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妻の命を助けてください

看護学生の時、産婦人科の看護助手として、準夜帯にバイトしていた。
婦人科系の手術のために入院している人、末期癌で入院している人、
切迫早産や双子の入院管理、もちろん、普通分娩のために入院している人など
さまざまな人が入院していた。

看護学生であり、看護ケアはできないので、ナースコールがなったら忙しい看護師や助産師の代わりに用件を聞き、伝書鳩のように伝え、私ができることは変わりに
やっていた。

ある日、ナースステーションで、医師がインフォームドコンセント
(医師が患者や家族に状態を説明し同意を得ること)を行なっていた。
入院中の妻はおらず、夫だけに。

夫が声を荒げて
「妻の命を助けてください」

と言っていた。
前置胎盤なのか、お腹の赤ちゃんに疾患があるのか
この病院では、出産ができないという説明と、
何かあったときは奥さんの命を優先する(母体保護法)という説明をしているようだった。

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旦那さんは泣いていた。
二人失うことも、、、ある。

そう、お産って命懸けなんだ。
つい、忘れがちになるけれど、赤ちゃんもお母さんも命をかけて
出産に立ち向かう。

同じバイト仲間にその話をしたら
「そんなに愛してくれる人と結婚したい!!」

と言っていた。確かに。
当時、私たちは20歳だった。

息子を妊娠中、夫に聞いたことがある。
私と赤ちゃんどっちか選ぶことになったらどうする?

間髪入れず
「おまえを選ぶ」

うん。愛されている気がする。
当時はそう思った。

今、聞くのは怖い。


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