ド迫力のスティールパン
スティールパンって名前の楽器、ご存知でしょうか?
僕も、スティールパンの音色は聴いたことがありましたが、その音を出しているのがスティールパンという名前の楽器だとは、最近まで全然知りませんでした。
例えば、この「夏の女優」という曲の出だし・間奏・終わりの方で鳴っている、コロンコロンといういかにも南国感たっぷりなあの音色がスティールパンです。
(この曲でスティールパンを演奏しているのは、細野晴臣さんらしいです。ほんとに多才な方ですよね!)
こんなまったりとした南国リゾートを思わせる音色ですが、最近、「スティールパンの惑星(2014年)」というドキュメンタリー映画を見てみたところ、あの音色を出しているのはこのスティールパンという楽器なんだと知るとともに、スティールパンが誕生した経緯から本場トリニダード・トバゴでの演奏に至るまで、めっちゃワイルドでびっくりしました!
なんと、この楽器、楽器を演奏したくても全然手に入らない境遇にいた、トリニダード・トバゴの黒人達が、ドラム缶を盗んできて、ドラム缶の底を切り出して、ハンマーでガンガンたたいて、へこまし方によって色んな音が出るように加工したものなんです。
なんてワイルドな作り方!!
どの部分に、どんな音を配置するとか決まっているんでしょうね。この楽器を作るには、専門の調律師(チューナー)の方がいるらしいです。
しかも、この楽器の演奏が、本場トリニダード・トバゴではめっちゃワイルドなんです。
ちなみに、トリニダード・トバゴ( Trinidad and Tobago)は、南米ベネズエラの北側、カリブ海に浮かぶ島国です。
このトリニダード・トバゴの首都、ポート・オブ・スペイン(Port of Spain)で毎年カーニバルの時期に行われるスティールパンのコンテスト、パノラマ(Panorama)。
このパノラマに参加するスティールパン・バンドは大小様々な規模があるようですが、大規模なバンドは100人ものスティールパン奏者で編成されており、ド迫力の演奏をするんです!!
映画「スティールパンの惑星」の中でも、2013年にスティールパン・バンド「Phase Ⅱ pan groove」が優勝した際の演奏が紹介されており、すごい迫力に圧倒されました!
こちらが、You Tubeで見つけた、同じ2013年の「Phase Ⅱ pan groove」による演奏です。
映画のサントラにも、この演奏が入っていました!
ものすごい迫力です!!
生で聴いたら、さらにもっと凄まじいんでしょうね~
この映画の中でもフィーチャーされていましたが、「Phase Ⅱ pan groove」には日本人スティールパン奏者の二ノ宮千紘さんという方も参加されています。
元々、音大の時からスティールパンを演奏されていたそうですが、現地の有名チームに入ることを許されて、しかも活躍するなんて凄すぎます!!
Spotifyで探しても、この「Phase Ⅱ pan groove」が近年録音したアルバムはなさそうでしたが、同じく優勝常連チームである「BP Renegades Steel Orchestra」が2013年に録音したアルバムがありました。
これまた、一糸乱れぬド迫力の演奏!
この2チーム以外にも強豪チームはたくさんあるようで、こんなチームがごろごろいるなんて、パノラマは凄まじい大会ですね…
パノラマで各チームが演奏している曲ですが、現在はパノラマ用に作曲された曲を演奏しているようですが、以前はトリニダード・トバゴで生まれてカリブ中に広まった音楽、カリプソの名曲をアレンジして演奏していたようです。
ここでザッと2人のカリプソ・レジェンドを紹介しますと…
まずは、ロード・キチナー(Lord Kitchener)!
1922年生まれの彼は、第二次世界大戦後、トリニダード・トバゴがイギリス領であったことの繋がりから、ミュージシャンとしての職を求めて10年以上もの間、イギリスに渡って活躍しました。
その後は、またトリニダード・トバゴに戻って、地元でも多くのヒットをとばしたようです。
こちらは、ロード・キチナーを中心とするイギリスに渡ったミュージシャン達による最高なカリプソ・コンピレーションです。
また、マイティ・スパロウ(Mighty Sparrow)もロード・キチナーと並ぶカリプソ・レジェンドです。
1935年生まれと、ロード・キチナーより10歳ほど若い彼が、1974年に出した名盤「Hot and Sweet」では、カリプソをベースに、同時代のアメリカのソウル・ミュージックの影響も感じさせるような音楽で、めっちゃカッコいいです!
特に有名な曲は、亡き友人たちのことを歌った10曲目「Memories」ですが、2曲目の「Chinese Love Affair」も似非チャイニーズ感がたまらないグッとくる曲です(笑)。ちょっとクレイジーケンバンドを彷彿とさせますね~
「Phase Ⅱ pan groove」の音楽監督をしているLen "Boogsie" Sharpeという方は、スティールパン界のレジェンドの一人のようですが、彼がマイティ・スパロウの名曲をスティールパンでカバーした「A Tribute to the Mighty Sparrow(2011年)」というアルバムもSpotifyにありました。
スティールパンの魅力も、そしてマイティ・スパロウの曲の魅力も感じられる、かなりグッとくるアルバムです!
また、Ray Holmanという方は、Len "Boogsie" Sharpeの師匠にあたるのですが、カリプソ名曲をスティールパン・バンド用にアレンジするのではなく、パノラマ用にスティールパン・バンドのためのオリジナル曲を初めて作曲した方のようです。
Ray Holmanの「In Touch(2003年)」というアルバムもかなりいい感じで、特に2曲目の「Memory Of Your Smile」がめっちゃいいです!(9曲目に同じ曲のロング・バージョンもあります。)
サックスとのハーモニーがたまらないですね~
まだまだ奥が深そうなスティールパンの世界。
今年(2021年)はコロナの影響でパノラマは中止となったようですが、一度、本場トリニダード・トバゴに行って、大音量で鳴り響くスティールパンの音色に身をゆだねてみたいものです…
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