『キン肉マン』ネタバレ訴訟問題と今後の本noteの方針について
こんにちは、Cahierです。相変わらず休職中で、毎日ゲームして過ごしています。
いろいろあって、しばらくツイッターから離れていたんですが、僕がツイッターから離れている間に漫画のネタバレや感想についてゴタゴタガ起こっていたみたいです。このnoteにも関係がありそうな問題だったので、ちょっとそれに関する話を今日はします。
「『キン肉マン』ネタバレ訴訟問題」とは?
ことの発端はこちらのツイート
こちらは『キン肉マン』で有名な漫画家ユニット「ゆでたまご」の嶋田隆司さんのツイートです。
現在、『キン肉マン』は雑誌『週刊プレイボーイ』とそのWeb媒体『週プレNEWS』、さらにみんな大好き『ジャンププラス』で連載しています。このうち『週プレNEWS』、『週刊プレイボーイ』では毎週月曜日に更新されているのですが、深夜0時ちょうどに更新される『週プレNEWS』と紙媒体の『週刊プレイボーイ』とでは、どちらの媒体を購読しているかで閲覧にタイムラグが生じてしまうんですね。
上記の嶋田氏のツイートも、このような背景の下で出されたものと思われます。
また、そもそも『キン肉マン』という作品自体がネット上のやり取りの際にスクショ多用されがちな作品であったという点も背景としてはありそうですが、今回はこれに関するお話は割愛します。ややこしくなるからね。
そして、9月10日、『週プレNEWS』編集部が次のような声明を出します。
この声明のうち、重要なのが以下の点
たとえ軽い気持ちであったとしても、漫画のスクリーンショットをSNSやブログに著作権者の許諾無く投稿(アップロード)する行為は、法で定める一部の例外(※)をのぞき、著作権の侵害にあたり、場合によっては刑事罰が科され、あるいは損害賠償請求の対象となります。悪質な著作権侵害、ネタバレ行為(文章によるものを含みます)に対しては、発信者情報開示請求をはじめ、刑事告訴、損害賠償請求などの法的手段を講じることもありますので、ご注意ください。
要するに、スクショを勝手にぺたぺたしたら、下手すりゃ訴訟よ?という話なわけです。別に今までだって黙認されてただけで下手すりゃ訴訟なのは変わらなかったわけなのですが、気になるのは以下の文言です。
ネタバレ行為(文章によるものを含みます)に対しては、発信者情報開示請求をはじめ、刑事告訴、損害賠償請求などの法的手段を講じることもあります
え?文章もだめなの??
普段から僕のnoteを見てくださっている方はご存じの通り、ここ最近の僕のnoteはネタバレもりもり、セリフの引用もりもり、スクショペタペタはなしというスタイルなので、文章によるネタバレがまったく許されないとなると、大変困ってしまいますね。
極めつけがこちらのツイート
この細野修平という方は『ジャンププラス』の編集長の方らしいのですが、『ジャンププラス』でも『週プレNEWS』と同じスタンスをとると明言しちゃっています。つまり、
ネタバレ行為(文章によるものを含みます)に対しては、発信者情報開示請求をはじめ、刑事告訴、損害賠償請求などの法的手段を講じることもあります
そういうことです。
一応、当該ツイートは、『キン肉マン』に関してのみ、『週プレNEWS』と同じ対応をするよ、読むのが一般的な読解であるように思えます。
とはいえ、やっぱり法的手段をとられる可能性があるのは怖いですね、怖いですよ。
文章によるネタバレ行為は違法なのか?
そもそも、『週プレNEWS』編集部は文章によるネタバレ行為に法的手段を講じると述べていますが、そんなことは可能なのでしょうか?
刑事事件弁護士ナビによれば、
書籍・漫画のストーリーを自分の言葉で表現する行為は違法ではなく、刑事はもちろん、民事の責任を問われることもありません
とのことです。一般的な感想などに含まれるネタバレは、基本的には何ら法的な責任を負うことはなさそうです。
では、セリフなどの引用の場合はどうなのでしょうか。刑事事件弁護士ナビによれば
書籍・漫画の公開で責任を問われるのは基本的には著作権を侵害した場合ですが、著作権で保護されるのは書籍・漫画の表現行為です(文章とか画像などの表現)
と述べています。とはいえ、文章の引用はSNSやブログに限らず、日常的に行われています(上記自体がよそのウェブサイトからの引用だし)。
当然のことながら、著作権法の保護にも、例外があるわけです。この点は、『週プレNEWS』編集部の声明でも触れられています。
すなわち、「著作権法上の『引用』の条件を満たす場合」です。
引用の要件は著作権法第32条第1項に記されています。
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
(e-Gov法令検索より)
あまり明瞭な記述ではありませんね。弁護士法人クラフトマンによれば、引用の要件は、一般的には以下のように解釈されるとしています。
a 引用部分が公表された著作物であること
b 引用部分と自己の著作物の区分が明瞭であること
c 自己の著作物が「主」であり、引用部分が「従」であること
d 「引用の目的上正当な範囲内」であること
e 出所を明示すること
f 改変など、引用部分の著作者人格権を侵害しないこと
漫画からのセリフの引用であっても、上記の要件を満たしていれば、法的には問題ないと考えられます。争点になりそうなのは「引用の目的上正当な範囲内であること」という要件ですね。SNSやブログ上でやり取りされる感想においては、セリフの引用が正当な範囲内であるか否かというのは、素人である僕には判断がつかないですね。「感想」におけるセリフの引用は、不安であれば避けたほうが良いかもしれません。
というわけで、結論としては、仮にネタバレであっても、自分の文章で表現する限りにおいては法的には全く問題がないということでした!
刑事告訴や損害賠償請求はもちろんのこと、発信者情報開示請求も要件として「権利が侵害されたことが明らかであること」というものがあるので、文章によるネタバレ行為に対してこれらの措置をとることは恐らくは不可能です。
(参考:https://www.vbest.jp/personal/eraserequest/disclosure_request/)
見てるか?『週プレNEWS』編集部!!!!!!!!!!!!
人間の情熱はだれにも止めることはできないのだ!!!!!!!!!!!!
本noteの今後の方針
『キン肉マン』ネタバレ訴訟問題に関しては以上になります。ここからは、僕のnoteの今後の方針に関して、お話します。
結論から言うと、これまで通り
ネタバレマシマシ、セリフ引用マシマシ、スクショなし
という方針でやっていこうと思います。
元々、このnoteはうまくいったら収益化する予定でしたので、リスクの大きいスクショペタペタは最近は意識して避けてきていました。スクショペタペタしている『BLEACH』と『ONE PIECE』の記事は一時的に非公開にしています。
逆に、セリフ引用は今後も行っていきたいと思います。僕のnoteに関してはこの行為がほぼリスクゼロで行えるはずだからです。
なぜなら、僕のnoteは研究活動だからです。
Wikipediaによれば、研究とは「ある特定の物事について、人間の知識を集めて考察し、実験、観察、調査などを通して調べて、その物事についての事実を深く追求する一連の過程のことである」とのことです。
まさに、僕が漫画に対して行っていることじゃないですか?僕の漫画に関するnoteは研究と位置付けてもいいはずです。
ここで、著作権法第32条第1項を思い出してみましょう。
報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
そう、研究目的であれば引用は問題なく行えると考えられるんです!
実際、大学なんかでレポートや論文を書くときには、みんな文章の引用なんかどんどこでやってますからね。
というわけで、僕のnoteは今後も特に変わらない方針でやっていきたいと思います。非公開にした2つの記事は適宜修正して後日再度公開するので安心してください。
おわりに
最後に、言っておくべきことは、僕は決してネタバレを助長したくてこのようなnoteを書いたというわけではないということです。
一方で、「ネタバレなんて絶対に許されない!ネタバレをする人は未読・未見の人にもっと配慮すべきだ!」とも全く思っておりません。
そもそも、どのようなネタバレであれば不快になるのか、あるいはならないのか、というのは本当に人によってそれぞれです。「衝撃のラスト」「驚きのどんでん返し」といった煽り文句でさえ、一種のネタバレであるとして不快になるという人もいると聞きます。他方で、『ONE PIECE』のような人気漫画のネタバレサイトが膨大な数のPVを稼いでいることもまた事実です。
「ネタバレ」というものへの向き合い方は、本当に人それぞれです。
そして、ここで問題となってくるのは、一つは、感想とは原理的に「ネタバレ」を含まずには存在し得ないという点です。これは、前述したような「ネタバレ」の多様な在り方を鑑みれば、至極当然のことです。
そして、もう一点、もはや情報の氾濫は個々人の手ではどうすることもできない時代になってしまったという点です。僕のようにツイッターなんかを日常的に触っていれば、未読の漫画や未見の映画のネタバレに触れてしまうのは避けられないことです(僕も毎週『チェンソーマン』のネタバレを食らいながら日々を生きています)。
幸いにも、我々は「ふせったー」やワードミュート/NGワード機能など、「ネタバレ」を発信する側からしても受信する側からしても有用だと思われるツールに恵まれています。こういったツールを駆使して、お互いがお互いを適度に理解しつつ、コンテンツに向き合っていけるようになるといいですね。
それでは、今日はここまで。本noteの感想はネタバレも込みでいつでもお待ちしております。
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