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文脈を離れて確立するもの

『おわせマルシェ』で古いラッパを買った。

そのラッパの管に真鍮のソケット付コードを通し、コンセントプラグを取り付け、照明にリメイクした。


大好きな京都の本屋さん『恵文社』さんがおなじように、ラッパをリメイクして照明として使っていたので、いつか自分もやってみようと思っていた。

古道具をリメイクして別の用途として使う……

道具(今回の場合はラッパ)の、本来の目的や役割(この場合、音を鳴らす『楽器』として)の文脈を外して、新たな目的や役割(この場合、灯りを灯す『照明』として)を与えることは、民芸からの発想で、カフェスケールはこれ以外にも、ミシン台をリメイクしたテーブルや、飯盒をリメイクしたプランターなどがある。

思えば、『カフェスケール』そのものも、本来は『鉄工所』として使われていた建物を『カフェ』にリメイクして使っているようなもの。

カフェスケールを天井から見下ろすとこんな感じ。




話は変わって、先日とあるアート番組を観ていると、その番組内で「世界3大椅子デザイナー」を取り上げていた。

その番組によると、世界3大椅子デザイナーとは

『イームズ夫妻(レイ・イームズとチャールズ・イームズ)』
『フィン・ユール』
『ハンス・J・ウェグナー』

に当たるそう。


1950〜60年代に活躍したデザイナーで、その時代にデザインされた建築や家具ものを一般的に『ミッドセンチュリー』と言われるが、イームズはミッドセンチュリーの代表的なデザイナーで、日本でも度々ブームになったりする。

個人的には(カフェの仕事的には)、2000年代の初頭にカフェブームが到来した時に、イームズのチェアがもてはやされたことのイメージが強く、その時は『イームズの椅子に座れるカフェ』がコンセプトのカフェもあったほどだ。

2000年代初頭、まだ20代だった私も魅力的に感じていたミッドセンチュリーのデザイナー家具や、ミッドセンチュリーをコンセプトとしたカフェも、今や全然興味が無くなってしまったことを思うと、ブームの恐ろしさと、安易にブームに乗ることのリスクを今更ながらに実感する。


『ミッドセンチュリー』とは『世紀の真ん中』という意味で、1900年代の真ん中、つまり、1940年代〜1960年代のことを指す。

この時期は新しい建築素材....強化プラスチックや成型積層合板という技術が開発され、自由な意匠を描くことができるようになり、そのことがデザイナーたちの自由な発想を形にすることを可能にし、この時期に斬新な家具やデザインが多く生まれた。

1940〜1960年代はもう今はレトロとも言える時代だが、その時代に生まれた斬新なデザインは『レトロモダン』とも言える独特な雰囲気を持っていて、今でも人気があるとは思うが、個人的には、日本の風土には少し似合わない、と思ったりもしている。
(まだモダンな駅や空港や美術館などには似合うかもしれないが、生活には馴染みにくいのではないか?と思っている)

その点、『ハンス・ウェグナー』や『フィン・ユール』(両者ともデンマークのデザイナー)の家具は新素材を使わない伝統的な技法を使う椅子のデザインで、不思議と椅子の文化が浅い日本の古民家や老舗の旅館にも似合うデザインだと思う。

三重県立美術館で『デンマークデザイン展』を観に行った時、やっぱりこの両者のデザインが個人的には好みで、「土井見世の庭に面した縁側に置いたら似合うだろうな」と想像していた。


ちなみに、カフェスケールの椅子は、かつて鉄工所の職人だった父が作ったもので、世界にこのカフェにしかない椅子だ。

今となっては『イームズの椅子に座れるカフェ』がコンセプトのカフェよりも、世界でここだけでしかすわれない椅子が置いてある自分のカフェを誇らしく思う。


先日、ラジオの取材を受けたの時に
「アンティークがお好きなんですか?」
と聞かれた。

もちろんアンティークが好きなのもあるが、先述した通り、その時に流行っているものを取り入れた場合、その流行が去ってしまった場合、それが時に『流行遅れの痛々しいセンス』になってしまうことを危惧していることと、刻一刻と変化する流行を追いかけることにほとほと疲れてしまったからだ。

アンティークを扱っているお店を経営している友人と話している時に、「古いものはホッとする」ということを語っていたが、まさに『そういうこと』だと思う。

流行やトレンドを追いかけると疲れてしまうので、だったら、『時が経つほどに良くなっていくもの』『時代の流行に左右されないもの』であるアンティークをリメイクして、『唯一無二性』を獲得して、『ここにしかないカフェ』を作ろう、と思っている。

雑貨屋で売っているお洒落なものを買ってきて、そのまま置いてもいいのだけど….なんなら100円ショップに売っているもので生活道具をそろえるだけでお洒落になるし、なんでも『カフェ風』にすることができるこのご時世において、『カフェの存在意義』とは何か?を問い続けないといけない。

今日書きたかったことは、実は随分前に書いた記事の続きでもある。


自分のカフェが獲得しなければならない『唯一無二性』とは何か?

それをいつも考えている。

その考えの出発点は、実は父が作った『ここでしか座れない椅子』だったのかもしれない。



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