cafemonogatari

本と街と珈琲と。好きな街と喫茶店の間にある小さな物語を書いています。

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最近の記事

わたしが喫茶店を好きな理由

「お客様は神様です」という言葉がある。 お金を払っていただくという意味では、神様なのかもしれない。 けれど本当は「お客様」と「サービスする側」は対等であってほしいと数年前から思っている。 むしろ、そうでなくては居心地がわるく感じるくらいになってきた。もちろん場所にもよるけれど。 画一的なサービスで丁寧に接客されるより、多少雑でも、その人となりがわかるサービスのスタイルが好きだ。 喫茶店はその最たる例のひとつ。 「わかってくれる人だけ来てくれればいいの」ってさばさばと

    • シュールな夢を見ていたい 三浦海岸 南風珈琲

      実現されたオジサンの夢みたいな場所。海辺にひっそりと建つ白く塗られた喫茶店を訪れてそう思ったのを覚えている。 会社を辞めたら退職金で小さな店を開いて。。。なんだか高度経済成長期によく聞いたような話でもあるが、そんな夢が具現化したかような場所が三浦海岸の外れにポツンとある。 駅から三崎の方にゆっくり歩いて20分、なかなかの道中、横目で見ていた海を今度は正面に迎えてぼんやりと眺めながら珈琲を飲む。 少し緑がかった青い海、うっすらと紫が混じっている桃色の夕日、淡い青と水色の中

      • 喫茶店の扉を開けるとき

        喫茶店に入ると時空が歪む。 そのお店が愛されてきた歴史が、店のそこかしこに表れていて、懐かしい空気にむせ返る。 タバコの煙でスモークされた、琥珀色の壁。 使い込んですべすべになった木のテーブル。 背もたれに模様の入った、木の椅子。 「なんでここに置いてあるんだろう?」っていうナゾの置物。 必要以上に干渉してこないマスター。 「なんでお店を始めたか?ってよく聞かれるけどね、今の人とは違って、食うために始めたっていうだけなんだよ。」 ああそうか、今のように働き方がたくさんあ

        • 午前9時の太陽 材木座 HOACAFE

          鎌倉駅から少し離れた材木座海岸。埼玉県の外れに住んでいた頃、始発に乗ってよく訪れていた。 池袋へ向かう東武東上線はアウシュビッツにでも向かうみたいに陰鬱な空気が流れていた。明けていく空とは真逆にに電車内の空気は東京に近づくにつれて重くなっていく。 池袋から山手線、横須賀線と乗り換えながら、海が近づくにつれて空の色と一緒にだんだんと電車の空気も軽くなる。 いざ鎌倉。到着と思いきやここからまたテクテクと20分程歩いて材木座海岸へと向かう。 こっちまで江ノ電が通っていれば、

          人生最後の日の過ごしかた 川越あぶり珈琲

          どうしても眠れない夜は人生最後の日 ー好むと好まざるとに関わらず必ず訪れるー をどう過ごすかを思い出しては頭の中でリハーサルしている。 それは明日突然来るかもしれないし、50年後に来るのかもしれない。 その日が来たら世界中のどこにいたとしても川越に駆けつけて、ある喫茶店で午後のひとときを過ごすと決めている。 それが観光客で溢れる一番街から蜂蜜屋と醤油屋のある路地裏を歩いたところに静かに佇んでいる「あぶり珈琲」である。 有線から静かに流れる匿名的なジャズと柱時計の律儀な

          人生最後の日の過ごしかた 川越あぶり珈琲