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もちは餅屋というけれど

「水道が水漏れしてるから工務店に連絡してくれへん?」

そう言われ、厨房のシンクをのぞくと確かに蛇口からポタポタと水が滴り続けている。
さっそく、いつもお願いしている工務店さんに連絡をいれて水道屋さんにきてもらった。

「ああ、これか。シングルハンドルは水漏れの原因がパッキンの劣化か、中のステンレスに傷が入っているのかわからないんですよね」

ちょろっと来て、パッと治るものかと思っていたのがそうでもないようだ。

「パッキンが今ないから、購入してからもう一度こないとダメですわ。しかも、パッキン取り替えても中に傷が入っていたら、全部の取り替えになるから2回分の工賃がかかってしまいますけど、どうします?」

選択肢は2つだ。

選択肢1 パッキンだけ取り替える。
治ればパッキン代と工賃1回分なので低価格。しかし、治らなければ再度来てもらわないといけないので、2回分の工賃と1回目のパッキン代(この場合は無駄になる)と新しい蛇口代の高コストになる可能性も秘めている。

選択肢2 最初から全部取り替える
確実に治る。工賃も1回分で済むが蛇口の取り替えはパッキンに比べ費用がかかる。そして、「もしかしたらパッキンだけで済んだかも」というモヤモヤが残る。

数学的にどちらが損をしないのかリスクを計算できそうだが、わたしの頭では及ばない。

「とりあえず、全部取り替えたときの見積もりもらえますか?」

そう伝えると、翌日に55000円の見積もりが届いた。正直、2〜3万ぐらいかと思っていたので見積書を手に膝落ちする。人件費も材料代も以前に比べてかなり高騰している。うちのお店はオープンから十数年が経過しているのだが、デザイナーさん曰く、「いま同じように改装工事をしたら1.5〜2倍くらいの費用になると思います」だそうだ。

とはいえ、ポタポタを止めるのに55000円は高い気がする。いっそこのままポタポタしてもらって構わない。どうすべきか考えていると、ある思いが湧いてきた。

自分でやればいいんじゃない?

いや、しかし、余計なことをして元に戻せなくなってしまえば、翌日の営業に差し支える。森末慎二がイメージキャラクターで台所の水道から水が止まらなくなって、主婦が大慌てしているCMのイメージが浮かんだ。

そして、わたしは過去に余計なことをして、後悔した経験は数しれないのである。

頭の中の天秤で55000円のキャッシュと森末慎二の笑顔とを秤にかけていたが、やがて貧乏根性が森末慎二に軍配をあげた。

現代は全てが高騰しているが、動画は無料で見られる。世の中にはありがたいことに色々な情報をあげてくれている人たちがいる。きっと、水道工事のやり方も上がっているだろう。
まずは自分でパッキンを取り替えて、それでも水漏れが止まらなければ全部の取り替えをお願いしよう。

もちは餅屋というけれど、手持ちがなければもちは買えぬ。

キレのいい句を読んだあとに調べてみると、どうもメーカーのホームページに水漏れ箇所ごとの対象方法が動画で説明されているようだ。

そして、蛇口からの水漏れはパッキンではなく、中のカートリッジの劣化が原因らしい。さっそく、カートリッジを取り寄せ、動画を見ながら取り替えたところ、ピタリと水漏れが止まったのである。

カートリッジ代5500円(税別)。

見事に10分の1の費用でこの難局を乗り越えたのだ!

これからの時代、もちは餅屋、コーヒーは珈琲屋だけではいけないのかもしれない。経験がないことでも、まず自分で調べてやってみるという気持ちがないと、この高コスト時代は生き残れないかも。

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