Audible、使ってみた

オーディブルを始めてみた。

部屋の電気を消して、枕元のLEDランタン (防災訓練でもらったもの)をつけ、布団にもぐりこみ、半年ほど前 一読した『海と毒薬』をかけてみる。

出だしを聴いたが、聞き覚えがない。
オーディブル用の音声でもあるのかと思い、布団からのそっと出て、買ってから一回読んだきりの『海と毒薬』を引っ張りだした。
ざらりと心地のよい、「かまわぬ」のカバーの『海と毒薬』。
開いてみると、さっき聴いたのと全く同じ文章が、はっきりと刷られていた。
読んだようで、読んでなかっただろうなぁと、情けなくなる。出だしすら、覚えていなかった。驚くほど、恥ずかしいほど、覚えていない。
でも、覚えていないこそ、「狐のような顔」とか、「スフィンクス」とかが、ちょっと気になるものとして、私の耳と脳みそには、新鮮に響く。

本を味わうのが苦手で、名作ほど「わからん」で済ませてしまう私だが、せっかくの再読(聴)なのだから、わからんなりにも考えながら聴こうと思う。


ところで、『海と毒薬』と私の最初の出会いは、高校時代の宿題の問題集だ。問題文として引用されていたのは物語の終盤部分(後から知った)だったが、問題文冒頭で簡単にまとめられたあらすじが、きっと当時の私にとっては好奇心をそそるものだったのだろう。半年前立ち寄った書店で、たまたま手にとった『海と毒薬』の裏表紙のあらすじを見て、「勝呂」という名前や「生体解剖」ということばに、「何か知ってる気が…」とひっかかかった。

問題集や模試で出典となった本を、インターネットや本屋や図書館で見つける(が、読むわけではない)ことが謎に好きだった私は、中学・高校の国語の問題集を、おおかた(一部は捨てた)段ボールに突っ込んで置いていた。
その箱を開けて、手当たり次第に問題集を手にとって、目次を開いてみる。
何冊目かで、『海と毒薬』の文字を見つけた。何だか嬉しかった。その勢いで、文庫本を買った。…けれども、読み流して終わってしまったのだった。



今日もまた、『海と毒薬』をちょっとずつ聴く。今日は、0.9倍速で。


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