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「変人ソムリエ」への旅(正木賢一)

 「人生100年時代」がやってきた。
 これが確かなことであれば、私は人生の折り返し地点にいる。これまでの50年、これからの50年。

 人生の位置エネルギーが頂点に達したと同時に、邪悪なウィルスが世界を凍結した。こんな事態を予期していたのか、人生のスイッチバックに差しかかる手前で、私は幸運にも未知なる好奇に遭遇していたのだ。「変人」である。

 VUCAな社会の胎動とシンクロするように浮上してきた「変人」というキーワードに、妙な親近感を覚えた。行き当たりばったりの適当力を頼りに歩んできた私に、そっと寄り添い話しかけてくる「恋人」のような。
 そうだ、この一期一会な運動エネルギーをフルに活用して、残りの自分史に面白い軌跡を描いてみよう!私は「変人」と未知なる回遊の旅に出る目論みを決意した。

 この旅路には「変差値」の高い仲間が欠かせない。
 「変人気質」を保持しながら社会と「ずれ」続けてきた「はずれ者」たちとの出会いだ。それは、類は友を呼ぶごとく「変人」の集う「変人類学研究所」の立ち上げによって叶った。さらに今回の「変人學会」の発足が新たな拠りどころとなって実に心強い。

 ただ、ひとつ気がかりなのは、50年近く無自覚でいた私自身の「変GENE」のありようだ。何の疑いもなくホモ・サピエンスの一員になりすまして、すっかり「凡入り」してはいないだろうか? 今一度「づれづれ」なるままに、「ホモ・ヘンデス」へと変化する意義を楽しく問いたい。

 そうだ、まずは変差値の高い仲間たちと語らい、彼らの軌跡を丁寧に拾い上げる「変人アンテナ」を設置しよう! そして自らの「変人感性」を研ぎ澄ますとしよう! 世界中のホモ・ヘンデスたちと語らい、味わい、人生を謳歌する「変幸」の境地に到達してみたいと私は思う。
 そんな「変人ソムリエ」を目指す「楽問」の旅は、まだはじまったばかりだ。

(東京学芸大学 正木賢一)

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