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深夜の出来事

妙な音で目が覚める。
ペロペロペロ……と耳元で音がしたような気がしたのだ。
まどろみの中で目を閉じたまま、「夢かな」と思った。
そしてまた眠りに落ちようとウトウトしていると、今度はハッキリと左の耳元で音がした。
ペロペロペロ……クッチャクッチャ……。

わたしはいつも独りで寝ているし、ペットも飼っていない。
にもかかわらず、明らかに今、左耳のすぐ脇に何か物体が存在して音を発している……。
とたんにサーーーーッと背筋が寒くなって完全に目が覚めたわたしは、これはマズい、と身を凍らせる。
すぐ左に、いる。何かが、いる。絶対に、いる。
夢ではなく、これは現実。
心拍数が上がる。

ひとまず勇気を振り絞って目を開けてみることにした。
ただし左を向いて「それ」を確認する勇気はない。
仰向けのままそっと目を開けると、暗闇の中にうっすらと浮かび上がる天井と壁。
おや? 見慣れたわたしの寝室の風景と、なんだか違う感じ……。
どこだろう、ここは。
わたしは昨夜、どこで何をしていたっけ……。

するとまた左耳に聞こえてくる音。
ペロペロペロ……スンッスンッ、フーッ……!
そして嗅ぎ覚えのある匂いが漂う。

あ! 隣に住む姉夫婦の飼い犬の匂い。
わたしは昨夜姉夫婦の家で飲んでいたんだっけ。
左に首を傾けると、姉夫婦の愛犬のミニチュアシュナウザーが、わたしの頭にピッタリと寄り添って、こちらを向いて気持ちよさそうに寝ている。
か、かわいい……。

そう、わたしは、姉夫婦のリビングの床で、犬のベッドを枕に酔いつぶれて眠り込んでいたのです……。
夜中の3時の出来事。


夫が不在の日曜夜、久しぶりに姉夫婦宅にて飲んでいたのでした。
ビールをグラスに軽く2杯飲んだ後、姉夫婦と3人で白ワインを1本空けたことは覚えているのです(姉はほとんど飲めません)。
その程度のアルコール量で、なぜわたしは記憶をなくして犬と床に寝ることになったのだろう……と頭痛の中で訝しむわたし。
ところが翌日姉に確認したところ、白ワインは全部で3本空けて、その後赤ワインにも手を付けたとのこと(全部飲んではいません)。
……え?
さらには「泊まっていけばいいよ」という姉の制止を振り切って、「ううん、帰る帰る! 大丈夫だから」と言いながら、玄関とは反対方向のデッキのガラス戸をわたしは一生懸命開けようとしていたらしい。
そのすべて、まったく記憶がございません。
恥ずかしながら、人生2回目の記憶の欠落を経験いたしました。

一回目はこちら。

自分の失態を人のせいにするつもりはないのですが、次から次へとお酌してくれる義兄と飲むと、どれぐらい飲んだのかわからなくなってしまうのです。
目の前のグラスに、常になみなみとお酒が注がれているのだもの。
そして、前後不覚の添い寝のお相手が犬とは、トレンディドラマにもなりませんね。

繁盛した日曜夜とお酌上手の義兄には本当に本当に要注意、と肝に銘じた夏の終わりです。

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