【クラシックカー】ナンバーマッチングなんかいらない
ガレージの空いたスペースに野生馬(aka ポニー)がやってきました。
50年以上前のクルマなのでその間にたくさんの出来事があったでしょう。新車当時は当たり前に走っているクルマとして、そのクルマのターゲット通りの活躍をしたんだろうな。スポーツカーならサーキットを走ったかもしれないし、トラックならたくさんの荷物を運び、ファミリーカーなら幸せな家族を見守ってきたかもしれない。
そのうち型遅れとなり安い値段で取り引きされ、まだお金のない若者が最初のクルマとして使ったかもしれない。新車で購入したオーナーがずっと大事に乗っていたかも。しばらく納屋で忘れ去られていたなんて事もあるでしょうね。エンジンが壊れたかもしれないし、事故もあったかもしれない。ドレスアップ目的でいろいろカスタムのベースになった事もあったでしょう。
そして多くのクルマがスクラップにされていく訳です。
運良く生き残ったクルマ達。そのクルマが生まれた時ってどんな姿だったかを教えてくれるのが一枚のプレートに刻印された様々な記号です。そこには生産年月日、生産工場、内装仕様、ボディカラー、エンジン仕様、販売地域などを表すコードが記されています。インターネットを使いそれらの情報をチェックして生まれた当時と現在の姿を比べ、過ぎてきた時間に思いを馳せるのです。
長い間、現役でオーナーのために働いていたなら、エンジンやミッションなどの機関を交換しているのは想像に難しくありません。アメリカの乾燥した気候は日本に比べて錆の問題は回避できますが、強い日差しは塗装を痛め、紫外線により内装はヒビ割れます。機関を降ろしたついでにボディもやれてきたからリフレッシュ目的で色を塗り替える事もあるでしょう。様々な理由で現在の姿に生まれ変わっているはずです。
もし生まれた当時の仕様と現在の姿が全く同じであれば一般的にとても価値があります。いわゆるナンバーマッチングと呼ばれて奇跡的にオリジナル状態で大事にされてきたと想像できるからです。
一般的にナンバーマッチングは価値があると書きましたが、個人で楽しむにはそれが少々重荷だと思う感覚ってわかりますか?あえてその理由は書きません。それを理解したオーナーが誇りを持って維持をし、次世代に受け継ぐ資格があるんだと思います。
ナンバーマッチングを窮屈に感じる私は、出荷時と現在の姿のギャップから今まで過ごしてきたストーリーを妄想し、今度は私の色に染めてやろうと思うのです。どちらにせよ決して過激にカスタムをするわけではありませんが、時代の重みを纏ったバトンを受け取るのは少し躊躇します。
クラシックカーコレクションも犬のブリーディングも貴族の嗜み。時代の小波に翻弄されてしまうような庶民が安易に手を出してはいけない世界なんじゃないかな。