#2 あおい
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題名:あおい
著者:西 加奈子
出版社:小学館文庫
【あらすじ】
二十七歳、スナック勤務のあたしは、ある食事会でお腹に「俺の国」と称した変な地図を掘っている三歳年下のダメ学生、カザマ君と付き合うことになり同棲を開始する。ある日、あたしは妊娠していることに気付き、勤めていたスナックもやめ長野のペンションで泊まり込みバイトを始めることに。スナックを辞めるきっかけとなった森さんとのエピソードや本屋で声をかけ親しくなったみいちゃんとのエピソードも見どころ。
【感想】
まず、「あおい」の他に「サムのこと」「空心町深夜2時」という3つの物語が書き記されている。メインは題名にもなっている「あおい」だが、最後の方になって妊娠している息子の名前を「あおい」と名付ける場面があり、それまで「あたし」を「あおい」だと思い込んでいた。
好きな箇所としては勤めていたスナックを辞めるきっかけとなったお客の森さんが実は子持ちで妻と子はアフリカのサンブル族という箇所だ。その後森さんは可能であれば家族と仲良く暮らしたいと思い、一度逃げてしまったアフリカへ再び戻る決意をする。急にパンチの効いたエピソード(バオバブのエピソードは特に雄大。)が現れたので特に印象に残っている。
読み終え、3つの物語には共通して「一般的な社会人」から少し距離を置いているような人が多く登場していると感じた。
会社勤めをしているなど定職についている人を「一般的な社会人」と定義するのは少し安直すぎるかもしれないが、登場人物が無職やアルバイトで生計を立てている大人で多数を占めていた。自身の周りにそういった人が少ないので、その人達の
「自由ではあるが募る将来不安」などを勝手に妄想したり、自分だったらどう感じるだろうかと考えながら読んでいた。