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カディスタのメンタリティ
こんにちは、カディス・ジャパンのAnaです。
『THE INSIDE LOOK』ではラ・リーガ1部所属カディスCFのスタッフ(広報部)が見る現地クラブのリアルな情報を発信しています。
またまたすっかりご無沙汰になってしまいました。気温もグッと下がり夏の終わりを感じるこの頃です。ラ・リーガ 2021-22シーズンも第7節まできて、現在15位と悪くないスタートを切っているかと思います。昇格2年目は対戦相手に研究されてくることはチームも分かっているので、一試合も気が抜けないシーズンになりそうです。
さて、先日バルセロナ戦を終えた後の現地の空気感が "カディスっぽさ" 溢れるものだったので今日はその点について書いてみたいと思います。
【カディスCF現地フロントスタッフの様子】
— カディスCF|日本公式🇯🇵 (@Cadiz_CFJP) September 24, 2021
唯一のマドリード出身でアトレティでもあるスタッフが内容面含めしょげているのに対して、その他のスタッフは「バルサに負けなかったんだぜ?!」と言っております。温度差。笑
このゆるくて陽気な感じこそカディスウェイ。人生楽しそうです。
楽に行こう!
「我々ビッグクラブではないねん」という大前提
カディスCFは、南スペインのアフリカ大陸を望む海辺の街に拠点を置くクラブで、自治体としては人口12万弱の長閑な環境の中で活動しています。2020-21シーズンからラ・リーガ1部に所属していますが、それまでの15年間はセグンダB、セグンダと下部リーグでシーズンを過ごしてきました。
マンチェスター・シティやバレンシアでの経験がある #おれたちのネグレド先輩 がビッグクラブでの知見を持ち込んでくれていますが、多くの選手は1部でのプレー経験すらない状態でした。
そんなチームを地元の人たちは良い時も悪い時も見放すことなく、寄り添ってきたわけです。スペインの人たちは地元への愛がとても強いですが、カディス民ももちろんこれに当てはまります。人口12万弱の地域にほぼ海しかない環境の中でサッカーは一大娯楽なわけで、必然的に街への愛と共にクラブへの愛も醸成されるのだと思います。また陽気な土地柄も相まってサポーターは非常に明るくアツく、他のクラブからも愛されています。
結果が悪くても #酒酒酒 と歌って楽しもうとする話は有名ですね。
日本のカディスタの皆様の間でも知名度急上昇中(?)のこちらの歌!
— カディスCF|日本公式🇯🇵 (@Cadiz_CFJP) November 3, 2020
alcohol, alcohol… hemos venido a emborracharnos, el resultado nos da igual
(アルコール、アルコール…私たちは酔いに来た、結果など気にはならない)
こちらの歌ですが、どうして生まれたと思います?
この熱気はチームがどのカテゴリーでプレーしようが変わらない、というのがカディスCFのサポーターが特別な理由の一つ。そんな側面もあり、スペイン国内で愛されるサッカー雑誌『PANENKA』が独自で行なった"ベストサポーター賞 2020" においてもカディスのファンが1位に選ばれています。
ビッグクラブとの対戦結果にみたカディスタの真髄
2020-21シーズンではレアル・マドリードとFCバルセロナに勝つという奇跡的な結果を出して知名度を上げたカディスですが、街の人にとってビッグクラブとの対戦はお祭りのようなイベントです。
スペイン人サッカー好きのマジョリティは
「レアル・マドリード or バルセロナ + 地元のクラブ」
をフォローします。なのでもちろん地元のクラブを一番愛してはいるのですが、それとは違う次元で2大クラブ(近年はここにアトレティコ・マドリードも加わり3大クラブでしょうか)に憧れています。プリメーラに所属できることによって、地元の愛するクラブがテレビ越しにみていたヒーローたちと対戦するのは、それは盛り上がりますよね。
ただここで記しておきたいのが、カディスCFのサポーター、通称カディスタたちのサッカー観は非常に地に足がついているということ。楽しいことが好きな陽気なキャラクターと前述しましたが、大前提としてサッカーを見る目は非常に超えています。なので昨シーズンのいわゆる"ジャイアントキリング"を経験しても、決してサッカーの内容で優っているとは思っていません。
(とハッキリ言い過ぎるのもなんだかな気はしますが笑)
そんな中先日のラ・リーガ 第6節 FCバルセロナ戦(0-0)を終えた後の反応がとてもカディスらしかったエピソードを。負けたら監督解任か、と報道され厳しい状況でカディスにやってきたバルセロナ。F デ・ヨングの退場もありカディスに非常な有利の試合展開となりますが、いくつかチャンスを作るも決定打に欠けスコアレスドローで試合は終了しました。
フロントスタッフも90%以上は地元の人で構成されているのですが、唯一のマドリード出身スタッフ(アトレティコ好き)はこの結果を受け憤慨。相手も万全な調子でないチャンスを活かしきれず勝ち点3を落としたことにショックを受けていました。1部に昇格した後に現地に合流している当方も大方同じ感想、勝てたのにもったいない・・・・と肩を落としました。
しかし一方、スタジアムのファンや地元出身のフロントスタッフの反応の違うこと!
「めっちゃ大事な勝ち点1やん!」「バルセロナに負けなかったのすごすぎる」
もちろん全ての試合に勝ちたい気概はあるものの、ビッグクラブに負けなかったことは喜びに値するのです。良い時も悪い時も楽しむ気持ちを頭にかすめながらクラブを応援する姿は見ていてとても気持ちが良いですね。
加えてカディスタの素敵なところは特定のクラブを非難しないこと。試合中はチームのサポートのためにブーイングもするし審判を批判することもありますが、スタジアムを一歩出てバルでサッカー談義をする際など「あのチームが嫌い」とか「あのチームに負けてほしい」といったネガティブな発言はあまり聞いたことがありません。カディスCFには直接的なライバルが存在しない、という独特な点にも起因しているかもしれませんね。
Anaの小言
気がつけばカディスという街に移り住んでから約10ヶ月が経ちました。あと2ヶ月で帰国がせまっているのかと思うと既に後ろ髪を引かれる思いです。コロナ禍の渡欧は規制も多く先が見えないことばかりでしたが、街やクラブの人たちの温かさや明るさに助けられ、今では散歩に出れば誰かしら知り合いに会うみたいな海辺の生活を満喫しています。今年見逃してしまった街一番のお祭り、「カディスのカーニバル」は既に来年6月への延期が発表されたようで、その頃をめがけてこの街にまた帰ってきたいなぁとすでに想像を巡らせているところです。
では、また!