【文体練習】爆発があった、驚いて後ろを向いた


  1.  どんっっと大きい音が後ろから聞こえてきて俺は肩を反射的にすくめる。
    きっと爆発が起きたのだろう、と頭で理解する前に後ろをすかさず振り返ると、道にくぼみができていて、手前には小石と、人だったものがそこらじゅうに飛び散っていたのが見えた。


  2.  爆発があった。
     現象としてはあくまでも普遍的な出来事ではあるが、それが俺の後ろに起こったという点で、俺個人にとっては特殊性を帯びていた。
     俺の体は、俺が脳髄で理解するより先に、その出来事を確認すべく勢いよく後ろへ振り向かせた。そしてやっと、俺の感情は驚きに支配されたことを自覚したのだった。


  3.  俺はその時やっと一仕事終えて、暇になったので少しぶらつこうと思って昼下がりの三番通りを歩いていたときそれは起こった。 
     いきなり後ろで轟音がしたので驚きを持って後ろを振り返ればどうやらガス管が破裂したのだろうか、あたり一帯の景色は惨状そのものだった。
     あとで伝え聞いたところによると実はガス管の爆発ではなく、地下鉄の工事現場の事故によるものだったらしいが、そんなことを知る由もない俺は暇な時間を無駄にしまいと、見て見ぬふりをしてその場を立ち去った。


  4.  残業に帰り、もう彼女が寝静まった時間に自宅のドアに手を掛けた瞬間後ろから爆発音がした。衝撃はすぐさまこちらにもやってきて、この築古のアパートをギシギシと鳴らした。
     驚いて振り返ってみるとどうやら向かい側のタワーマンションの中層階から火が上がっているのが見えた。
     あのタワマンで火災が起こっている!
     俺の年収ではたとえ低層ですら到底手が届かないタワマン。
     助けを求めているのだろうか、爆発のあった階より上の住人がベランダから喚いているのが見えていた。
     タワマンのエントランスには避難してきた住人の他に、周りの住宅からわらわら野次馬が集まっていた。サイレンが遠くから近づいてくる。
     そんな惨状を目にして、俺は心の中でそっと「ざまぁみろ」とひとりごちた。


  5.  クソッタレめ。ったくなんてツイてない日だ。なんだって俺の後ろで爆発がありやがったんだ。ビビって振り返った時、手を滑らせて飲みかけのビールを全部ズボンにこぼしちまったじゃねえか。ざまあねえ。
     神のクソ野郎が俺のことが嫌いだからってこれはあんまりだ。こんどあったら俺と同じようにビールをその面にぶっかけてやる。(まあ俺は地獄行きが確定しているからそんなことはないだろうがな)

某掲示板のとあるスレッドが元ネタになります。
また新しいのを思いついたら、もしかしたらこそっと追加しているかもです。

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