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アメリカワインへの影響力はかわっていく?!

…パーカー・スタイルのワインばかりがもてはやされ、そうでないスタイルのワインが売れなくなり、値下げを迫られるという現象まで起こりはじめた…。フランス人はこうした現象を「パルカリゼ」(パーカー化された) と呼びました。
葡萄酒の戦略 (前田琢磨 著)

これまで多くの記事でRobert Parker Wine Advocate ロバート パーカー ワイン アドヴォケート (RPWA) のワイン評価にふれてきました。ロバート パーカーは2019年に引退しましたが、RPWAは過去8名の膨大な評価データに加え10名の評価者により運営されてきました。RPWAは、現在でも世界でもっとも有名なワイン評価の情報源であることに間違いないと思います。

しかし先月、編集長のリサ ペロッティ ブラウンがRPWAを去ったことで、アメリカワインの評価には影響がでてくるのではないかと思います。それは、彼女がロバート パーカーの次にアメリカワインを多く評価していたからです。

RPWAデータベースをみますと、アメリカワインを評価した上位6名の評論家は以下のようでした (括弧内は評価数)。アメリカワインの評価全体の85%を占めるものです。

1. Robert M. Parker, Jr. (36,267) 過去の評価者
2. Lisa Perrotti-Brown (11,849) (過去の評価者)
3. Jeb Dunnuck (9,336) 過去の評価者
4. Erin Brooks (7,210) 
5. Jay S Miller (4,947) 過去の評価者
6. Antonio Galloni (4,657) 過去の評価者

このように、Erin Brooks以外全員が「過去の評論家」になってしまいました。

それでは、アメリカワインに対しては今後どういった影響力の変化が考えられるでしょうか
実はRPWAの過去の評価者が鍵を握っているように思います。

注目したいのが、3番のJeb Dunnuck ジェブ ダナックです。

彼は、2008年に”The Rhone Report”をはじめ、2013年にRobert Parkerにも認められて  RPWAに参画しカリフォルニア中南部などを担当しますが、2017年からは再度独立して「JebDunnuck.com」という個人メディアを立ち上げました。
RP/WAのように、”JD” という文字とともに点数の表示をご覧になられたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
彼のサイトは、RPWAと同様、シンプルです。通常知りにくいリリース価格を会員にならずとも容易に知ることができるというところがわたしはおもしろいと思っています。例えば、Screaming Eagle 2012, 2013, 2014のそれは$850であることがわかりました。

ちなみに、Jeb Dunnuckは、RPWAで評価した9,338本のアメリカワインのうち、わずか0.2%の22本に満点をつけました。ベスト3は、以下のとおりです。
1. Sine Qua Non (7本)
2. Cayuse (4本)
3. Alban Vineyard, Quilceda Creek (3本)

次に注目したいのは、6番のAntonio Galloni アントニオ ガッローニです。

彼は、2004年に“Piedmont Report”をはじめ、2006年にRPWAに参画しカリフォルニアなどを担当しますが、2013年からは再度独立して「Vinous (ヴィノス)」という個人メディアを立ち上げました。2014年にはStephen Tanzer ステファン タンザーの「IWC (インターナショナル ワイン セラー)」を買収し、勢力を拡大しています。

ちなみに、Antonio GalloniはRPWAで評価した4,657本のアメリカワインのうち、わずか0.3%の12本に満点をつけました。ベスト3は、以下のとおりです。
1. Colgin (3本)
2. Screaming Eagle, Peter Michael, Spottswoode (2本)

今後はRP/WAに代わり、ますます ”JD” や “Vinos/AG” の文字をみる機会が増える気がします。

なお、“WS” という文字を見かけることもあると思いますが、こちらはWine Spectator ワイン スペクテイターという雑誌の略です。RPWA、JD、Vinousのいずれもが会員サービスですが、WSは会員にならずとも購入可能です。広告も受け入れています。

このように、当分はRPWAが世界でもっとも有名かつ影響力のあるワイン評論の媒体であることには変わりないと思いますが、古くから対峙として有名であったWSに加え、RPWAから独立したJeb Dunnuck (JD)、Antonio Galloni (AG) (Vinous) の影響力が特にアメリカワインに対しては増してくるのではないかと想像します。

いずれにせよ、すべて同じ100点満点方式でわかりやすいです。
今後ワインを愉しむ際に、これらの評価者による評価も参考にしてみてはいかがでしょうか。

(Photo by Sydney Herron on Unsplash)

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