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シリーズ最大の暴力布陣で怪異に挑む!(レビュー:『戦慄怪奇ワールド コワすぎ』)

オススメ度:★★★★★

> 呪われた廃墟で撮影された投稿映像。そこには、不気味な祭壇と全身血まみれの赤い女、そして謎の赤ん坊の泣き声が収められていた。粗暴なプロデューサー・工藤とディレクターの市川、カメラマンの田代による「コワすぎ!」チームは、怪異を解き明かすべく取材に乗り出すが……。

 シリーズお馴染みの金属バットに加え、鉄パイプ、ククリ、そして拳……。シリーズ最大の火力で怪異に挑む最新作にして最終作。それが『戦慄怪奇ワールド コワすぎ』だ。

(※なお、シリーズ1~4までのレビューは以前に書いたのでそちらをご参照頂きたい)

 これまでも様々な視聴者投降映像を検証してきた工藤・市川・田代トリオだが、今回は、とある廃墟に現れたナイフを持った全身真っ赤な女(赤い女)を追うことになる。

 本作は無印コワすぎとも超コワすぎとも異なる世界線という設定だ。相変わらずふてぶてしい市川は年齢に伴いディレクターへと昇格(白石監督も「中の人が歳取ってADやってる年齢じゃなくなってきた」と言っていた)。さらには工藤の暴力に対してカウンターでパンチを入れる武力をも得た。過去には工藤に対して眼窩底骨折を負わせたことすらある設定となり、また拳には”気”がこもっていると霊能者からも評価されるなど、武力面で市川の超強化がなされている。

 それにしても、自分に骨折を負わせた市川を「仕事はできる」と評価して再び招聘する工藤の懐の広さよ。工藤の会社はコロナ禍の影響で潰れかけており、今回の映画で一発逆転を目論んでいるという設定だが、しかし、あの状況で会社をここまで持たせて来たのは十分すごいことではある。工藤は給料とかはちゃんと払うらしいので、あの全社会的な苦境の中、田代とかをちゃんと食わせて来たのかと思うと、零細潰れかけ映像制作会社だからといって馬鹿にしたものではない。

 その工藤は工藤で、いつもの金属バットを取り出して「これで(怪異を)殴ろうと思う」など、ファンサービスも抜群だ。私はここで堪らず吹き出してしまった。それを聞いた霊能者も「(相手は)物理的存在だから殴れるよ」とノリノリである。

 今回の霊能者の鬼村さんも良い味を出している。いつかこれは別でまとめたいと思うのだが、ホラー作品には「霊能者の類型」のようなものがあると私は思っていて、それによると鬼村さんは「普通じゃない系」の霊能者に分類される。

「霊能者っぽい霊能者(宗教系の衣装など/実直な性格)」
「普通じゃない系霊能者(伝統宗教を踏まえながらも現代的アレンジや特殊な流儀を取り入れる)」
「完全に異様な霊能者(既存の宗教の枠から完全に逸脱)」

 仮にこの3つに分類するなら下に行くほど格が高くなっていく。既存の宗教の様式から逸脱しているほど「守破離」の「離」の段階にあると脳が認識するのかもしれない。もしくは、「守破離」などのレベルではなく、そもそも伝統的な宗教の体系に収まらない存在と認識するのだろうか。

 そういうわけで、鬼村さんは比較的、格の高い霊能者であった。最初は「引き受けた以上、プロとして守ってやる」という態度だったのだが、それが現地に着く前からだんだんビビり始めて、現地に着いた(ワープさせられた)段階では直ちに撤退を進言。しかし、退くこともできないと分かると師匠に援護を求めるなど、能力が足りない割には最善の動きをしていたと思われる。

 実績ある霊能者が怪異の前に力及ばず、「守ってやる」立場から「一緒にビビる/狩られる」立場に転落する瞬間は私はホラーの醍醐味だと思っている。「いま起こった怪奇現象はなんなんだ」と一同に詰め寄られた時の鬼村さんの「ハッキリ言うが……分からん」など、私はガッツポーズしそうになった。

 そんな鬼村さんだが、師匠である玉緒が助けに来た時の、鬼村さんの態度がこれが超かわいい。玉緒から「泣くなよ」と言われていたが、鬼村さんは自分の手に負えない案件をそれでも必死に頑張ってたんだな、というのも感じるし、玉緒の前でビシッとかしこまってる様子からは「こりゃ弟子やってた間、メチャクチャしごかれてんな」とも思うし、でも、玉緒師匠の実力もメッチャ信じてるんだろうな、とも感じた。

 様々なファンサービスが盛り込まれ、キャラ的な面白さが強い一方、ストーリー面はかなり茫洋としており、相当に分かりづらいと思われる。フワッとした解説で良いのなら以下のような感じだろうか(以下ネタバレ注意)。

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