20年のあゆみを振り返る--カフェバグダッド×比呂啓対談⑦
カフェバグダッドが始めたイベントは、水たばこも提供するスタイルから、中東の生活文化に関するトークイベントへと変化していく。しかしそれも、2008年に店主がイランに転勤になったため、しばらくして休眠状態に。滞在先のイランでは、各地の水たばこカフェを訪ね歩くことになり、ますます中東のカフェの魅力にとりつかれることになった。
カ 水たばこを提供するイベントを何回かやってみて、オペレーションが結構大変だなあ、ということになった。それで、その後は、講演会形式のイベントに移行していったんです。
比呂 講演会形式では、何回やったんですか。
カ 6回かな。2008年までのあいだに。水たばこイベントと合わせて計10回。ここまでを「カフェバグダッド第1期」と呼んでいます。この「教科書」の82ページでおおまかな流れを表にしています。
比呂 教科書? ああ、この「カフェバグダッドの20年」という本。
カ はい。中東各地のカフェの図鑑も載っていますが、後半部分では、カフェバグダッドの歴史を細部まで書いています。巻末には年表もあります。
比呂 その頃、私、ボルボルさん(東京・高円寺のイラン料理店。現在もある)によく行っていたんですよ。確か、カフェバグダッドさんとも、イベントではなかったけど、食事会をしたはずです。
カ そうでしたよね。なんか、覚えているような~ 話を戻すと、講演会形式にしたことで、どちらかというと「真面目な文化的イベント」という感じになったんです。お父さんがエジプト人の文学研究者で、文筆家の師岡カリーマさんや、今、東海大の言語学の教授になっているアルモーメン・アブドーラなんかをゲストに招いていました。中東について、アラブ人の口から話してもらう、というのはとても面白かったし、有意義だったと思います。
比呂 本当にそうですね。
カ それで、2008年の夏に、私がイランに赴任して、その後も、イベントを一緒にやっていた水野香里さんが、何回か日本でイベントを続けたんだけど、何回かやった後、イベントとしてのカフェバグダッドは休眠状態になったんです。イランでブログは続けて書いていましたけど。ペースはかなり落ちましたけど。
比呂 カフェバグダッドさんがイランに行ってからのイベントはどんなものだったんですか?
カ イラン伝統楽器演奏家の北川修一さんの演奏にあわせて、ペルシャ詩文学の研究者の方にペルシャ語で詩を朗読してもらうイベントとか。あと、世界の郷土料理研究家の青木ゆり子さんや、今も吉祥寺でシーシャカフェをやっているシリア人のムハンナドさんを招いての料理教室なんかをやりました。
比呂 「教科書」にも載っていますね。ああ、写真もある。これ、藤井さんですね。
カ そうそう。世界のワインにめちゃくちゃ詳しい、「マイケル藤井さん」ですね。藤井さんにも中東のワインの解説をしてもらいました。この「教科書」をみれば、カフェバグダッドの歴史は全部わかります。便利な本ですよ(笑)
比呂 (「教科書」をみながら)あっ、パレスチナでロケした小川和也監督の「ピンク・スバル」のことも書いていますね。私が撮ったメーキングフィルムの上映会、やりましたね、そういえば。これもカフェバグダッドのイベントだったんだ~
カ そのようですよ。私はその頃はイランにいたので、立ち会ってはいないんですけど。
比呂 じゃあ、イラン滞在の時の話にいきましょうか。もう、カフェに通いつめた感じですか。
カ そうですね~、イランには2年半暮らしていました。この頃も水たばこが好きだったので、水たばこ、イランではゲリユンっていいますけど、ゲリユンカフェにはいろいろ行きましたね~
比呂 これは(会場に展示されていた写真)どんなカフェなんですか。
カ ここは結構面白いカフェで、天井にいろいろなランプや電球が飾られているんです。イランの古都、イスファハンです。もちろん、水たばこもあって。また行ってみたいな~
比呂 へえ、面白いですね。
カ あと、今、ここには写真がないけど、日本のとんこつラーメン店の「一蘭」みたいに、長いテーブルにずらって人が並んで、一心不乱に水たばこを吸うカフェ。それが満員だったりすると、煙ももくもくで、まあ、正直、のんびり水たばこを楽しめる、という感じではなかった。
比呂 そんなところもあるんですか? ちょっと微妙ですね~いやあ、それにしても、展示している写真をみても、本当にいろいろなカフェがある。世界は広いですよね~
カ ホント、世界は広いですよ~
(続く)