サハラのカフェのマリカ(アルジェリア映画)
地中海の南、アフリカ大陸北部に広がる広大なサハラ砂漠。そのただ中で、女店主のマリカが1人で営むカフェには、さまざまな人が立ち寄り、通り過ぎていく。
アルジェリアのハッセン・フェルハーニ監督が、「ロードムービー」を撮ろうと、首都アルジェと砂漠の町タマンラセットを結ぶ国道1号線を南下して出会ったのが、このカフェ。ロードムービーではなく、作品は「定点観測型」ドキュメンタリーとなり、客とマリカの交流が、淡々と描かれていく。
砂漠を行き交う人々の密度はそう高くなさそうだが、実にさまざまな人間がカフェにはやって来る。バイクでサハラ砂漠を横断している欧州人の女性、大きな打楽器を叩く旅芸人といった風情の男性、マリカに「偽善者」とののしられるイスラム説教師……。アルジェリア東部イナメナスの天然ガスプラントを攻撃したイスラム過激派グループにより、日本人10人を含む30数人が殺害された「イナメナス事件」の首謀者とされるモフタール・ベルモフタールも「来たことがある」のだと、マリカはこともなげに言う。
さまざまな人々との交流の中で、ゆっくりと流れれていく時間は、いつまでも続いていくのかと思わされるのだが、作品の最後半では、そんな時間の変化の予兆も示される。
この映画について、1989年公開の西ドイツ映画「バグダッド・カフェ」を想起させる、との指摘もあるようだ。「バグダッド・カフェ」はアメリカ西部の砂漠の中にあるモーテル兼カフェ。ここを舞台に、店に立ち寄った人々と店主らの交流を描いたフィクション映画で、今も根強い人気を誇る作品。確かに、21世紀の「バグダッド・カフェ」というキャッチ・コピーも、作品を見た後には、「なるほど」という気もしてくる。
作品は8月26日から、東京・渋谷の「ヒューマントラスト渋谷」などで全国劇場公開される。
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