「スウェーデン・テレビ放送に見るイスラエル・パレスチナ 1958-1989」評
映画タイトル通りのドキュメンタリー。スウェーデンの公共テレビが製作した、イスラエル・パレスチナ紛争にかかわるドキュメンタリー的番組をおおむね時系列順つないでひとつの作品として仕立てたものだ。
パレスチナの人々の苦難の生活の様子、今はなき指導者のインタビューなど、映像が強く迫ってくるシーンが多く、3時間という上映時間もそれほど長く感じなかった。ひとつひとつのパーツは断片的なのはもちろん仕方ないことだが、個々の作品の全体をみてみたいと思ったものが多かった。印象的な場面を箇条書きで紹介してみたい。
・第4次中東戦争でスエズ運河沿岸にエジプト軍部隊が孤立しているシーン。
・イスラエルと和平を結んだエジプト・サダト大統領とイスラエル・ゴルダ・メイア元大統領が、なごやかに言葉をかわす場面
・テレビインタビューでのアラファトPLO議長のフランクな受け答え
・イスラエル軍侵攻で、レバノン・ベイルートに追い詰められたPLO民兵たちが、船で脱出する場面
・レバノンの親イスラエル組織が行い、イスラエル側が事実上黙認したサブラ・シャティーラ難民キャンプでの虐殺事件の現場
・イスラエルのシャロン首相が持つ農場の近くで生まれたガザに住む難民を、生家に連れていく番組
あげ出すとキリがないが、といったものが印象に残った。このほかにも、歴史的出来事や人物を、対象に「肉迫」して映像にとらえたものがたくさんあり、機会があったら、改めてもう一度じっくりとみてみたいと思った。
今、中東で起きていることを正しく理解するためには、20世紀以降のイスラエル・パレスチナの歴史的な経緯を咀嚼することが重要だと思う。そうした意味でも、このドキュメンタリーはとても価値が高い。
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