短編小説:白銀_2021.05.12
この短編は、私の書いたゆきの中のあかり③の最後で、塔子さんと秀樹さんが再会した後に続くエピソードです。
ゆきの中のあかり③ と 旅の終わりと始まりの間に置かれる話です。
ひさびさに自分でゆきの中のあかり①②③を読み直して、2人に会いたくなりました。
塔子さんの元気と勇気をわけてもらおうというわけです。
本当は人は自分で思うよりもっと強いものなのだと思う。人の力はきっと、自分のためにではなくて、誰かのために頑張るときにより、力を発揮するものではないでしょうか。そしてもう一つ大事なことは、自分が誰かのために頑張るように、誰かもまた、自分のために頑張ってくれる、そう信じること。
様々な悪意に晒されることもありますが、味方もいる。きっといる。そうやって自分にまだ、希望のあかりを灯すことはできる?
できないならばすぐ逃げ出すべきなのだろう。
その時はまた、行く先にきっとあかりがあると信じるものなのだと思う。
波にのまれそうになったり、全てを投げ出してしまいたくなることもあるけれど、だけど、それでも希望を持ち続けることが生きるために大切なことなのではないかと思います。
汪海妹
山小屋のようなコテージの前に車が止まる。中から、50代くらいの男女が荷物を持っておりてくる。
女性が荷物抱えたままでコテージを見上げた。
下が石というか岩というか、上が丸太を組み合わせられたコテージ。なんかどっしりと大きくって立派なんです。
「……」
「どした?」
仁王立ちしてる塔子さんに秀樹さんが話しかける。
「これって、高遠家の別荘?」
「へ?」
有希ちゃんとか玲子さんが時折ご利用になる別荘でしょうか?
「いや」
「え?じゃ、レンタル別荘?」
「友達の、借りた」
「……」
とりあえずほっとした。でも、疑問が湧き上がる。友達の別荘を借りる?
「別荘ってそんな他人の家の借りたりするもの?」
自分がそんな別荘持ちのような優雅な生活をしたことがないから、別荘って個人的に貸したり借りたりするものなのかわからない。
「細かいことは気にするな」
「……」
これ以上の質問は受け付けないというふうな顔をすると、さっさと階段登って玄関へ向かう秀樹さん。
なんだ?と思いつつ、まぁいいかと思って後に続く塔子さん。
ネタを明かすとですな。秀樹さんにはお友達が多いんです。お互い似たような境遇の。
家族に言えないような用途で別荘を使いたいなと思った時に、お互いに交替で融通を利かし合うような、仲のいいお友達が。ちなみにこの別荘をそういった用途で使うのは初めてではない。
***
夜、秀樹さんと塔子さんが木の床の上に直接ひいたラグの上に座って、暖炉にあたりながらワインを飲んでる。静かな夜。外では雪がしんしんと降っている。
「雪国生まれなのに……」
「雪国生まれだからって、全員スキーできるってのは間違い」
「ああ、そうそう。そういう勘違いあるな。東京にいる時に仙台だって言うと、体育の授業、スキーでしょって真顔で聞かれたことあるもんな」
「どこの山奥の学校よ。それ」
「水泳必須みたいにスキー必須なのな」
2人で笑った。
「ま、とはいってもちょっとはできるだろ。雪国にいれば、スキーする機会なんていくらでもあるんだから。なんで、お前、全然できないの?」
「……」
塔子さん、黙ってしまった。
「司は上手だったわよ」
「誰?それ」
「弟」
秀樹さん、真面目な顔になった。
塔子さんの弟さんは塔子さんが高校生の時に亡くなっているんです。
「うちの兄弟はね、勉強はわたしのほうができて、運動は弟のほうが上手だったの」
「うん」
「小学生の頃に、スキー教室に一緒に入れられて、司がすいすいーって滑っててさ。わたしも負けてらんないってこうぐいっとストック雪に刺して前に出て」
「前に出て?」
「そしたら、勢いつきすぎてズザザザザーってまっすぐに進んでって」
塔子さん身振りを交えて熱弁する。
「木に激突したの」
「塔子が?」
びっくりした秀樹さん
こくりと頷いた塔子さん
ぱちぱちと火の爆ぜる音がする。
次の瞬間、大笑いする秀樹さん
「そこまで笑う?」
「お前、それ、何歳ぐらいの頃?」
「小学校3年か、4年くらい?」
「あれじゃねえの?学校では美少女です、みたいに澄ましてたんじゃねえの?」
高校生の頃同じ学年だった2人。塔子さんは学校では澄ました人でした。
「別に……」
「だっせー。本性丸出し」
「……」
「お前に密かに憧れてた男子、がっかりだな」
「いや、別に学校の子、その時周りにいなかったし」
「美少女が木に激突……。幻滅するな」
まだしつこく言っている。一体全体褒めてんのか貶してんのか。
「だから、怖くなってスキーはやめたの。家族がスキー行く時は1人で休憩所で本とか読みながらみんなを待ってたの」
「お父さんとお母さんはスキーしたの?」
「したよ。2人とも上手だった」
じっと塔子さんを見つめる秀樹さん
「珍しいね。家族の話、するの」
塔子さんはワイングラスを両手で包みながら持って、じっと暖炉の炎を見つめてる。
「やっと話しても辛いと感じなくなったのかも」
「どんな家族だったの?」
「仲のいい、普通の家族」
塔子さんのお父さんもお母さんもやはり弟さんと時を同じくして事故で亡くなっている。
塔子さんふとその、運命の日のことを思い出した。塔子さんの運命が暗転したあの日。
「家に電話がかかってきて、出たら警察で、みんなが事故で死んだって」
「……」
「いきなりがらがらと全部なくなっちゃった」
「塔子」
秀樹さんが手に持ったグラスを横に置くと、塔子さんを後ろからそっと抱きしめた。
「辛いこと思い出すの、やめたら?」
「本当に平気なったの。前は思い出すことなんてできなかったよ」
それでも心配そうな顔をする秀樹さん
「わたしが思い出してあげないと、他に誰も思い出してあげる人がいないじゃない。それにいい思い出なのに、思い出さないなんてもったいなくない?」
「……」
「家族を失ってからずっとわたし、おかしかった。あの頃の自分に戻りたいの。何もなくって幸せだった頃の自分に」
塔子さんは首を巡らしてすぐ近くにある秀樹さんの顔を見た。
「それとこんな年なってから急にスキーしたいっていうのはなんか関係あんの?」
「絶対できないって思ってたことを」
「思ってたことを?」
「できると、すっごい励みになるっていうか、元気にならない?」
きらきらした目で秀樹さんを見た。
「お前、こんな前向きな人間だったっけ?」
「死にかけたからだよ」
「ん?」
「生き続けるためには、逃げ腰じゃダメなの。攻めてかないと。前向きに攻めてる時はきっと、体の中でもいろんなものが戦ってる」
じっと、じっと塔子さんを見つめる秀樹さん
「できないと思うことをやめて、片っ端からなんでもやってやるのよ。死ぬまでに」
「なんかやけになってる?」
「いや、そうではない」
塔子さんはそっと目を閉じて少し何かを考える。
「昔、自分で死にかけといて言うのも何だけど、いつの間にか死ぬのが怖くなっていて」
「……」
「えっと、ちゃんとついてきてる?理解できてる?」
「常人にはちょっと……。まぁ、でも続けろよ」
「病気になるのが怖かったのかな?普通に」
「うん」
「病気になりたくない。死にたくない。病気になりたくない。死にたくないって心の底で思ってたと思うの。無意識に」
「うん」
「あなたも、きっと思ってるわよ」
塔子さんは秀樹さんを指さした。
「わかったから、本筋からずれるなよ」
「ええっと……」
何を話したかったのか、一瞬忘れた。
「でも、死ぬかもしれないような大病をしてさ。あ、これはマジで死ぬかも。負けてたまるかと思った」
「うん」
「そして、命のせめぎ合いみたいなのを経験したんだよ。それで、思った。ああ、生きるって本当はこういうことなのかなぁって」
「さっぱりわかんないんだけど」
「あのね、ただおとなしく淡々としてたら、バサッと持ってかれちゃうというか。そうじゃなくて、死には抗えるんだよ。ただ、死ぬのを待つ必要はないの」
「はぁ」
「大抵の人は、死ぬのを怖がりすぎだと思うの。それでいざその時が来たら、こう、手を組んでさ、アーメン。で、ただされるがままに命を差し出してしまう。そうじゃないんだよ。精一杯抵抗してこの手にもぎ取るべきものなんだよ」
「何を?」
すると、彼女は笑った。
「時間」
「時間?」
「だってね。いつかはみんな死ぬわけじゃん。だから、わたしたちの勝負はちょっとでも長く元気に生きることでしかないんだよ。それが分かれば戦い方がわかったのかなぁ」
「戦い方って?」
「永遠に生きる必要なんてないの。死を丸ごと恐れる必要もない。わたしたちにとって死はとても身近なものなのよ。ただ、少しでもそれを遠ざければいいだけ」
「なんとなくわかったような、わからないような……」
「あなたも死にかけたらわかるよ」
ちょっと複雑な気持ちで塔子さんを見る秀樹さん。
まるで死にかけてみろとけしかけているようだ。
「これが本当の塔子なの?家族が亡くなる前の」
「そうかも。だめ?」
「いや。ダメじゃない」
塔子さんの髪をゆっくり撫でました。
「自惚れてもいい?」
「何に?」
「お前がここまで強くなれるのは俺がそばにいるからだって」
きれいな笑顔で笑った。塔子さん
「認めてくれないんだ」
目を伏せて返事を渋る。髪の香りをかいで頰に唇で触れてから、暖炉の火がぱちぱちと音を立てる横で、秀樹さんは塔子さんにキスをする。
静かにゆっくりと夜がふけていく。外では雪がしんしんと降っている。次から次と降り積もる。
次の日、スキー場のレストランでウェアー姿のままでお昼を食べている2人
「疲れた?」
「うん。まぁまぁ」
「じゃあさ、午後、一滑りしたら帰ろう」
「賛成」
可決されました。味噌汁のみながら。いや、疲れてる時にどうして味噌汁ってこうほっとするんだろうなと塔子さんは考えている。
「じゃあ、今回の締めだから、上まで行こう」
「え?」
両手で味噌汁捧げ持ったまま、塔子さん固まった。
「じゃあ、下で待ってるから1人で行ってきな」
「え?」
よく考えればど初心者の自分によく付き合いました。秀樹さん。つまんなかっただろうに。
最後ぐらいは好きなだけ滑ればよろしい。読みかけの推理小説でも読んで待ってるか、なんか昔を思い出すなと思う塔子さん。
しかし、秀樹さんは渋い顔をする。
「お前、言ってることとやってることが違うよね」
「え?」
味噌汁を捧げ持ったまま、また固まる塔子さん。
「俺、お前の昨日の話に感動すらしてたんだけど」
「わたし、そんなすごいこと言いましたっけ?」
「できないと思うことをやめて片っぱしからなんでもやってみるんじゃなかったのかよ」
「いや、だから、やってるじゃん」
「なにを」
「スキー」
「……」
しんとしました。沈黙が落ちた。
「いいか、塔子。とりあえずその味噌汁をおけ」
「へ?」
なんだろう?ええっと、仕事もやめたし、学生でもないし、親もいないし……。
誰にも叱られることなくなってから久しいですが、なんか、わたし、今、叱られそうになってる?
しかし、とりあえず、味噌汁はおいた。
「ふもとを」
「はい」
「子供のように滑ってさ」
「はい」
「それをスキーと言われても」
「……」
しばらくじっと見つめ合う時間がありました。
「リフトに乗れ」
「やだっ」
速かった。速攻で拒否りました。塔子さん。秀樹さんが頭を抱えて、ため息をつく。
「昨日、感動した俺の時間となんだろう?とにかく、今すぐ全部返せ」
「いや、何言ってんのかわかんないし。そんなの、返せるものではないでしょ?」
「じゃあ、リフトに乗れ」
「いや、無理。わたし、超ど素人だし。スキー、怖い」
「お前、そんな弱腰じゃ、また病気なるんじゃなかったのかよ」
ぐっと言葉に詰まる。塔子さん。
「高遠君は、木に激突したことないからわかんないんだって」
「じゃあ、一生ふもとでフラフラしてんのか?」
塔子さんは思います。ああ、やっぱりスキーに連れてけなんて頼むんじゃなかったなぁと。
「初心者用のゲレンデなんて大したことないって。角度だってこんなもんだ」
秀樹さんの手で示した角度をじっと見つめる塔子さん。
「昨日感動した俺をがっかりさせるな」
「ああっ、もうっ!」
軽くテーブルを拳で叩いてしまったために、味噌汁がちょっとこぼれた。
「そこまで言うならやってやるわよ。女に二言はないわ」
(注:武士に二言はない、男に二言はない が正しい使い方)
***
そして、リフトに乗って上まで行く。山の天辺から、下を見て、ゆるーくまた、後悔をし始めた塔子さん。
しかし、あそこまで言われてしまうと四の五の言うわけにもいかない。
「滑ればいいんでしょう。滑れば」
ゴーグルおろすと、
「塔子?」
ぐいっとストック刺して前へと体を押し出した。
秀樹さんのアドバイスも何も聞かずに、そして、ふもととは傾斜が違う。思ったよりもスピードが出た。途端に、思い出した。苦い記憶。あの、木に激突した時もこんな感じで、スピードが出て、どうしていいかわかんなくて……。
後ろでは秀樹さんが横に倒れろと言っているんだけど、塔子さんの耳に届かない。
昔の記憶と重なって、視界にはゲレンデ脇の木が見えていて、また、思った。
ぶつかる
そして、思わず目を閉じた。
だめ
そして、そう思った。だめ。目を閉じちゃだめ。そして目を開けて、怖気ついていた自分を立て直して、教わった通りに片足に重心をかける。麓ではちゃんとできてた。曲がれてた。ただ、こんなスピードではなかったけど。
木の手前でくるりと曲がって、そして、転んだ。結構勢いよく。どさーっと転んだ。でも、木に激突はしなかった。
「塔子、大丈夫?」
慌てて秀樹さんが滑って近くに寄ってくる。
雪の上に伏せていた塔子さん、秀樹さんが寄ってきたら、がばりと体を起こして、ふわふわの新雪の上に仰向けに寝っ転がった。
「できた!曲がれた!」
そして、白い空に向かって、寝っ転がったままであーはっはっはと笑いました。
そばで覗き込んでいる秀樹さんが呆れてる。
「いい歳して、何してんだよ」
「なんだよ。人の目なんか気にしてられっか。生きるか死ぬかの時に」
人はだんだんと歳を取り、そして、自分に正直に生きていくのかもしれない。だから、人の目なんて気にしてられないのかもしれません。塔子さんに言わせると。
「美人が台無しだぞ」
「もう、こんな年寄り、美人もクソもないって」
「そんなこと言うなよ。ほら、ウェア着てても雪の上寝っ転がってたら濡れる」
差し出された手を取って上半身を起こした塔子さん。
「見た見た?わたし、曲がれた。あんなにスピード、出てたのに」
「曲がれたな」
「007みたいだった?」
「……」
コメントに困る秀樹さん。もしかして、本気で言っているわけではないですよね?あれぐらいで007になれたら、世の中石を投げたら007に当たる世界になってしまうではないか。
「お前、頭、打った?」
「え、なんで?」
興奮した顔でそう言った時、なんだろう?
「どうした?」
「今……」
「なに?」
遠い記憶。声がした気がしたんです。白銀の雪原のどこかから、懐かしい声。
姉ちゃん、やったじゃん
無邪気な弟の声が、した気がした。大人にならないままの弟の声が。
「大丈夫?」
すぐそばに心配そうに自分を見ている秀樹さんがいる。それ以外にはポツポツと他のお客さんがいるだけ。
「ああ、うん」
結局は、スキーができないと本気で思い込んでいたのが呪いのようになっていたのでしょうか?
それからは、割とスイスイと特に危ない場面もなく下まで行った。
「できた。できないと思ってたのにできた」
「な、上まで行ってみてよかっただろ」
俺が言ってやったおかげだぞと言いたい秀樹さん。薔薇色の頬で喜んでいる塔子さんは聞いていない。
ったくと思った後にすぐそんなことはどうでもよくなる。
ことのほか喜んでいる様子を見ていると、本人が言っていた通り体の中も活性化して、彼女の命をもっと先へ伸ばしてくれる気がしたんです。それさえあれば他のことはどうでもよかった。
帰りの車の中、助手席で塔子さんがぽつぽつと言う。
「わたしはこれから死ぬまでにもっともっと楽しいことしたい」
「うん」
「長い時間ね、無駄にしちゃったなぁって最近思ってて」
「ん?」
運転中なので、話している彼女の様子が見えない。耳だけでその話を聞く。その声音を。
「なんで死のうなんて思ったのかなぁ、世の中にはいろんなまだしたことがない楽しいことがいっぱいあるのに。でも、ま、しょうがなかったのかと思うけど。ずっと長い時間落ち込んでいて、自分が人生を無駄にしてるって気づいてなかった。途中で気づいて頑張って楽しみ始めた。だから、わたしは他の人よりも時間が少ないの。頑張って楽しまないと」
やっぱりその声は元気でした。元気で明るかった。
「スキー、楽しかった?」
「うん」
「また、来たい?」
「うん」
塔子さんから発せられるきらきらとしたものが、秀樹さんの心に染み入った。深いところまで。
「じゃあ、また、来よう」
「うん」
塔子といると、励まされる。
それは、励まされるという言葉を使うしかないけれど、でも、その言葉では足りないくらいの何か。
何かを与えられると秀樹さんは思った。心の中で。
「疲れちゃった?」
「まぁまぁ」
「帰り、ちょっとだけ寄り道していい?」
「どこ?」
「着いたらわかるから」
しばらく経つと、秀樹さんはとあるペットショップの駐車場に車を停める。
「最近、見かけるたびに入って探してた」
「え?」
「ここにいる子、塔子はどう思うか見せたくて」
お店の人は秀樹さんのことを覚えていました。
取っておいて欲しいと頼んであったんです。店の奥の方にいました。それはコリー犬、子犬です。
ガラス越しに覗き込む塔子さん。子犬もこっちを見上げている。綺麗な目で。
「抱っこされてみますか?」
店員さんが子犬を出して塔子さんの両腕に乗せてくれた。
小さくて軽くて温かくて……。
犬と見つめ合う塔子さんに秀樹さんが聞く。
「まだ、早いかな?」
「……」
前飼っていた愛犬ラッキーが死んでしまってからまだ一年経っていませんでした。
くうん
塔子さんを見て子犬が鳴いた。
「参ったなぁ」
子犬を抱きながら、塔子さんが笑う。
「心の準備をしてなかったのに」
「じゃあ、やめとく?」
「でも、もう目が合っちゃったしな」
子犬のキラキラした目を2人で覗き込む。しばらく躊躇した後で、その子はラッキー2号としてその日一緒に帰ることになった。
了