午前9時の太陽 材木座 HOACAFE
鎌倉駅から少し離れた材木座海岸。埼玉県の外れに住んでいた頃、始発に乗ってよく訪れていた。
池袋へ向かう東武東上線はアウシュビッツにでも向かうみたいに陰鬱な空気が流れていた。明けていく空とは真逆にに電車内の空気は東京に近づくにつれて重くなっていく。
池袋から山手線、横須賀線と乗り換えながら、海が近づくにつれて空の色と一緒にだんだんと電車の空気も軽くなる。
いざ鎌倉。到着と思いきやここからまたテクテクと20分程歩いて材木座海岸へと向かう。
こっちまで江ノ電が通っていれば、と一瞬思わないでもないが、軽率だったとすぐにその考えを改める。
歩いて行けるけど少し遠い。この少しだけの距離が江ノ電沿いの喧騒から材木座を守る結界になっている。20分歩くという儀式が東京を経由した穢れを祓う儀式なのである。
深煎り細挽きの濃いめの珈琲とドーナツが朝食代わりにちょうど良かった。暑くなりそうな日はアサイーボールをキメる事もあった。
ペーパードリップ党には物珍しく感じるクレマに閉じ込められたアロマをじっくりと愉しんでいた。
ゆったりと座れるソファとゴキゲンに流れるサーフミュージックをぼんやりと聴く。海を眺めては思考のコリをほぐしていく。なんだ、ここは神奈川県にあるリトルハワイかと思うほどに開放感に浸る。
この静けさのオプションは由比ヶ浜や七里ヶ浜にはない。
喫茶店では少し背伸びして小難しい本を読みたくなるも、ここにいると海の開放感もあって鎌倉特集の雑誌、湘南スタイルを読むともなく眺めてしまう。
どこのページを開いても適度に日焼けした楽しそうな人と、インスタ映する朝食とケーキの写真が関係人口と移住を歓迎している。
飽和気味とはいえ、まだまだ鎌倉は移住者に開けている。
源頼朝は封建的な平家へのカウンターで勝手に組織を盛り上げて勝手に開拓して鎌倉幕府を作った。東京という縦割りの組織で消耗するのに飽きた人がこの地を目指して移住するというのも、なんだか納得してしまう。頼朝の遺伝子が呼び寄せているのだろうか。
葉山や三浦よりも少しだけ荒い材木座の波の音、高い建物がないからか随分と広い鎌倉の空。
すこしチャラいくらいがちょうど良い。海といえば、と思いポケットに忍ばせたヘミングウェイの老人と海は帰りの電車までとっておく。
8時を回る頃にはポツポツと人が増えていく。
早起きの地元の人、早起きの観光客。ゆっくり寝ていればいいものを、わざわざこんな時間に珈琲を飲みに来るモノ好き同士か、妙な連隊感があるのは気のせいだろうか。
店を出てイヤホンをつける。今何時?とまだずいぶん若い頃の桑田佳祐が問いかける。
ゆっくりとくつろいでだいたい午前9時、稲村ヶ崎公園から夕日を見るにはまだ時間がある。これから海沿いを歩くか、それとも安国論寺の高台に登ろうか。こうしてありあまる選択肢に悩むのがまた愉しい。
鎌倉の朝、ここからはじまる休日を過ごす為に、仕事終わりに一杯ひっかけるのは見送って、早めに床に着くのもまた良い。早朝の海辺に比べると、夜更かしするのはあまりにも勿体ない。
★HOA CAFEは2018年1月に一旦閉店し、移転後に再開予定です。
鎌倉は渋谷から湘南新宿ラインで1時間程度、品川から横須賀で50分程度。早起きした休日は
少し遠出して海を見ながらモーニングを楽しみたい。
Write by Yuki.H
普段は三浦半島で力いっぱいキーボードを叩いています。
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