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漫画感想:推しの子その参
完結した推しの子の感想になりますので、ネタバレになります。これからアニメ見たりしたい人は、読まないほうがいいと思う。
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このくらいでいいかしら?
結構なバッドエンドだったんですよね。私と同じく既に漫画を読まれた人は知っていると思いますが。
双子(アクアとルビー)のDNA上の父親の神木ヒカルを刺して、おっと間違えた。違うのだ。崖で、アクアが自分を刺して、それから神木ヒカルを道連れに崖から飛び降りて、二人とも死ぬという。
なんでそうなったかというと、映画の試写会を開催した直後に神木ヒカルと対面したアクアとルビーは、母親であるアイの遺志に沿って一旦は実父である神木のことを許すのです。ところがその後も神木がルビーを殺そうとしたから。ファーストアタックは防止しましたが、今後もあきらめるとは思えない。
警察がヒカルを捕まえてくれればよかったが。そうもいかない。
神木ヒカルはいわゆる殺人教唆と言って、殺人が起きるように遠隔誘導をしただけで何もしていない。それ以降も彼の周りで何人も死んでいますが、それを促したという証拠は立てられない。だから、牢屋にはぶちこめず、ルビーの安全を守るためにできることがない。
かといってそれではアクアくんがヒカルを殺してしまえばいいかというと、それをしてしまうと未来をつぶすのはお兄ちゃんのアクアくんだけではなく、ルビーもアイドル生命がたたれてしまいます。
そこでお兄ちゃん、最後のシナリオを書いたわけです。
自分を自分で刺して、それから、ヒカルを道連れに崖から落ちる。これで、15年の嘘という映画で暴露された恨みでヒカルがアクアを刺して、二人は崖から落ちたという偽装工作をしました。
バッドエンドではありましたが、アクア君らしいクレバーな結末でした。
ミステリーという枠組みとアイドル、芸能界の異常性という枠組みが同居した作品で、この二つの枠組みの組み合わせが面白くて既に十分面白いんだろうとは思いつつ、ミステリを山のように見てきた観点から何点かツッコミを入れることをお許しいただきたい。
ちょっと ヒカルさんの 犯人としての設定が こってりすぎてそこが残念だったなと思うんです。簡単にいうと、シリアルキラー、連続殺人犯にすべきではなかった。アイに関する部分のみの犯行で留めておくべきでした。
なぜか?
単独の犯罪を犯す人間とシリアルキラーは 似て非なるものなのです。
私が専門の犯罪研究家ではござんせんが、山のようにミステリ見てきた人間として素人意見を言わせていただくと、
初っ端の事件がきっかけとなり、殺人が癖になる人。
これは同じカブトムシなのだけど、後ろはキングカブトムシというか、明らかに進化しちゃってるわけ。つまりは誰もが初っ端で人を殺してしまったからといってそのままシリアルキラーになるわけではない。
シリアルキラーというのは、かなり重たい素材なんですね。ビッグステーキみたいなものなのです。だから、作品に入れるなら、丁重にお迎えしろよ!と。
ハハハハハハ!
えっと、すみません。本当にごめんなさい。殺人を楽しんでなどおりません。ただのミステリファンでげす。本当にごめんなさい。
つまりは、ヒカルをアイ関連の殺人だけではなくそれ以外の殺人も犯したかなりの狂人と設定した割には、彼がシリアルキラーにまで足を踏み入れてしまった過程や動機の肉付けがあまりにお粗末です。
もう一度繰り返していいますが、ついつい殺人を犯してしまう人はたまにはいたとしても、シリアルキラーにまでなってしまう人はかなり少ないんです。お得感のある軽めのステーキではなく、あくまでビッグステーキをすえるのなら、その一段階上の異常心理をもっと描けということです。
つまりは、動機の説明、犯行に至る経緯、そこがまだ不十分。ヒカルの生育過程も描かれているけど、アイにどのように執着していったか(愛じゃねえな)とそれが殺意に変わる過程の心理も不十分。普通の恋愛描写ではなくて、これは犯罪を犯した人の心理描写なので、難しいこと言ってるってのはわかっててあくまでつっこんでおります。
ただ、一般的に言ってね、自分のようにとことんの心理描写を作品に求めるファンというのは稀な存在です。私はマニアックなので、私の意見はマイナーな意見です。それに読む人として言いたい放題言うことはできても、書く人の立場になると、シリアルキラーの心理なんて書こうと思っても簡単に書けないのはよくわかる。
ただ、ミステリにとって犯人の素顔と動機というのは、PCにとってのインテル入ってる?くらい大事なものなので、これが、15巻までベールに包まれていたわけ。いよいよコース料理のメインきたなという時に、
「キャビアです」
「いや、これはとびっ子ですが?」
ぐらいのインパクトはありました……。ぶっちゃけ。
ヒカル、だらしなく死んでんじゃねえぞ、オラ!みたいなツッコミ出たよね。ほんとごめんなさいね。私、もう何人もシリアルキラーとテレビドラマの中で付き合ってきてますので、中途半端にシリアルキラーだなんて名乗られても、シリアルキラーのボツ墓場にポイっと捨てられるのよ。ちなみに私の脳内墓場には、没となったシリアルキラーがホイホイいる。もちろん、フィクションの世界の人たちだ。本物ではない。
では、せっかくだから私が作品中の犯罪者に何を求めているのか?とにかく、リアリティに満ちた犯罪に至る過程と動機である。わしゃ、現実世界でもフィクションでも人間のありとあらゆる心理に興味があるので、リアルに感じられないものには怒ってしまうのです。ああ、かわいそうに、だから殺しちゃったのね、と同情したいわけでもない。純粋に興味があるのである。人を殺しちゃうってどんな心理やねんってやつだ。
推しの子の中の犯罪者たちには、ゾッとするリアリティが足りなかった。残念なことである。しかし、ゴリゴリのミステリファンで、FBI捜査官とか、犯罪心理分析とか、山のように見ている人(私)が、くどくどいうのはやめておこう。ちなみに念のため言っておくが、私はテレビでは人が死ぬものばっか見ているし、尚且つ、クリスティが好きでポアロとマープルのドラマを何度も何度も見ているが、現実では平和な小市民である。ゴキブリは殺すが、犬猫を愛し、鳩を見かけたら捕まえて焼いて食べるようなそんな野蛮な人間ではないことをここに記しておく。
ちなみにクリスティはもう結構古いのだが、やっぱりクリスティの中の殺人犯の素顔と動機は今でも結構色褪せないのだ。一流はやはり良い。最近はドラマばかり見てて推理小説を読んでいないが、現代の一流と言われる推理小説には目を通したいものである。
まとまりのないままに
アクアくん、ご冥福をお祈りするわ。
汪海妹
2024.12.23