ドラキュラ伯爵のジンギスカン大作戦(レビュー:『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』)
オススメ度:★★★☆☆
> ルーマニアのカルパチア地方からロンドンまで、謎めいた50個の無記名の木箱を運ぶためチャーターされたデメテル号は、不可解な出来事に遭遇する。見渡す限りの大海原で、毎夜人間の生き血を求め襲い来るドラキュラが出現したのだった。パニックに陥りながらも、生き残りをかけた壮絶な戦いに臨む乗組員たちだったが…。
タイトルとあらすじの時点で興味を惹かれた作品。なお、監督はアンドレ・ウーヴレダル。『トロール・ハンター』や、佳作ホラー『ジェーン・ドゥの解剖』を撮っている。
さて、本作の何に興味を惹かれたかと言うと、これはブラム・ストーカー原作の『吸血鬼ドラキュラ』でちょっぴり描かれていたシーンの映画化なのである。『吸血鬼ドラキュラ』を実際にお読みになった方はそれほど多くないと思うが、原作では作品の舞台はトランシルヴァニアからイギリスへと移動する(おそらく、イギリスでのイメージしか持たない人が多数派だろう)。
この「トランシルヴァニアからイギリスへの移動」にドラキュラは船旅を使うのだが、その船中で起こった船員全滅事件を、船員の視点から描いたのが本作なのだ。というわけで、原作既読者はタイトルとあらすじを見た時点で、「あっ、あのシーン!」と感じることだろう。
なお、原作の該当箇所はこちらで読める。
それで本作であるが、なかなか評価が難しい。良い点も悪い点もある。
「なにかヤバいクリーチャーが乗っている船内で、船乗りたちが一人一人消えていく……」というプロットはまるで『エイリアン』だ。「SF設定を時代劇でやろうとした試み」と受け取るなら、これはなかなか面白い。他にもあからさまに『シャイニング』を意識したシーンがあったりと、監督の古典ホラーへのリスペクトが感じられもする。ホラー作品としては十分に及第点を超えた作りではある。
一方で、首を傾げざるを得ないのが、やはり今作のクリーチャーであるドラキュラの造形だ。ドラキュラの一般的なイメージは貴族(伯爵)であろうし、それはストーカーの原作においても変わらないはずなのだが、本作におけるドラキュラはハゲで細くて猫背で動きの早いクリーチャーである。……全然、貴族っぽくない。
しかも終盤ではコウモリ形態になって空を飛び回るのだが、このシルエットが完全に仮面ライダーの怪人コウモリ男だ。
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