ネタバレあり『キリエのうた』~kaf
急遽思い立って鑑賞。
岩井俊二監督作品の独特な空気感に包まれた3時間でした。
岩井俊二監督の映画を観てると不自由な自由を感じるというか、
本当の嘘を見てる感じというか、
不幸せな幸せを見てるような気分になる。
アイナ・ジ・エンドさん(以下、アイナさん)のキャラクターがとても良かった。
日常の会話では声が思う通り出せないが、歌なら思いっきり自己表現ができる女性キリエを演じていた。
友人との会話では苦しそうに絞り出すように声を出す。
耳を澄ませないと聞こえないようなボリューム。
歌っている時は、これは主の主観だが、苦しそうに息継ぎするように声を出してらっしゃるように見えた。(歌唱に対してのダメ出しじゃ無いです。信じられないくらいエモーショナルで素晴らしかったです。)
まるで普段は深い真っ暗な海に沈み込んでいて、歌っている時だけ海から顔だけ出して慌てて呼吸するみたいに。
その表情や声や姿が美しい。
キリエにしか出来ない表現なのか、アイナさんが持ってらっしゃる表現なのかはわからなかった。
というか、大変失礼な話だが、アイナさんをしっかりと認知したのは今回が初めてだと思う。
あと、構成が良いなって思った。
冒頭、キリエが広瀬すず演じるイッコちゃんに拾われるシーンがある。
そして終盤近くで、そっくりそのままでは無いが、微妙に立場が入れ替わるシーンがある。
しかもそれが、イッコちゃんが長らく不在だった後に。
“イッコちゃんの不在”が観客に強く意識され始めたタイミングでのその演出。
からのイッコちゃん再登場。
見せ方が素晴らし過ぎた。
“イッコちゃん”というキャラクターは『リップヴァンウィンクルの花嫁』における安室ユキマス的立ち位置。
嘘の塊のような、どこか人間離れしたような人物造形。
それをさも自然に演じ切った広瀬すずの地肩の強さはもはや言うまでも無いのだけど。
そんなイッコちゃんの結末も、嘘が本当になったような、本当だったものが嘘に変わった…という本当だったような…もう説明が出来ないくらい観てる側の心をグチャグチャにするものだった。
その結末のあり方が決して唐突に感じなかったのも、構成力あってこそだろうことを考えると、主はまんまと感動させられてしまったわけである。
あーーー凄い。
なっっがいけど。
すーーーごい。
観られて良かったー。