智天使ざまあ!(レビュー:『ヘルレイザー ジャッジメント』)
おすすめ度:★★★★☆
> 凶悪殺人事件の解決に挑む3人の刑事が地獄の底に突き落とされる。『ヘルレイザー』シリーズのリブート版。
本作はXなどで検索すると「最初の10分(だけ)は素晴らしい!」といった意見が散見される。タイトル前のその最初の10分は、ゲロありゴアありの異常度の強い映像で……なるほど、確かに怪奇趣味的にはよくできているが、「みんなこれを見て絶賛してんのか……」「目の肥えた人ばかりだな……」という思いに駆られざるを得ない。いや、普通の人が普通に見るとただのグロ映像ですよね!???
さて、本作だが『ヘルレイザー』シリーズの、なんと10作目である。息の長いシリーズだ。シリーズを見たことがなくても、ピンヘッドという顔中に釘が刺さったハゲのオッサンを知っている人は多いのではないか? あれがセノバイト(修道士)と呼ばれる本シリーズの抱えるホラーモンスター集団だ。
これほどにシリーズを重ねるとはどういうことか? 例えば『13日目の金曜日』なら10作目ともなればジェイソンが宇宙へ行く。そのくらいの変化が生まれるということだ。
そして、本作でも、あの特徴的なガジェットである「ルマルシャンの箱」について、
「もうデジタルの時代だからこんな木箱じゃダメだよぉ……」
といった言及がなされてしまう。おお、時代の流れよ……。ルマルシャンの箱もデジタル化が迫られる時代なのか(なんのかんのでアナログのまま活躍するけど)。
なお、このルマルシャンの箱だが、なかなか説明が難しい。
> パズルボックス『ルマルシャンの箱』を組み替えたものの前に現れる、『魔道士セノバイト』の与える『快楽』によって翻弄される人々を描く作品であるが、本作に登場するピンヘッドをはじめとするセノバイトの苦痛に満ちたビザールな姿は、多くのフィクションのデザインに多大な影響を与えた。
これはルマルシャンの箱の説明というよりはヘルレイザーというシリーズ作品の説明であるが、このようにストーリーの中でまさに「ガジェット」として用いられている。ルマルシャンの箱に焦点を当てて作品を作ればSCPのような作品になるとは思うし、実際、洒落怖のリンフォンはルマルシャンの箱が元ネタの可能性もある。
しかし、本作は箱自体よりもそれにより召喚されるセノバイトの方にフォーカスされているし、それと同じくらいクライムサスペンス要素が重視されている。謎めいたセノバイトたち(ルマルシャンの箱)の話と、同時並行で「説教者」と呼ばれる連続殺人鬼による説教殺人事件がクローズアップされるのだ。
この殺人鬼のやり口は概ね『セブン』の手法と同じで、見立て殺人であり、テーマが7つの大罪ではなく十戒なところが彼のオリジナリティだ。あらすじ紹介に出てくる「3人の刑事」は、この説教殺人鬼を捜査している側となる。
面白いのが、巷ではこの連続猟奇殺人が発生しているのだが、セノバイトたちはそれとは特に関係なく独自で行動している点だ。なので、刑事がセノバイトたちに捕まった時、刑事は、当然、この異常者集団(セノバイト)たちが「説教者」ではないかと考えて詰問するのだが、するとセノバイトたちは……
「いや、それに関してはこっちが聞きたいんだけど……」
と、彼らは彼らで困ってしまう。
セノバイトたちの中での一番の下っ端と思われるグラサンは中間管理職的な立ち位置で、だいたい常に困っている。一般人からするとこのグラサンも、訳の分からん理屈と価値観で異常な加害性を発揮してくる恐るべきホラーモンスターなのだが、本作では上司のピンヘッドにへいこらせざるを得ないし、突然出てきた上位存在からは横槍入れられるし、いつも通りにやってたら現場がトラブってアタフタするわで、妙に親近感を覚える存在となっている。彼が本作で一番オロオロしている。
ともあれ、本作は「猟奇殺人鬼による連続殺人」と「セノバイトたちの謎めいた加害行為」が二軸で同時進行していき、それが最後に交わっていく。しかし、ここまでなら、まあ及第点程度の作品であろう。私が本作を高く評価しているのは、そこにさらに第三軸とでも言うべき闘争軸が発生することで、それにより本作の世界観が神話的な拡大を見せることだ。
というのは、そこで重要になるのが上記に書いた「突然出てきた上位存在」なのだが、実は彼女は
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