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#3 社会保険適用拡大に向けてやること②

今日は前回からの続きを書いて行きます。
お題は、社会保険の適用拡大に向けてやることです。

✅令和4年4月~10月にやったこと

企業規模によりますが、社会保険の適用拡大に向けての対応はできるだけ早い方が望ましいですが、遅くてもその年の4月頃から行うと良いのではないでしょうか。

うちの会社では、新たに追加となる人数と、他の仕事との兼ね合いを勘案し、令和4年の4月から準備を始めました。

その手順は次のとおりです。

  1. 事務担当者が理解する

  2. 当社が10月1日より特定適用事業所となることを全従業員に周知する

  3. 適用拡大対象者を洗い出す

  4. 適用拡大対象者に現況確認届を送付し、記入した後、返送してもらう

  5. 適用拡大対象者の保険料を調査する

  6. 想定される保険料や等級を適用拡大対象者に通知する

  7. 適用拡大の対象となる被保険者および被扶養者から資格取得に必要な書類を提出してもらう

  8. 回収した書類をチェックする(不備は再提出を依頼)

  9. 9月30日までにできるだけ取得届、被扶養者異動届を下書きしておく

  10. 10月1日以降、申請する(当社は電子申請)

  11. 取得確認通知書、被扶養者異動決定通知書が届いたら確認する(通知書はデータまたは書面で保管)

  12. 健康保険証が届いたら記載事項を確認し、誤りがなければ通知書と一緒に発送する

今日は、この中の5番目~8番目までの手順について解説したいと思います。

✅適用拡大対象者の保険料を調査する

現況確認届は、従業員の自宅に届いてから10日~2週間程度で返送してもらうように期限を設けます。

期限が短いと文句を言ってきたり、長くとり過ぎると提出することを忘れてしまう人もいますので、期日の設定は結構気を使います。

現況確認届の質問は、至ってシンプルです。

  1. 副業(雇われて働くもの)をしているか否か、している場合は社会保険に加入しているか

  2. 今後、副業(雇われて働くもの)する予定があるかないか、ある場合は週何時間程度働くことを希望しているか

  3. 被扶養者となる75歳未満の家族がいるかいないか(いる場合は生年月日を記載)

  4. (70歳以上の従業員のみ)今まで厚生年金保険に加入したことがあるかないか

こんなにシンプルな質問ですが、国保に加入しているのに社保に加入していると書いてきたり、既に後期高齢者医療制度の対象者である被扶養者を書いてきたり、自分のことなのに厚生年金に加入したことがあるかわからない人がいたり・・・

こう言う方には、折り返し丁寧に確認の連絡を入れます。

そんなこんなで現況確認届の確認ができたら、各自の保険料を算出します。

このとき参考にするのは「10月1日時点の労働契約」の内容です。ただ、未来のことはわからないので、あくまでも算出日時点で想定される10月1日時点の契約内容で構いません。

人数が多いと、びっくりする金額が出てきますよね・・・。

✅想定される保険料や等級を適用拡大対象者に通知する

次に、算出した保険料や等級を適用拡大対象者に通知します。

ここで重要なのが、「社会保険に加入しないようにすることができる働き方」を一緒に書いておくことです。

世の中には「社会保険に入りたい!」と言う人もいれば、「絶対に入りたくない!」と言う人もいます。今まで家族の被扶養者であった人の場合は特に、単純に保険料の負担が増えますので、「社会保険には入りたくない」と考える人が意外といます。

ですので、この段階で「こうすれば社会保険に入らなくて良くなるよ!」と言う甘い言葉はとても有効なのです。。

つまり「所定労働契約を週20時間未満に変更した場合の手取り賃金」と、「このままの労働契約で社会保険に加入した場合の手取り賃金」、そして所定労働時間を減らす場合の申請手順等も書いておくのです。

この手法は結構有効で、結果的に、当社では適用拡大対象者の約1割が所定労働時間を減らし、社会保険への加入を回避しました。
これは即ち、会社経費の削減にも繋がります。

減らした人の所定労働時間は、逆にもっと働きたい人の所定労働時間を増やすことで対応しました。


✅適用拡大の対象となる被保険者と被扶養者から資格取得に必要な書類を提出してもらう

そして、保険料等の通知と一緒に社内様式としての「被保険者資格取得・被扶養者追加申請書」を同封し、必要書類の提出を要請します。

今回の適用拡大対象事業所(=特定適用事業所)は既に51人以上の被保険者がいるので、資格取得や扶養追加の際に使用する社内様式(フォーマット)は既に準備できていることの方が多いと思います(社労士事務所等に外注しているのであれば全く問題なし)。

ただ、それでも初めて申請する従業員から「どうやって記入するのか」「書類はこれで良いのか」と言った超基本的な問い合わせや、イレギュラーな質問もあるので、自分の理解を深めておく必要がありますね。

特に、既に副業先で被保険者になっている従業員に適用される「二以上勤務」者の取り扱いは今までやったことがない手続きだったので、色々調べて勉強しました。

✅回収した書類をチェックする

そうこうしてると従業員から書類が届き始めるので、届いた書類のチェックを行います。本人が被保険者となるだけの場合には全く問題ありませんが、「被扶養者」がいる場合の書類チェックはやはり注意して行わなければなりません。

主に「続柄」「収入」を確認する訳ですが、次のような場合は、確認したことにならなかったり(=この場合、再提出を求める)そもそも被扶養者になれませんので注意が必要です。
(※「家族」・・・被扶養者として申請予定の家族のこと)

  1. マイナンバーの申告がない。

  2. 住民票の「続柄」が省略されている。

  3. 家族の「収入」が月収108,334円、年収130万円を超えている(一定の障碍者及び60歳以上の被扶養者は月収15万円、年収180万円に読み替える)。

  4. 収入を証明する書類が全て揃っていない。

  5. 被保険者の「収入」が家族の「収入」の「倍以上」ない

  6. 別居している相手への仕送りをしていなかったり、家族の収入が被保険者からの仕送り額以上となっている

  7. 家族が上限を超える失業給付を受給している

順番に見ていきます。

  1. 入社時に何等かの事情で会社へ申告がなく、今回初めて被扶養者の追加申請を行う場合は「マイナンバー」の提出が必要です。それが同封されていない場合は、再提出を要請します。

  2. 会社に「個人情報をできるだけ出したくない」と考える人は一定数いて、被扶養者の手続きをするときにも「続柄」を省略してくる場合があります。そういう場合は被扶養者申請のための「続柄要件」を説明して、再提出を要請します。

  3. 「年収130万円」については結構理解している人が多いですが、「月収108,334円」を理解していない人が結構います。また、「1月~12月」の年収と思っている人も結構います。これはマスコミの報道にも原因があると思っていますが、健康保険では、加入する月から始まる1年間の年収で加入できるかできないか決まるので注意が必要です。

  4. 例えば課税(非課税)証明書の給与欄に金額の記載があるのに、直近3か月の給与明細のコピーがない場合などがこれに当たります。中には「退職した」と言う人がいますが、その場合は「退職証明書」や「離職票」の提出を求めます。それでも「ない」と言う場合は、毎年11月頃行う被扶養者の「収入確認調査」で給与等の金額を改めて確認します。

  5. 結構抜け落ちる部分です。そもそも適用拡大に当たる被保険者の収入は「月収88,000円以上」なので、最低の年収は「1,056,000円」です。この場合の被扶養者の年収は「528,000円」以下でなければならず、被扶養者にこれ以上の収入がある場合、被扶養者になれません。この場合、被保険者に給与以外の別の収入(例えば年金等)がないか再確認する必要があります。

  6. 別居中の家族に仕送りしていないケースはこのときもありました。また、仕送りはしているものの、仕送り額よりも家族の収入の方が多い場合も被扶養者になれません。

  7. 4の例と似ていますが、退職して働いていないが、実は「失業保険を貰っている」と言う場合があります。「給付制限期間中」であれば被扶養者になれますが、「日額3,612円以上(60歳以上は日額5,000円以上)」の失業給付を受給中の場合、被扶養者にはなれません。


今日も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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