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カカオをめぐる冒険2024年 タイ北部④最終

タイのものづくり

タイの人は一つの素材を有効活用していろんなものを作る。
ここでもカカオのお酒、カカオ染めテキスタイルの他にも、揚げ煎餅(タイ料理でよく出てくるえびせんべいのカカオバージョン)やポプリや石鹸etc.色々出てきた。ちなみに揚げ煎餅の味は結構大味でどこか懐かしい、田舎育ちの私が思うに「知り合いのおばあちゃんが道の駅で売っていそうな味」だった。

カカオ入りの揚げ煎餅

素材の有効活用はカカオに限った話ではなく、タイで生産されているコーヒーや農産物・海産物などでも同じようなことをしている。日本だったら素材をこんなふうには扱わないだろう、と思うような大胆な使い方を大きなブランドも小さなブランドもどんどんやっている印象だ。そして何か一つが話題になると皆すぐに真似をして作り始めるので、結果さらに注目度が高まってブームになっていく。その規模感とスピードが、自分が日本の企業で食品の商品開発をしていたときの体感より幾分も早い。日本より東南アジアの素材メーカーのほうが色んなレスポンスが度々早かったことを思い出した。(ただしかなり雑ではあった)
日本だと企業として動く場合とても慎重で、問屋さんや販売店に提案後の採用に至るまでに監査があったり、更に納品前に検査結果を出したりが求められるので店頭に並ぶまで時間がかかる。だからこそ安心で息の長い商品が生まれやすいのだが。
一方でタイは色々すっとばしている感をすごく感じる。けれどだからこそ面白いものがどんどん出てくる。そしてブームが去るのも早い。


みんなでランチ

ここで作られた様々なカカオのプロダクトを手に取って話をしていると、年配の女性が家の奥から鍋を持って現れた。代表のお母さんだった。彼女もカカオ染めのバッグを手にしていた。
お昼ご飯の時間になり、外のベンチにお母さん手作りの食事が並べられた。冬瓜の辛いスープ、鶏団子と葉野菜と春雨のスープ、ブロッコリーとたっぷりの唐辛子炒め、そしてタイ米。美味しそうな香りに、数匹の飼い犬もハエも集まってきた。

辛いけれどとても美味しいタイの家庭料理だった。バンコクのレストランや屋台だとこうした家庭料理を食べる機会が無いので、外国人は結構脂っこくてお肉たっぷりの食事になりがちだ。この後も度々タイで家庭料理を食べさせていただく機会があったのだが、外食、特にカレーのようにハーブや油をたっぷり使う料理は家庭ではそれほど作らないそうで、その日も野菜が中心のヘルシーな料理たちだった。
ありがたいことにこれまで会ったタイの人たちとは皆、初対面でも必ず一緒にご飯を囲んでいる。最初はそれすらも緊張していたが、今は自分にとってすっかりリラックスする大好きな時間になっている。


ランパーンへの帰路

色々見させてもらって、手作りのお昼ご飯までご馳走になって、いよいよランパーンへ帰る時間に。
が、出発早々に車が故障してしまった。バンコクと比べて涼しい北部ではあるが、昼間は気温が35℃を超える。急いで街の修理工場に駆け込んだ。

修理工場の様子

結局治らなかったので、メーカーが運営しているっぽい大きな工場へ移動。
30分ほどで修理が終わり、ようやく帰路に向かうことに。

パヤオ県といったらパヤオ湖という大きな湖が有名なのだが、せっかくここまで来たんだからと連れて行ってくれた。

湖にナーガが浮かぶ

暑いけれど湖は涼しげで、リフレッシュできた。
ほとりで宝くじを売っていて、トンさんが「宝くじを選んでよ」と言ってきたので、幸運を祈りながら一枚選んだ。

当たりますように

その後に再び山道を通り日が暮れる前にようやくランパーン県にたどり着いた。そしてこの辺で一番有名な「ワットチョーンカムプラアーラームルアン」という長い名前のお寺に立ち寄った。

黄金すぎ
ダンジョンすぎ
中も派手すぎ

見た目はとにかく豪華で金ピカで派手な寺院だが、中はひんやりとしてとても静か。ここに来たタイ人は皆真剣にゆっくりと祈っている。トンさんも仏様に真剣に手を合わせていたので、私もこれまで安全に旅できたことを感謝し、これから先の旅の安全を願った。私の祈願が終わってもトンさんはまだお祈りをしていたので、ひとりでゆっくりと寺院の中を見学した。派手な外観と静寂のギャップ、裸足の足裏に伝わるひんやりとした大理石の質感に、不思議と心が落ち着くような感覚になった。


ランパーンの夜

帰りは車の故障や寄り道で行き以上に時間が掛かったが無事にランパーンのトンさん夫婦の家に到着。彼らは家の前の道路で串焼き屋台を営んでいて、焼き場には奥さんがいた。1年以上ぶりの再会に相変わらず明るい笑顔で出迎えてくれた。
私は今晩の寝台列車でバンコクに帰り、そのまま朝一の飛行機でラオスに移動する。列車の時間までまだ少しあるので、トンさんたちの屋台でご飯を食べさせてもらった。

キャンプ場みたいな雰囲気

串を13本も焼いてくれた。焼き鳥みたいな見た目だが、タレの味が日本より甘辛くてレモングラスやハーブが効いていてとても美味しい。ビールがあればより最高だ。

さらに自宅のシャワーまで貸してくれた。朝も早くて1日外にいたのでかなり汗をかいていた。寝台列車の移動なので次の日の夜ホテルにチェックインするまでシャワーは浴びれないと覚悟していたからありがたい。家の中にも外にも猫と犬がたくさんいてびっくりしたが。10匹くらいいて、もういないかなと思ったら赤ちゃん猫が出てきたり、なかなかの大家族だった。猫たちに追いかけられながらシャワー室に入った。今は独立した息子さんの部屋を借りて着替えたりしたのだが、「あなたはもう家族みたいな存在だから、次にランパーンに来る時はホテルじゃなくてうちに泊まったらいいよ。息子の部屋を使いなさい。」と言ってくれた。とても嬉しかった。


久々の寝台列車

トンさん夫婦と別れてランパーン駅に来た。2022年にバンコクからランパーンに行く時も寝台を予約していたのだが洪水の影響で間に合わず断念したので、個人的にも久しぶりの寝台の旅。
電車が到着するまでの間、駅前の屋台をウロウロした。土曜日なので屋台も多く、皆楽しく飲んでいる。

私もビールを買って列車の中で飲みたいなと思ったけれど、途中で列車のトイレに行くのが嫌でやめた。タイの寝台列車のトイレは水洗などではなく、便器の下に穴があいていて、用を足すと線路に直落ちする仕組みになっている。この便器の下を猛スピードで流れる闇に酔っ払ってスマホでも落としたらと思うとちょっと怖いので、なるべく行かないようにしている。
(…と言いながら結局出発後に車内のトイレを使用。下はあまりにも汚くて載せられないが、ビビりながら窓をスマホで撮影。)

「駅に停車中はトイレしないで」

列車が到着したので乗り込む。車両は旅行客で満席だった。

久しぶりの寝台列車。このカオスな車内がたまらない。硬いベットに揺れや音、効きすぎる冷房。熟睡できるわけではないしシャワーも浴びることができないけれど、乗るたびに旅をしていると実感できる。体力的に辛いかもしれないが、歳を取ってもこんな旅が続けられたらいいなと思う。
日本から持ってきた本を読みながら眠りについた。


ラオスへ

翌朝目が覚めたら列車は大幅に遅れていた。
ドンムアン空港の近くの駅で下車して1時間半後にラオス・ルアンパバーン行きの飛行機に乗る予定だった。まずいことに電車が1時間以上遅れている。到着時刻を考えると搭乗手続きにはもう間に合わない。
節約のために寝台列車に乗ったのに、飛行機取り直しはキツイな…と思いつつ、搭乗手続き締め切りちょうどに降車駅に到着。カカオ蒸留酒を詰め込んだ重いバックパックを背負い、記憶を飛ばすくらい必死に、一か八かでチェックインカウンターに走った。降車駅とカウンターは空港の端と端だったので、朝から辛くて泣きそうになりながら20分くらい走った。
カウンターに到着するとスタッフがいてなんとかチェックイン完了。少しキレ気味に「急いで行け!」と言われ、今度は搭乗口まで走った。間違いなく大人になってから一番キツイダッシュだった。

そして朝9時、なんとかラオス・ルアンパバーンに入国。
ここからはcacaoriteではない、また別の自分のための旅。
ワーケーションしたり、日本からの頼まれごとをこなしたり、ラム酒の蒸留所ツアーに参加したりする。
とりあえずビールを飲みながら今晩の宿を探そう。

(タイ北部編 おしまい)

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