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絶対に行くな!1人動物園

 2024年5月11日土曜日。

 天気は晴れ。

 最高のお出かけ日和。


 私は居ても立っても居られなくなって、1人で上野動物園に行くことにした。当日の朝、ふと思いついて決めたことだ。我ながらフッ軽すぎると思う。


 動物園に行くのは、おそらく小学校低学年ぶりだ。「上の」動物園があるなら、次は「下の」動物園に連れて行けと親に駄々をこねた記憶がある。中学生のころ、この話を友人にしたら、「下の動物園?下ネタ?」と言われた。そんなわけないだろ。小学生の頃の純粋な気持ちを返してくれ。
 

 まぁ、そんなことはどうでもいい。約13年ぶりの動物園。大人になってから見るキリンはどんな感じだろうか。今までとは違う視点でゾウを見ることができるだろうか。想像するだけで興奮した。



 上野動物園の入園料は600円。お財布に優しい。チケットを購入した私は、浮かれて入場ゲートを通った。
 しかし、辺りを見渡してその浮ついた気持ちは一気に落ち着いた。その日は天気の良い休日ということもあり、周りは親子連れ、カップルばかりだったのだ。私は人権を失った。そうか、1人で動物園に行くのはマイノリティなのか。1人で来ているのは、超高性能なカメラを持ったおじさんか、私ぐらいしかいなかった。


 でも、人間も動物も幸せそうで、そんな彼らを見ているだけで私も幸せな気分になった。


 いや、動物は本当に幸せか?


 ホッキョクグマは日に当たって暑そうだし、バイソンは非常に狭い檻の中にいるし、コンドルは本来アンデス山脈の3000m付近に生息しているらしいのに…。
 はぁ、1人だからこのモヤモヤした気持ちも自分で消化するしかないのか。



 ただ、1人で行って良かったこともある。自分のペースで周れたし、お気に入りの動物の前に居続けるという自由な行動ができた。20分ぐらいアビシニアコロブスを見続ける幸せな時間があった。


 いや、本当にこれで良かったのか?


 本当は感想を言い合いながら周りたかった。本当は自分には無い視点でも動物を見たかった。お互いが感じ取ったことを共有したかった。バイソンとは自撮りではなく、誰かに撮って欲しかったし、その誰かと一緒に写真を撮りたかった。思ったことを口に出して、それを受け取ってくれる人が近くにいて欲しかった。
 もし1人で、「ヘビクイワシくん?イケメンだね」とか「ジェフロイクモザル!ナイス飛び移り」とか、思ったことを口にしてしまったら…。私はニヤニヤしながら独り言を呟く激ヤバ野郎になってしまう。はぁ…。
 


 でも、楽しかったし、最高に癒されたから、また行きたい。次は誰かと…。

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