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20年のあゆみを振り返る--カフェバグダッド×比呂啓対談⑧
テヘラン時代の最後に、「アラブの春」と「東日本大震災」という大きな出来事が起きる。騒乱のエジプトに出張取材に行くものの、政権崩壊の場面には立ち会えなかった。予想がしばしば覆される、中東情勢取材の苦渋に話題が移っていく。
カ テヘランにいたのは、2008年9月から2011年4月までなんですけど、最後の時期に「アラブの春」と「東日本大震災」がありました。この2つのできごとは私にとってもとても大きい出来事でした。岩手県で生まれ育った者としては、震災をイランからテレビを通じて呆然としてみていたことは忘れられません。
比呂 「アラブの春」も大きいですよね。
カ 「アラブの春」は2010年の暮れに、北アフリカのチュニジアではじまるんですけど、最初の頃はアラブ圏の中でもだれも注目していなかった。イランではなおのこと。年が明けて、エジプトに飛び火してから、大変なことが起きている、ということになり、チュニジアの政権が崩壊。エジプトでも大規模デモが始まりました。そこで、テヘランから、カイロに応援で取材に行くことになりました。あ、この場で言っていなかったかも知れませんが、私、新聞記者でした。
比呂 知ってます(笑)
カ エジプトは、2000年から3年半、最初の海外特派員として駐在した土地です。久しぶりだったので、とても懐かしかったんですが、街がデモで騒然としてして、エジプトを脱出しようとする日本人含めた外国人が空港に詰めかけて大混乱になっていたりもしていました。
比呂 これからどうなるか、ムバラク政権が倒れるのか、とか記者として先を見通せたんですか?
カ アンワル・サダト大統領の息子にインタビューしたんですよ。1981年に軍事パレードのさなかに暗殺された、あのサダトの息子。当時国会議員だったんですけど。話がとても楽観的というか、「革命は起きない、事態は収拾されるだろう」みたいなことを言うんです。まあ、そう言っているから、そう記事に書くしかない訳ですけど、その10日後には、ムバラク大統領退陣ですからね。私自身も、すぐに事態は急変せず、膠着状態が続くだろう、という判断を同僚たちとして、テヘランに戻るんです。テヘランに戻って、エジプトの政権崩壊を知るという…
比呂 それは、記者としては…
カ まあ、残念というか悔しかったですよね。歴史の一場面に立ち会えなかったという。
比呂 サダトの息子よ、何てこと言ってくれたんだ、みたいな
カ まあ、見通しを外すこと、よくあるんです(笑)。2003年のイラク戦争の開戦前夜、隣国のトルコで取材していたんですが、スレイマン・デミレル、という元大統領にインタビューしたんです。何度も首相をやって大統領もやったベテラン政治家なんですけど、「戦争は起きない」というんです。これも原稿にしますよね。
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比呂 それで、外しちゃうと
カ 1か月後に開戦です(苦笑)。よく言われることなんですけど、中東では、情勢に通じている人ほど、予測を外すって…
比呂 それだけ、予想もできないことが起きる、ということですか、中東は!
カ そうなのかも知れませんね。
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