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データ民主化は社員の問題解決能力の基にワークする


この記事の趣旨

  • 社内の誰もが簡単にデータを利用できるような環境を実現する「データ民主化」

  • データは問題解決プロセスの中で1つの有力な材料となるが、前提として問題解決能力が備わっている必要がある

  • 「データ民主化」の効果を最大限発揮するには、BIツールスキルやデータリテラシーを上げるより先に、問題解決能力の育成が重要かもしれない

※1分析者の経験に基づく主張なので、ポジショントークな側面はあるかも

執筆に至った経緯


今まで何社かで「データ民主化」の一貫で、分析の対応をしたりBIツールの整備をしたりと、それを支える動きをしてきたが、十分にパフォーマンスを発揮していると実感したことは残念ながら無い。
確かに「データ民主化」によって、一定の効果を享受している社員も存在する一方で、期待しているほど利用されないケースが多い。

その問題を考察する中で、複数の要因が考えられたが、どの組織にも起こりうる普遍的な問題として、「そもそもデータの活用する以前に、社員の問題解決能力が足りていないのでは?」という課題にあたったので、それについて考察する。

問題解決能力とデータの関係性

問題解決能力について、必要な要素を分解すると以下のようになる。(中央大学のコンピテンシー定義がとても分りやすいのでそれを引用した)

課題発見  現状と目標(あるべき姿)を把握し、その間にあるギャップの中から、解決すべき課題を見つけ出す
課題分析  課題の因果関係を理解し、真の原因(本質)を見出す
論理的思考  複雑な事象の本質を整理し、構造化(誰が見てもわかりやすく)できる。論理的に自分の意見や手順を構築・展開できる
計画実行  目的と目標を設定し、順序立てて計画して確実に実行する
検証  計画して実行した結果を正しく評価し、計画の見直しや次期計画への反映を行う

中央大学 コンピテンシー定義一覧 問題解決力 より一部引用

各項目のうち、特に「課題発見」「課題分析」「検証」の中で、データが活用されうる。

簡単な例として、「夏の日中、エアコンを稼働させても居室が暑いと感じる問題を解決したい」、そんなケースを考えてみる。そんな時どうするだろうか?
上記の問題解決の流れに沿うならば、大まかに以下のような流れに分解できる。

課題発見 → 室温とエアコンの設定温度に乖離があり、エアコンが機能していないことを把握する
課題分析 → 部屋の色々な場所を点検し、特に窓際の室温が高いことが判明し、外気の問題だと特定する
論理的思考 → 外気を遮熱することで、課題は解決すると考える
計画実行  → 外気を遮熱するために遮熱カーテンを設置する
検証  → 遮熱カーテンの設置後に、室温とエアコンの設定温度の乖離が解消されているか確認する。

この中で、「課題発見」「課題分析」と「検証」の中で、それぞれ室温等の定量的な指標を活用している。定量的な指標を使うことで、状態を感覚的でなく客観的に状態観測することができる。

定量的に問題を捉えなくても、正しく原因を特定できれば、問題を解決することはできる。
ただ、実ビジネスで遭遇する厄介な問題は往々にして、複雑性が高く、何を改善すれば解決するのか、判断することは困難である。
そんな時にデータを使った定量的な状態把握は、問題解決の1つの大きな材料となる。

データ民主化の中で活用に必要なスキル

「データ民主化」でデータが扱えることは問題解決に大きく役立つと考えられるが、広く利用されているケースを私は残念ながら知らない。

利用されないというわけではないのだが、利用の範囲が組織やチームで追っているKPIのトラッキングの範囲に閉じていたりで、民主化した狙いの利用の間口が広がっていくといったことがあまりないように感じる。
(まぁ、新入社員や一般社員レベルではそもそも業務の中で問題解決まで求められていない等はあるかもしれないが)

また、分析の相談を受ける中でも、それを活用するための問題設定に問題があることが多い。

これは主観になるが、「データ民主化」の中で、データを上手く活用できるために必要なスキルとして以下項目があると考えている。

  • データを使ってKPI等の欲しい情報を可視化するBIツールの操作スキル

  • 可視化したデータから事象を読み解くデータリテラシー

  • データを1つの判断材料とした問題解決能力

どれも必要なスキルであるが、上の項目ほど習得が容易である一方で、下の項目ほど本質的に重要であると考えている。
データはあくまで問題解決プロセスの一端の役割を担うだけなので、問題解決プロセスの中での「課題発見」や「課題分析」が十分に行えないと、そもそもデータを使うという発想に至らない。
そのため、問題解決能力が備わってないことで、データを活用するという流れに至らないのでは・・・?というのは筋が通る。

最後に

「データ民主化」がワークしない要因として、データを活用する主目的である問題解決に必要な問題解決能力の問題を簡単にまとめた。

「データ民主化」は自分の興味領域であるものの、いまいち目に見える成果が出にくいと感じていたので、多少アプローチを必要性がありそうだ。
単なるBIツールやデータリテラシーの指導に閉じず、データを使った問題解決のワークショップのようなものを運営するなどの解決策を検討したい。

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