紙で造船!?中学校が造船所に?|船の仕事(造船)を通じて将来の仕事を考えよう
一般社団法人 日本中小型造船工業会は、次世代を担う子ども達に造船業を中心とする海事産業を通してものづくりの素晴らしさを知ってもらうため、キャリア教育の一環として各地の小中学校で海事産業ものづくり体験講座を実施しています。
2024年度は山口・愛媛・広島・高知の4県8校で実施、400人以上の子どもたちが造船業や海事産業について学んでいます。
山口県 下関市立長成中学校
愛媛県 宇和島市立城北中学校
広島県 尾道市立向島中学校・呉市立仁方中学校・呉市立郷原中学校・広島大学附属三原小学校
高知県 須崎市立須崎中学校・須崎市立多ノ郷小学校
今回の記事では2024年8月19日に呉市立仁方中学校で行われた、海事産業ものづくり体験講座の様子をご紹介します。
1校時:暮らしと船 講師:一般社団法人をかしや
最初は船と私たちの生活との関わりから学んでいきます。
みなさんは当たり前の日常と船が密接に関係しているのをご存じでしょうか?
例えば、船で小麦を運べなくなると、普段100円くらいで買えるパンも10倍ほどの値段になってしまいます。
燃料資源や食料と船の関係性、船が環境に優しい乗り物であること、さらには仁方中学校の地元、呉市と造船の歴史について学んでいきました。
復習
今回子どもたちが学んだことをクイズで出題します!!!
Q:日本で輸出入される貨物のうち、船で運ばれるのは約何%?
①およそ50%
②およそ70%
③およそ90%
④およそ100%
ヒントはCAJS YouTubeをチェック!!
https://www.youtube.com/watch?v=c6y4kVQuw6UNzBcD
正解は④およそ100%
実は船ってすごいんです!!!
2校時:船のつくり方(造船所の仕事他) 講師:一般社団法人日本中小型造船工業会
ガイダンスからちょっと踏み込んだ内容を学んでいきます。
船には運ぶものや目的によって、大小さまざまな形の船があります。
またその船をつくっていくには多くの作業工程や担当業務があります。
営業・事務・設計・研究開発・資材調達・製造・安全・などなど普段学ぶことのできない造船の世界に触れていきました。
有限会社 小林船舶設計さんからも船の配管設計について、お話しいただきました。
昔は手書きの設計図でしたが、現在はCADというコンピューターシステムを使います!
復習
今回子どもたちが学んだことをクイズで出題します!!!
Q:現在の船のつくり方は○○建造法と呼ばれます。
以下のうちどれでしょう?
①一体型建造法
②ブロック建造法
③溶接型建造法
④近未来建造法
正解は②ブロック建造法
戦艦大和からブロック建造法が始まったと言われ、日本発祥の技術です!!!
3・4校時:工作講座(グループワーク) 講師:一般社団法人日本中小型造船工業会
長さ200mの船は厚さ約2cmの鉄板で建造されていますが、この船を仮に1mに縮めた場合、その鉄板の厚みは1mmとなります。
1mmは紙の厚さと同じなので、素材は違いますがペーパークラフトで実物と同じような強度の船を作成することができます。
1、2校時ではしっかり座学で学びましたがここからは実践です。
班に分かれて、各班が造船所になり、協力してペーパークラフトの模型を建造します。
なんと!!
このペーパークラフトは、実際の船のブロックの設計図からできており、のりしろなどもありません。
一見簡単そうに見えますが、考えて協力しながらつくらないと上手く出来上がりません。
作業工程
1.切り出し
鉄板も同様ですが、船の部材を切り出していきます。
講師の指導を仰ぎながら、素早く丁寧に行います。
2.整理整頓
切り出した部材をきちんと並べて整理することも次の行程にスムーズに移るための造船所のお仕事です。
製造現場での安全に関わる重要な作業なんです。
3.組み立て
1枚の紙は薄くて弱い(ペラペラ)ですが、”ロンジ”と呼ばれる骨組みの形状にすることで強度が増します。これが薄い鉄板を丈夫にする工夫です。
船はできるだけ多くの荷物を運ぶため、自身(船体)の重さを少しでも軽くするよう設計されています。
厚く重い鉄板を使わず、薄い鉄板を骨組みにすることで重量も抑えられるというメリットがあることもわかりました。
4.ブロックの搭載
組立で出来上がったブロックを並べていきます。船の形も見えてきました。
5.船名・ファンネルマーク
最後に、自分たちが建造した船に名前を付け、ファンネルマークも描いて完成です。
ペーパークラフトの模型つくりを通して、軽くて丈夫な船をつくる工夫や、1隻の船を多くの人たちが協力してつくり上げていることについて、理解することができました!
海事産業ものづくり体験講座ではほかにも船の塗料・海の生態系・タブレットによるブロック設計・海運や船員の仕事・造船所や造船を学べる高校の見学などなど、さまざまな講座を組み合わせて行っています。
この講座を通して、多くの子どもたちに海事産業の世界を知ってもらい、船に携わる仕事を将来の選択肢の一つとして考えてもらえると嬉しく思います。