女装男子に特に意味はない(レビュー:『オクス駅お化け』)
オススメ度:★★★☆☆
『リング』の高橋洋氏が最初に脚本を書いたとのことで、その『リング』を彷彿とさせる探偵系ホラーに仕上がっている。なお、探偵系ホラーというのは私の造語で、何らかの怪奇現象の源泉を様々な証拠から追い、調査・特定していくタイプのホラー作品を指す。『リング』『残穢』などが該当する。
作中に現れる謎の数字、突然出てくる子供の謎、不可解な傷跡、思い出せない記憶、井戸のビジョンなど、様々な要素が立ち上がり、それらが一つの真相へと収束していく過程はまさに探偵系ホラーであり、ホラー映画に特にそういった面白みを求めている私のような人間にはひとまずオススメできる作品と言える。
……が、惜しい。見終わった後の満足度に奥行きが足りていない。
本作の欠点だが、まず物語の骨子を掴むにあたって、ノイズとなるような描写が多い。冒頭の怪奇現象エピソードは鮮烈ではあるが、そこで出てきた事故死も謎の女も、結局、本編にどう関わってくるのか分からない。Wikipediaによれば……
いや、どうなんだそれ……??
冒頭部分は「流行ったウェブトゥーンの実写化をくっつけた」だけで、どうも本筋とは全く関係がない……ようだ? 「あの謎の女はどう関わってくるんだ?」「ひょっとして時系列が逆で、本編終了後の未来であの事件が発生するのか?」など、われわれは真面目に考えたが、特に意味はなかった気がする。
また、作中で異彩を放っ……というか、悪目立ちしている要素として女装男子が出てくる。これの必然性もなんだか良く分からない。一応、主人公が仕事上で追い詰められる原因となるのだが、それもロジックがイマイチ不明である(酔っ払いの女装男子を取材して掲載したら望まぬアウティングになってしまった、ということらしい)。分からんでもないが、なんで女装男子を出してきたのかはピンと来ない。われわれは……
「……分かったぞ! 主人公である女性記者は怪異に深入りしているのになぜか呪われていない。それと女装男子の存在を合わせて考えると……」
「そ、そうか!」
「この怪異は男しか呪わないんだ!!」
「だから、女装男子を出してきたんだ!」
「すごい! ちゃんと意味があったんだ!!」
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