったことがあった。
11月5日→8日 18.1℃→17.1℃→13.0℃→11.8℃
11月17日→19日 18.9℃→14.6℃→10.5℃
このような5℃以上の変化が2,3日であるとSNSでは「秋が無い!」という発信が増えるのだろう。これはこれで人間の素朴な感覚だと思う。しかしこれ自体は異常ではなく春や秋に見られる自然な現象なのだと考える。
総括すると「秋は確かに短くなった。しかし巷で言われているほどではない。全体的に暑くなっているのは間違いないが、まだ太平洋ベルト地域では暑い時期より寒い時期の方が少しだけ長いくらいである」になる。これは経年で見ていかねば全体像が見えてこない。当然冬や春の変化も気になる。3カ月に1度くらいこのような記事で調べていこうと思う。