詩と哲学と政治と…イラン映画監督・マフマルバフ氏の自作3分類
去年の12月26日にあったモフセン・マフマルバフ監督のトークでは、監督自身が自分の作品を3つのキーワードで分類する、というとても興味深い発言があった。
すなわち、「詩」「哲学」「政治」の3つに分けてみせたのだ。まず、監督自身による分類を紹介してみたい。
【詩】
「ギャベ」
遊牧民の女性が手織りするじゅうたんの総称がタイトルになっている。ギャッベを作る女性が自身の不思議な体験を語るという、まさに詩的カテゴリーの代表作だろう。
「サイレンス」
タジキスタンが舞台。盲目の少年の生活をさまざまな音と色彩を織り交ぜながら描いていく。
https://moviewalker.jp/mv38682/
【哲学】
「スクリーム・オブ・アント」
https://www.imdb.com/title/tt0949524/
「セックスと哲学」
「行商人」
社会の底辺で生きる人々を描いた三話オムニバスの作品。
「タイム・オブ・ラブ」
【政治】
「カンダハール」
カナダに亡命したアフガニスタン人女性が、地雷で足を失った妹を探しにアフガニスタン・カンダハルを目指すドキュメンタリータッチの作品。
「独裁者と小さな孫」
架空の国を舞台に、クーデターで地位を追われた独裁者と幼い孫の逃亡の旅を描く作品。
と、これらがトークでマフマルバフ自身が語った分類になる。
もちろん、すべてをきれいに分類できるわけではないが、マフマルバフ作品をみる場合のひとつの指針になりそうだ。
このほかの作品をもし、3分類で分けるとしたら、代表作の「サイクリスト」は【政治】、「パンと植木鉢」は、【詩】あるいは【哲学】ということになるだろうか。
今回公開された「苦悩のリスト」は【政治】だろう。まだみていないものの「子どもたちはもう遊ばない」も【政治】だろうか。
それにしても、考えてみると、詩、哲学、政治は、まるでイラン人を構成する3要素ともいえそうですね。しかしながら、この3つを兼ね備えたイラン人映画監督というのも、実は少ない気が。つまり、この
3分類、イラン映画全体を考える際にも利用できそうでもある。
さて、現在、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで開催中の特集上映「マフマルバフ・ファミリー特集」では、「パンと植木鉢」「独裁者と小さな孫」「タイム・オブ・ラブ」が上映される。
「パンと植木鉢」以外は私も未見なので、この機会にみてみようかな、と思っている。