精神科 救急急性期病棟への入院　#5

※前回はこちらです

いろいろと不安定　とつぜん泣いたりする

この日から午前中の2時間だけ、部屋の外に出られるようになりました。初日は窓へ行って泣いて、部屋に戻ってお昼ご飯を食べて終わり。

泣いたのなんて、祖母が亡くなった時以来だと思います。一応、男なのでそう簡単には泣いたりしませんけど、入院したばかりの頃は、ちょくちょく一人で泣いたりしてました。

頭のフワフワが消えて物事を考えられるようにもなって、いろんなことを考えるようになりました。でも、いつ退院できるのかわからないし、退院後の未来も全く見えなくて、根っこの部分は真っ暗なまま。だから考えるこはネガティブなことばかり。

明日はどうしよう…
確か廊下に椅子が置いてあったよね
明日は座ってみようかな…
ホールは絶対無理…
知ってる人いないし…

その日はそんなことを考えながら眠りにつきました。

翌朝、いつものように朝ご飯を食べて、10時が近づくとなんだかソワソワして落ち着かない。それでも時間は刻々と過ぎていき、とうとう午前10時に。

少しぐらい遅れてもかまいません
なんなら忙しくて忘れてましたって感じでも全然大丈夫です

って思っていたら、無情にもほぼ時間ジャストに看護師さんが部屋にやってくる。

「開放だよ～　お部屋から出てもいいからね～」

笑顔でそう言い残し、天使の看護師さんはあっという間に空の彼方へと消えてしまう。

そんなの無理です…

向こうから話しかけてくれて
その人が話しやすそうな人だったら
だぶん大丈夫だと思うし
きっと仲良くなれる
でも、ひとりの時間も好きなので
できればそっとしておいて下さい…

超ワガママです…

子供の頃って、すぐに人と仲良くなって、けんかしても「ごめんね」ですぐ仲直りできる。そんな能力が自分にもあったらいいなと思います。

ひとり遊びがすき

せっかくだから今日は廊下の椅子まで行ってみよう。いやだったらすぐに部屋に戻ればいいや。

そう思って、まずは昨日と同じ窓のところまで行って外を眺めよう。また泣くかもしれないけど、昨日も行けたから。きっと大丈夫。

外を眺めているだけで
とっても落ち着く

あの人はどこへ行くのかな
どこか買い物へ行くのかな

次に通る車が何かを当てるゲームを一人でやってみる
思いのほか、トラック率が高くて
なかなか当たらないという…

10分ぐらい、ずっと外を眺めて
立ってると足が痛くなってくる

時折、看護師さんが後ろを通り

「大丈夫？　ちゃんと眠れた？」

って声をかけてくれたり

人と話をするのが久しぶりで
上手く気持ちが伝えられない。

大丈夫です　はべんりなことば

保護室がある一角にはもう一枚のドアがあり、その先がホールやお風呂場がある異世界になってます。

振り向くとドアが開いていて、その先に廊下が見えている。誰かが話をしている声や、テレビの音も聞こえてくる。時々、看護師さんや、入院中の患者さんらしき人がドアの前を横切り、自分と同じ服を着ている人もいれば、スウェットの上下を着てる人もいる。

私服でもいいのかな…
だったら自分の服がいいな…
でも、どうしたら家に取りに行けるんだろう…
誰かに持ってきてもらうのかな…
でも、家族とかいないし…
頼める人もいないし…
どうしよう…
どうしよう…

超ネガティブ思考です…

ボーッとしながら廊下に出てみると
出てすぐのところに椅子が置いてあって
病院の中庭が見渡せるようになっている

中庭には花壇があって
奇麗な花が咲いている

下のフロアに居る患者さんや
看護師さんの姿も見える

通りがかった看護師さんから

「テレビ見ててもいいのよ～」

っていわれて、思わず

「大丈夫です」

なにが大丈夫なのかよくわからないけど、
そう答えるので精一杯。

わたしの時間をかえして

ぼんやり窓の外を眺めていたら
男性の患者さんに話しかけられる

その人から「はじめまして」って言われたから
私も「はじめまして」って返した

いつから入院してるのかって聞かれて
昨日から午前中だけ解放になったって伝えて

そしたら

隔離されてるんですか？
マジですか？
暴れたんですか？
自殺未遂ですか？
自分、傷病手当もらって休職してるんですよ
ちょっとホールで話しましょうよ

他にも何か言ってたと思うけど、

この人とは、もうこれ以上は話さないほうがいいなって思って、すぐに部屋に戻った。

すごく嫌な気持ちになって
空いていたドアを自分で閉めた

その人は、アルコールの治療で入院してて、
これが4回目の入院だと言ってた。

あなたが何回入院したかとか
傷病手当がどうのこうのとか
そんなの私にはどうでもいいことだし
私がなんでここにいるのかなんて
初対面のあなたに話したくない


やっと廊下まで出ることが出来たのに
もう少しだけ窓の外を見ていたかったのに

開放時間ってぜんぜん嬉しくないな
むしろ鍵かけてもらったほうが安心する


最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回へ続きます。