同期の大園 7. ハリー・ポ〇ター
いつもの金曜日。
週末に同期会と称してだべる夜の集まりがある。
だけど今日は二人だけ。 武元と井上は用事があるらしい。
二人なら今日はナシにしようかと思っていたんだけど。
『餃子が食べたい』 なんて言うから、 『んじゃ、どこかで食ってく?』 と俺が尋ねると、 『ハリー・ポ〇ターも見たい』
お姫様が我儘を重ね、俺の部屋にてサシで飲むこととなった。
俺「おい、暑いだろ! そんなにひっつくなよ」
大園「だって怖いんだもん」
(うそつけ、怖いシーンなんてほぼないだろ!)
まぁでもいいか。 右腕に感じるマシュマロを肴に酒をあおる。
俺「……ふう……ほれ、焼けたぞ」
大園「あ~ん」
口を開ける大園。
このやろう……。
少しだけムカついたから、アツアツのまま放り込んだ。
俺「あいよっと」
大園「ありがとっ――ッあああっつ!?」
俺「大丈夫か? 水飲め」
そう言ってお酢を注いだコップを渡す。
大園「あり――ぶふっ!!」
俺「げ!? おま」
やってしまった。 吐き出された酢がホットプレートの上にブチ撒かれた。
俺「――うわ!? くっせぇ――ッげほ」
大園「うひぃ……しゅっぱぃ~」
臭いにむせ返る俺と、酸っぱさに悶える大園。
二人してジタバタするもんだから、盛大に机をひっくり返す。
俺「マジか……」
片付けが大変だった。
……
大園「ごめんね~散らかしちゃって」
俺「いや、俺のほうこそふざけ過ぎた」
玄関先で頭を下げる二人。
こつん、と額同士がぶつかり、あははと笑い合う。
大園「じゃあ……また」
俺「おう。おやすみ」
気をつけて帰れよ、なんて言う必要もない。実はお隣さんだ。
ドアが閉まる寸前。
振り返った大園が何かを放り込んだ。
大園「……おやすみ」
と微笑んだ顔がどこか艶かしい。
玄関のマットに落ちたそれを拾い上げ、
俺「……」
思わずゴクリ、と唾を飲み込んだのだった。
\秘密の部屋の鍵を手に入れた/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?