その約束は、あまりにも重すぎて
まず初めに。この記事ではFF14「漆黒のヴィランズ」の最新パッチ(パッチ5.3)までのネタバレを含んでおります。
これからプレイされるという方、プレイ中の方はぜひ読まないでストーリーを進められると良いと思います。
ネタバレ構わないという方やクリア済の方はよろしければお付き合いください。
「覚えておく」という事は、簡単そうに思えて何よりも難しい。
記憶なんて、ちょっと時間が経ってしまえば細かい事象は曖昧になってしまい、大まかな事しか大抵の人は思い出せなくなる。
確かに在った事実は記憶していても、そこにどんな想いが込められていたのか、誰がどんな事を託したのか。
そんな事まではっきりと記憶していられる人は、果たしてどのくらいいるのだろうか。
「漆黒のヴィランズ」は「記憶」に対してある種の「諦め」が描かれていたように私は感じた。
覚えている、なんてうわべだけの事。
事実は簡単に書き換えられてしまうし、人は自分の都合の良いように捉えてしまう。
アルバート達が第一世界を救う為にどれだけの覚悟を持ち、想いを抱き、命を捨てたかなんて誰も振り返らず、大罪人と切り捨てていたように。
オンド族が純粋な信仰心ゆえにだとしても、古代人を自分達の導き手と捉えていたように。
誰かが覚えていたって、伝えようとしたって、どこかで変わってしまう物は確かに存在する。
どれだけ覚えていると約束したって、それを果たすのは悲しくなるぐらい難しいのだ。
それでも。エメトセルクは光の戦士(以下ヒカセン)に約束をさせた。
彼が、アシエン達が「なりそこない」と切って捨てていた人々の英雄とされるヒカセンに約束をさせた。
『ならば、覚えていろ。』
『私達は…確かに生きていたんだ。』
アシエンもとい、古代人だってヒカセン達と変わらない。
どこかに家族がいて、友人がいて、恋人だっていて。
嬉しい事があったり、悲しみだって覚えたり。
好きなものがあれば嫌いなものだって当たり前に存在する。
それを忘れるなと彼は最期に言ってきた。
あまりにも重くて、あまりにも難しい約束だけれど、ヒカセンはそれを死ぬまで果たそうとするのだと思う。
最後の最後にようやく、少しだけ認めてくれたエメトセルクの為にも。
光が射すアーモロートの光景は、「蒼天のイシュガルド」で見た、悲しいぐらいに綺麗だった教皇庁の夕焼けと被って見えた。
蒼天での旅の記憶を、あれほどまでに大切にしてるヒカセンも同じだと私は思いたい。
「覚えている」という事は、簡単そうに思えて何よりも難しい。
繋げたい想いがあるのに、助けたい人達がいたのに、長い長い時間が経ってしまえば残酷なぐらい記憶は抜け落ちていく。
エリディブスはそういう人だった。
『2度も忘れたくない』
彼はそういう想いから、自分の役目だけを、何を果たすべきかだけを記憶に留めていた。
結果的に、エリディブスは自分自身を忘れていた。
何をしたかったのか、何の為に役目を果たそうとしていたのか。
それを拾い集めて彼に返し、繋げたのはヒカセンだった。
「覚えていろ」と言われたから。
パッチ5.0で交わした約束はヒカセンの行動原理の1つになっていたのだろう。
蒼天で守ってくれた盟友の言葉を、いつまでも胸に留めているのと同じなんだろう。
私はヒカセンに自己投影は一切していない。
ヒカセンもまた1人のキャラクターとして捉えており、私はヒカセンの旅路を遠くから見守ってるような感覚でプレイしている。
だから、ヒカセンが戦う理由に、前に進む理由にいつもいつも涙が出そうになる。
私がストーリーの展開にどれだけ苦しい思いをしても、ヒカセンは前に進んでいるから。
ヒカセン自身だって、苦しい思いをずっとずっと背負っているだろうに。
エメトセルクと交わした約束はあまりにも重く、私は涙を堪えるのに必死だった。
5.0のEDは耐えられたのに、5.3の討滅戦で彼の幻影がヒカセンを助けた時にはもう耐えられずその後はもうバトルどころじゃなかったぐらいだ。
まぁおそらく、彼はヒカセンを助ける為というよりは、エリディブスを助ける為の行動だったと思うのだけど。
「漆黒のヴィランズ」がここまで高評価だったのも頷けた。
「新生エオルゼア」からのストーリーが、全てここに集約されていたからだ。
無駄なストーリーなんて1個も無かったのだとようやく分かった。
ヒカセンが繋げてきたものが、ヒカセン自身をそして世界を救ってきたというのがこのストーリーの集約だ。
「覚えておく」という事は、簡単そうに思えて何よりも難しいけれど。
ヒカセンは、人々はこれからも記憶を繋いでいくのだろう。
そして私達は、その記憶が約束が繋がっていくのを見せてもらえるのだろう。
私はこれからの冒険が更に楽しみだ。
暁に増えた新しい仲間の彼が、どんな景色を見ていくのかも楽しみだ。
新たな物語が公開されるまで、私は一時の凪を感じていようと思う。
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