2人の女性で描く激動のアフガニスタン現代史...「シマの唄」
主人公のひとり、シマは、天賦の音楽の才能と美声を持つアフガニスタン人女性。その親友で、アフガンの識字教育に意欲を燃やすソラヤ。この2人の苦渋に満ちた人生を通じてアフガン現代史を描いた映画。ソ連の影響力が拡大する中で政情不安が進行していく1970年代後半の情勢が、その後、現在まで続くアフガンの戦乱につながっていったかを、人々の生きざまを通じて知ることができる作品だ。
民族楽器ルバーブをかなで、イスラム神秘主義が底流にある歌を歌い、音楽家の道を進もうとしていたシマの人生は、比較的厳格なイスラム教徒の家庭で育った男性と結婚したことで「反転」する。
後にアフガンへ侵攻したソ連軍への抵抗運動を行うムジャヒディン(イスラム戦士)に、夫とともに参加。一方、亡き有力政治家の娘である、スラヤも、目まぐるしい政変の中にほんろうされていく。
1979年という年は、ソ連のアフガニスタン侵攻、イランでのイスラム革命という、中東現代史を大きく動かした大事件が起きた年として記録されている。
アフガニスタンのほうでいえば、「社会主義の国から来た無神論者」を激しく敵視したアフガニスタンのイスラム主義者たちと、国境を越えて「イスラムの同胞」に助太刀しようとアフガンに参じたアラブ人などが勢力を拡大し、ニューヨークでの同時多発テロを実行した、ビンラーディン率いるアル・カーイダなどの怪物を生み出すことになる。
世界史の重要な記録だったともいえる、その時代のアフガニスタンを、生身の人間を描き出した映画という形で描き出したのがこの作品だといえる。
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