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「本当にやりたいこと」から目を背けた私が、限界を迎えるまで。

退職を告げたその日の午後、私はすべての仕事を手放し、休暇に入った。

39歳、ワーママ。上の子は今年小1。
キャリアに悩むのは、このタイミングではごく自然なことだった。
でも、私が本当に退職を決めたのは、ある日突然訪れたメンタルの不調――もし診断名がつくなら「軽い適応障害」だろう。上司と向き合うことがもうできない、と心の奥で決定的に感じた瞬間があったからだった。

ただ、それは"突然"ではなかったと思う。
その瞬間に至るまで、私はずっと小さな違和感を押し殺し、我慢し続けてきた。
積み重なった不満や葛藤が限界に達し、最後のひと押しとなる出来事が起こっただけ。

今日は、私の心が壊れるまでに起きた変化を振り返ってみる。

1. 「自己成長」から「子どものため」へと変わった仕事の目的

20代の私は、がむしゃらに働いていた。
残業は当たり前。目の前の仕事で成果を出し、誰かに認められることが何よりのモチベーションだった。
成長意欲が強く、「昨日の自分よりも今日の自分がアップデートされる」ことこそが仕事の報酬だった。

でも、32歳で妊娠したときから少しずつ仕事への向き合い方が変わり始めた。「自分のため」だった仕事は、いつの間にか「子どものため」になっていた。

フルタイムではあるけれど、残業はせず育児とのバランスを最優先。仕事の目的も、いつか必要になる習い事や塾代、旅行や留学の費用を稼ぐため――そんな実利的なものになっていった。

気づけば「誰のために働いてるんだ」とぼやく昭和のお父さんのような状態を、自ら選んでいた。

2.「本当にやりたいこと」から目を背けるようになった

自己成長のためではない仕事でも、当時は転職して6年経っていて業務内容は慣れたもの。
「成長のために環境を変えたい」と思っても、出産前と比べてそのハードルは格段に上がっていた。
異動のための準備、新しい上司やチームメンバー、新しい業務を覚えること、多少の残業。どれも、育児との両立を考えると億劫になった。だから、興味のあるポジションがあっても「今のままでいいや、別に困ってないし」と自分に言い聞かせる日々。

そして、気づけば"慣れ"の中に閉じこもるようになった。

3.変化のない職場、人間関係の固定化

仕事も人間関係も、変化のないものになっていった。
チームを超えた交流の場も「直接関係ないし」と避けるようになり、若い世代との接点も減った。
新しい刺激がないまま、毎日をルーティンとしてこなす日々。
「このままでいいのか?」
と思いながらも、行動には移さなかった。

4.自分を表現する場が、仕事しかなくなった

仕事はフルタイム。人間関係も限られたものになり、毎日の大半を会社に費やしていた。でも、給料は悪くないし、子どものためにも今はこれでいい――そう自分に言い聞かせていた。

気づけば、私の思考や意見がアウトプットされるのは、会社の資料や会議の場だけになっていた。家族以外の誰かに向けて何かを発信することもなく、仕事以外の場所で「自分」を表現する機会はほとんどなかった。

一方で、SNSを開けば、同世代のインスタグラマーや主婦系YouTuberが、自分のライフスタイルや考えを発信し、自由に表現している。
そんな姿を見ながら、「私はこのままでいいのだろうか」「仕事のことばかり考える毎日が本当にやりたいことなのか」と、自問自答することが増えていった。

5.50歳の自分を逆算して、不安になっていった

それでも、毎日は過ぎていく。
あっという間に39歳。あれだけ嫌だった、いや、20代の自分が「何かを失う」と怯えていた30代も、残すところあと1年。

得たものは、かけがえのない子ども、家族、キャリア、そしてお金。どれも、自分が頑張ってきたからこその賜物だと思う。

でも、これからは?

40代が終わったら、次は50代。きっと、今考えているよりもずっと速いスピードで過ぎていく。

自分が49歳になったとき、私はどんな自分でいたい?

会社員として役職を得ている自分?
個人で事業をしている自分?

そのための準備は、今、十分にできているのか?

「考え時かもしれない。」


それが心の声だった。

そんな不安を抱えながら過ごしていた中で、会社の中で「やりたい」と思ったことを上司に否定されることが増えた。気持ちはどんどん追い詰められ、最後には上司との関係も悪化。

もちろん、上司には上司の事情や考えがある。
上司の正しさもあれば、私の正しさもある。
でも、どちらかが「正解」ということはなく、その不和の中で、私はついにギブアップした。

「もう、ここにはいられない。」

そう思った瞬間、すべての糸がプツリと切れた。

急遽もらった休息時間の中で、「セカンドキャリアの仕込みとして、何をすべきなのか?」とワクワクする気持ちが戻ってきた。

この経験を振り返ると、私の心が壊れたのは、単なる「上司との関係」ではなく、

"自分で変化することを諦め続けたこと"


が大きかったのかもしれない。

これからは、もう少し自由に、自分の人生を選び直していこうと思う。

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