6月のお客様
「6月の花嫁は幸せな結婚生活を送る」と言われるジューンブライド。
梅雨時に需要を増やそうという結婚式場の戦略かと思ったら(そういう面もあるらしいのですが)、これはヨーロッパに古くからある言い伝えだそうです。
ローマ神話の6月を守護する女神ユノ(Juno)が由来で、結婚・出産・育児の象徴であり、女性・子供・家庭を守る神だから、とのこと。
(他、6月は農作業がひと段落する季節だからという説、ヨーロッパでは6月が一番気候が穏やかだからという説も)
ちなみにユノには、子供たちを守る母親の闘争心を表す「戦闘の女神」という側面や、競争心や嫉妬深さをうかがわせる逸話もあるようです。
わたしは6月に結婚していないし、幸せの形も様々だと思うし、6月に結婚した人が幸せな結婚生活を送っているかどうかも知らないので、「6月の花嫁が幸せになる」という言い伝えが本当かどうかはわかりません。
けれども、「6月のお客様は幸せになる」と思うんです。
なぜなら、6月に当店を訪れてくだった皆様のために、わたしが「今日のお客様に幸多からんことを!」と特別に祈るからです。
6月は当店にとって魔の月でして、過去17年間で4回経験した「お客様ゼロ日」のうち、1回は6月でした(ちなみに他3回は2月と4月と12月)。
寒くてうら寂しい雪の季節でもない6月に、お客様ゼロだなんて。
ここ数年来客ゼロ日は無いとはいえ、他の月に比べてたしかに6月はお客様が少なめです。
今でも時々、一日中草取りができてしまいそうな日があります。
新緑の5月の賑わいがひと段落して、梅雨入り時期の6月。
ようするに、6月はヒマなんですね。
そんな6月に訪れてくださるお客様は、「珈琲、美味しいです」「ゆっくりできました」「来てよかったです」などと声をかけてくださる方が多く、とても嬉しくなります。
店内が閑散としていて、静かなせいかもしれません。
わたしが比較的落ち着いていて、アタフタしていないせいかもしれません。
しっとりとした空気と、ハルゼミと野鳥の長閑な鳴き声と、深まる森の緑のせいかもしれません。
6月はお一人様の割合も多く、「大人がゆったりと静かに過ごす時間」を提供したいと考える当店にとって、理想的な過ごし方をされるお客様ばかり。
やっぱり、6月のお客様は素敵なのです。
だから、来客ゼロを免れた喜びと感謝と、ありがたい過ごし方をしてくださったお礼の気持ちを込めて、「今日のお客様にいいことありますように」と日々祈る6月。
そういうわけで、ご来店お待ちしております。
もちろんどの月もお待ちしておりますし、何月のご来店であろうと感謝しております。
けれども「6月のお客様」の幸せは、念入りに祈ってしまう今月のわたしです。