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精神病の正体と精神科医の犯罪 3  〈最先端研究が暴く不都合な真実〉

第1章 精神病の正体

その2 精神科医療の歴史

 ここで精神科医療と脳科学の歴史を簡単に辿ってみましょう。
 複数の資料を基にしていますが偏りや多少の間違いがあるかもしれません。どうぞ悪しからず。

古代〜中世
 精神病は「ストレス社会における現代病」と認識されている方も多いと思いますが、もちろん古代から存在していました。
 古代では精神病が神聖化されていた時期もあったようですが、中世からは「悪魔が取り憑いた」など迫害、差別、拘禁、処罰などの対象になりました。
 頭に取り憑いた悪魔を解放するためと称して頭蓋骨を陥没させたり、汚れた血を抜けばよくなるというような乱暴な治療も行われていました。一方、アルコールやアヘンなどが古くから治療薬として用いられたようです。
 心は脳ではなく心臓や肝臓にあるという考え方が主流だったようですが古代ギリシャでは脳が人の感覚を担う器官だという考え方もされていました。
 中世になって自然科学と共に医学が発達し本格的な脳の研究が始まりました。

近代
 18世紀の終わり、フランスのフィリップ・ピネルは精神病が「治療の必要な病気」という認識を初めて示し、患者を鎖から開放したとされ「近代精神医学の祖」と呼ばれています。その後ドイツのエミール・クレペリンが精神病を分類し近代精神医学の基礎を築きました。
 19世紀には脳の部位によって機能が異なることが発見され前頭葉に心があることが認識されるようになり、脳の活動に電気が関係していることも解明されました。
 20世紀に入ると大脳の部位によって働きや構造が異なることがわかり詳細な大脳地図が作られます。
 オーストリアのフロイトが心理学・精神分析学を確立、スイスのオイゲン・ブロイラーが早発性痴呆と呼ばれていた病気を精神分裂病(現在の統合失調症)と改名、精神病の概念を変え、心理学的治療法を確立しました。
 睡眠薬や精神病に効果のある薬が開発、転用され薬物治療が始まり、マラリア発熱療法、電気ショック療法などの治療法も出現しました。
 第二次世界大戦時、精神病患者は迫害の対象となりました。特にナチスドイツ政権下では精神障害者を「不要なもの」とみなし身体障害者とともに抹殺しました。その数は20万人に及ぶとされています。
 1932年電子顕微鏡によって神経細胞ニューロンが詳細に捉えられ近代脳科学の道が開かれました。

大戦後
 精神科医療体制が整備され、より副作用が少ないものに改良された「薬物治療」が確立しましたが、病院に隔離し薬漬けにすることが常態化して問題となり「カッコーの巣の上で」という映画が話題を呼びました。
 この段階での薬は効果成分が抽出・改良されてはいたものの基本的に麻薬や覚醒剤の類似物質に過ぎず、古代のアルコールや阿片による治療方をやや進歩させたものに過ぎませんでした。驚くべきことに60年代までは薬がなぜ効果を発揮するのかよくわかっておらず、モノアミン仮説が提唱されるようになって後付けで機序(効く仕組み)が追加されました。
 一方、1946年アメリカで外科的に脳を処置する「ロボトミー手術」が始まり物議をかもしました。脳に器具を打ち込んで「おとなしくさせる」という乱暴な手法は多くの批判を受けながらも70年代まで世界中で実施されました。
 70年代に抗うつ薬SSRI、SNRIなど新世代の薬が発売され精神科医療・薬物治療は広く普及しました。しかし、自殺や攻撃性を高めるなどの副作用が疑われ繰り返し報道されています。その関連性については「よくわかっていない」とされています。

現在
 薬物治薬療をはじめ電気・磁気療法など幅広い治療法が試みられていますが、疑問の多い仮説に基づく対症療法にすぎず、決定的な治療法はいまだに出現していません。
 脳の研究は進んではいますが、精神病の正体やメカニズムにおける公式見解は「よくわかっていない」から進歩していません。
 先進国では人権擁護の観点から入院医療ではなく社会生活の中での治療、復帰を目指す考え方に移行しつつありますが、日本はかなり遅れています。
 治療でよくなったとメディアに登場する人がいる一方、入院以外の支援体制はお粗末で家庭内監禁や殺人・一家心中なども後をたたず、関連が疑われる第三者を巻き込む事件も多数起きています。本当に精神科医は精神病を治せているのでしょうか?

ところが・・・
 このまま精神科医療は霧の中を歩み続けるのでしょうか?
 いいえ、大きく報道されてはいませんが、2000年以降これまでの仮説を根本から覆すような研究が世界中で発表されています。これらの研究がやがて世界を変えてしまうことに精神科医は気付いていないだけです。
 さあ、それでは始めていきましょうか。


                精神病の正体と精神科医の犯罪4へ続く     
      ※ この文章は「悪魔の処方箋」を加筆、再編したものです。


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吉村敏男
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