銀蔵@妄ツイ
ことわざから着想を得た中編のまとめになります。 ネタが浮かばないときによく辞典とにらめっこしてたり。
短編や中編、その他になります。
小西のシリーズ物です(長編枠)
機甲という名のロボット物です。
エピソードごとに完結してます。 オカルト同好会という集まりが話の主軸となるシリーズ物です。
俺の周りは今日も騒々しい。 「ホントに可愛いよねっ。莉奈ちゃん」 「もう……兄さんどうにかして下さい。ここに来るたび引っ付いてくるんです。この人」 呆れ顔をして助けを求めてくる妹の莉奈。そんな莉奈をまるで我が子の様に溺愛する俺のクラスメイト。 「その辺にしといてやってくれ……後で八つ当たりされるの俺なんだよ……」 「何ですか、それ。私がいつ八つ当たりをしたって言うんですか。適当な嘘を吐かないで下さい」 「へ~。○○君に八つ当たりしてるんだぁ。そんな莉奈ちゃ
ガララ、と扉が開く音がした。 「あ~、果歩ちゃんだ」 「皆さんのかほりん降臨、そして先輩愛しの果歩ちゃんが来ました~」 「お前の彼女も来たところだし今日は終わりだな」 「おい、彼女じゃねーから」 「そうなんです! 悔しいことに! まだ彼女ではないんですっ」 「まだもなにも、今後ずっとその予定はない」 「な、なんですとぉっ!?」 そんなやり取りに笑いながらバンドの仲間たちが部室から出ていく。 残されて突然黙り込んだ藤嶌の横に座る。 「急に静かになるじゃ
「危ないわ」 物陰に身を隠した女子生徒が額を拭う。 『ブーーーー』 「濱岸さん、アウトです!!」 「あれ? 当たってた? おかしいなぁ」 また一人脱落した。 「オイオイ~、どうしたぁ? こんなもんかぁ? ……隠れてばっかじゃ勝てねぇぞぉ……なぁ、おぉい。まさかビビってんのかぁ? こっちは俺一人だってのによぉ」 挑発にも取れる和馬の声が教室に響き渡った。 「……くそっ、調子に乗りやがって…」 机を積み重ねて作られたバリケードの隙間から様子を窺えば、中
今日は高校の文化祭。 開始まであと一時間といったところで、私たちのクラスでは一つの問題ごとが起きていた。 「ごめんね……やっぱり探しても見つからなかった」 「瑶季……」 「な、失くしちゃったものはしょうがないよねっ」 「本当にごめん……せっかく可愛いやつを作ってくれてたのに……」 そう、問題とは私にまつわることだ。 クラスの出し物としてメイド喫茶をすることになった私たち。 推薦によって何人かの生徒がメイド役に選ばれた。 光栄なことに私もその中の一人に。
「あ! 莉奈のお兄さんだ。おはようございます」 俺の姿を見つけて駆け寄ってきたのは、妹の友達。正源司陽子だ。 「おはよう、陽子ちゃん。どんな感じなのか~って見に来たんだけど」 「そうなんですか。私たちのクラスは準備万端です!」 そう言って振り返ると、 「莉奈~お兄さん来てるよ~」 遠くにいた莉奈に声を掛けた。 「あ~。別に呼ばなくてもいいのに」 「いえいえ、実はお兄さんにも見てもらいたくて! とっても可愛いんですからっ」 走ってくる莉奈を見つめて「
文化祭まで残り数日となったこの日。 誰もがその準備に追われていた。 「おーおー、どこも出来上がってきてんな」 本日最後の買い出しを済ませ校門から校舎までを歩く。 その道すがら看板やら垂れ幕などの飾り付けが着々と進んでいた。 「なんかワクワクしてくるよな」 「全然せえへん。今年が初めてちゃうし」 俺の発言に否定から入るのが小西の定石なのかもしれない、ってくらい即座に返されて気落ちする。 「……」 いや、そうじゃないか。 小西夏菜実はいい意味で『孤高
「ただいま~、莉奈。連れてきたぞ~」 大声で呼びかければ「はーい」とリビングから声が返ってきた。 「お帰りなさい、兄さん。それと、ようこそおいで下さいました。先輩方」 妹が姿を現した。つまり、ここは俺の家ということになる。 「きゃ~私服の莉奈ちゃんだ~!」 出会って一秒、すみれに抱き着かれる莉奈。 「ちょっ……もう……おはようございます、宮地先輩」 「おはよう~。今日も可愛い~ね~」 頬ずりされて若干引きつっている。 「ありがとうございます……小西先
散々な夢に目を覚ます陽射しの強い朝。 お気に入りの曲を聞きながら、洗い立てのシャツに腕を通す。 ――なんて、どこかで聞いたフレーズがぱっと頭に浮かんできた。 ふふ、まるで今の私だ。 そんな何でもない事がなんだか嬉しかった。 今日の私はいつもよりお洒落に――滅多に使わないサーモンピンクの口紅をつけたりしちゃって。チークもほどほどに、ナチュラルメイクがいいだろう。そういうのが彼の好みな気がする。 分からないけど、たぶんそう……ううん、絶対そうだ。
「おい! てめぇっ」 昼休み。 廊下ですれ違った男子学生に声を掛けられた。 振り向き様に顔を確認してみたが知らない奴だ。 「……ちょっとツラかせや」 口調が荒々しい。ぼさっとした茶髪にいくつかのピアス痕。あまり関わりたくないタイプである。 「ぁ? あぁ……いいぜ」 「おう。んじゃ、ついてこい……」 「分かった」と頷いて歩き出した。 男とは反対方向へ―― 「――って、おいおいおいお~~~~い!! 待たんかいゴラァ!!」 ツッコミながら戻ってきた。
「カッコつけてるんですか」 俺の「おはよう」の返しにしては些か辛辣すぎやしないか、我が妹よ。 「ちげーよ。まだお前には分からないんだな、この良さが……」 嘆くように言ってやれば露骨に嫌な顔をされた。 「はいはい……どうせ私はおこちゃまですよ」 そう言って莉奈はカップにコーヒーの粉、続いてお湯を注ぎ……角砂糖を大量に投入した。 あ~あ、勿体ないな……。 無糖派の俺にとっては信じがたい。あれでは違う飲み物だ。 コーヒー。それは至高の存在。それもブラ
「では、兄さん。今日はお願いします」 後部座席のドアを開きながら感謝を述べる我が妹。 続いてその友達が乗り込んで来た。 「すいません。莉奈のお兄さん、私たちまで……」 「ああ、気にしないで。俺も行ってみたいと思ってたところだから」 嘘ではないと語尾を強調する。 バックミラー越しに目が合うと、申し訳なさそうに会釈をする少女。 俺の一つ下、妹の友達の正源司陽子だ。 類は友を呼ぶ――か。 礼儀正しい子と言うのが最初に会った時の印象である。 「悪いね~、私
「お疲れ様で~す」 「お疲れ様~」 バイト仲間に挨拶をして裏口の扉を開けた。 出迎えた夜風は少し冷たくてひんやりとしている。 「うひぃ~寒いなぁ」 独り言にしては少し大きな声。 「さみぃ~」ともう一度。 「……」 少しだけ間を空けて、 「ほれ、店長がココアくれたぞ」 外で佇んでいた”そいつ”に紙コップを手渡した。 ”そいつ”――小西は無言でそれを受け取ると、両手で掴みながら一口啜る。 「ぬくい……」 「平尾が教えてくれたときは驚いたわ。小西がま
バイト先。 なんの偶然か。またも一緒のお隣さんが、 「どうしてここでもアンタと会わなあかんわけ?」 と対面に座る俺を見据えて言った。 「……それは俺のセリフでもあるな」 「ひょっとしてストーカーなん?」 「それも俺のセリフ」 このバイトを始めたのは俺の方が先だ。 だが「ストーカーはお前だろ」なんていう度胸はない。シフトが被る日も多いし余計な問答は避けたかった。 特に今、この休憩室にいるのは俺と小西の二人だけだから。 「なぁ……小西ってさ」 「……何
「ねえ。ちょっと寄っていかへん?」 「おん? ってゲーセン?」 「見たらわかるやろ」 小西の見上げる先。 小ビルの二階にはこじんまりとしたゲームセンターがある。 「いいけど、なにすんの?」 「別に。ただの暇つぶし」 「いやいや、俺ら買い出し班だからね。暇してるわけじゃないから」 「ええやん。細かいヤツはモテへんで」 グサッ、と一言が刺さる。この野郎。 「お前こそ顔はいいのにそんな性格だからモテないんだよ」と喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。 「……んじゃ
「はい! 注目してくださ~い!」 クラス委員長の清水が教卓の前に立った。 「え~。来る文化祭ですが、うちのクラスはメイド喫茶をすることになりました!」 「おお~~!!」 盛り上がる男子。 「ええ? 聞いてないんだけどー」 「こういうのって普通話し合って決めるんじゃないの?」 と女子から苦言ともとれる言葉が飛び交う。 「うんうん。分かるよ、皆の言いたいこと。でもね……今年から委員会で割り振るようにしたんだって」 「そんな~……」 「でも仕方ないか……決まっ
「お還りなさいませ。ご主人魂」 「……へ?」 「……」 「……」 「え、あの……ここは?」 「ここは冥途カフェやで」 ”メイド”? ちょっとニュアンスが違うような……。 「メイドならぬ冥途やな。不慮の死を遂げた人間たちに最後にご奉仕をしたる場所や」 「不慮の死……ええ!? それって僕は死んだってこと!?」 「うん。……ええと、確かアンタは……これや! なになに、え~『推しに会った感動で心臓が停止した』……らしいで」 なんだよそれ。 弱すぎるだろ!