アフガン人芸術家救出に奔走するイラン人映画監督…「苦悩のリスト」
昨年末から、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで始まった「マフマルバフ・ファミリー特集」。
来日してトークを何度か行ったモフセン・マフマルバフもロンドンに帰っていった。12月26日にあった「川との対話」の上映&トークについては、以下ですでに紹介している。
「マスタークラス」のほうの、映画プロデューサー矢田部吉彦さんとのトークのほうは、残念ながら聞けなかった。
が、イメージフォーラムで公開中の新作ドキュメンタリー2本のうち、まず「苦悩のリスト」を見ることにした。また聞きではあるが、矢田部氏とのトークで、作品をなぜフィクションではなくドキュメンタリーしたのか、という点についてマフマルバフが、「世界のみなが責任を感じてもらうため」といったような答えをしたと聞き、それが強く印象に残ったからだ。
※さとぼし通信さん作成のトーク内容のメモを発見。それによると、以下の引用か所のような発言だった模様。
2021年、アフガニスタンで、イスラム勢力「タリバン」が再び権力に復帰。タリバンからの迫害・弾圧を恐れるアーティストや映画製作者を救うために「奔走」する父モフセン・マフマルバフの姿を、娘のハナ・マフマルバフがスマートフォンを使って撮った作品。
タリバン復帰でパニック状態となった市民が、首都カブールの空港を飛び立つ米軍輸送に殺到してしがみつく。そのまま離陸した機体から、一人、また一人と振り落とされて落下していく映像。当時も世界に伝えられたものだが、改めて見て言葉を失う。
そんな混乱の空港で、マフマフバフの支援を頼みに脱出を待つアーティストたちと、救出を行うフランス軍・政府との間の交渉を、ロンドンにいるマフマルバフが取り持つ。残された日にちは少なく、自宅に貼られた救出リストの一部しか助けられそうもない。マフマフバフの苦悩は深まっていく。
昨年のトークでマフマルバフは、その時の自身の状況を「悪夢を見ているようだった。毎晩、2時間しか寝ていなかった」と振り返った。
ハナがスマホで父を撮影していたのも、最初から映画にすると考えていたわけではなかったようだ。「1年後、ハナと『あの時のことがすでに忘れられている』と話して、『忘れないでほしい』という気持ちを込めた」と話していた。作品を英国議会で上映して、議員たちのアフガニスタン問題への関心を喚起することもしたという。
マフマルバフによると、800人のリストの半数は救出された。アフガンに残るもののうち280人余りは、英国政府に救助を要請しているという。7人は殺害され、20人は獄中にいるという。
日本に来ていながらも、この問題について国際電話で連絡を受けることもあったという。ドキュメンタリー「苦悩のリスト」は今も進行中だといえる。