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カカオをめぐる冒険④ 2022年9月タイ・ペッチャブーン県

ペッチャブーンに行くことになった経緯

タイ渡航1ヶ月前。
何の伝手も無い状態でどうにかカカオ農園にアプローチするため、Googleマップ上でタイ語でひたすら「ฟาร์มโกโก้(カカオ農園)」と打ち、時に衛生写真を見ながらタイ国内に存在するはずのカカオ農園を探していた時のこと。
ヒットするほとんどは電話番号も無くアプローチのしようがなかったり、苗の販売業者だったりカフェだったりしたのだが、タイの各エリアごとに検索していく中で、北部のパヤオ県で突然1軒の農園がヒットした。
農園の名前はタイ語で分からないが、facebookのページが存在している。この農家にアクセスするためだけに、日本では既に廃れたfacebookを今更登録し閲覧してみたところ、連絡先に個人LINEのIDが載っていた。
マップ上の多くの農園は電話番号しかないのだが、facebookとLINEのIDを載せているということは何か可能性があるのかも・・?
物は試しにその個人LINEをにタイ語と英語でメッセージを送ってみたところ、しばらくしてオーナーから返事がきた。(アイコンは迷彩服の坊主頭の男性だった。)

オーナーの男性(チャナさん)は、自身はパヤオ県でカカオ農家を営んでいるのだが、バンコクから訪問するのなら中部のペッチャブーン県に住む友人の農園に行けと言う。
ペッチャブーン県。ガイドブックにも載っていない、初めて聞く土地である。なんか不安な流れだな…と思ったが、断ってもふりだしに戻るだけなので、ひとまず従うことに。
その友人の女性はビーさんと言い、彼女の農園は2019年に始めたばかりとのこと。小さな加工場もあり、チェンマイのオーガニックチョコレートのメーカーにも卸しているらしい。
彼女とLINEのやりとりをはじめたら、日本のお菓子が好きで、タイのスーパーで見つけたお菓子のパッケージの写真をたくさん送ってきてくれる。そして日々の農園での仕事の写真もバンバン送ってくれる。まるで日記のように。
ビーさんは英語は苦手とのことでほとんどスタンプと写真ばかりだったが、友達とやりとりするような感じで、初めてのペッチャブーン訪問のスケジュールを立てていくことになった。

ペッチャブーン県はどこにあるの?

ペッチャブーン市内は山に囲まれた肥沃なパーサック川の流れる盆地にある。 タイ国民から「タイのスイス」と呼ばれる高原地帯で、カオコー・ナムナオなどの国立公園が点在する。 毎年1月は、タマリンド(タイ語:マカーム)の収穫時期にあたり、ペッチャブーン産のマカーム・シー・トーンの品種は有名である。この時期スイート・タマリンド(マカーム・ワーン)の収穫を祝う祭りも開催される。

出典:Wikipedia

タイ国民にとってのスイスであり、タマリンドの一大産地であり、実はカカオの産地でもあるペッチャブーン。
タイへの渡航歴は長いが、これまで一度も足を踏み入れたことのない地域だった。
バンコクから北に車で4時間ほどらしい。
長距離バスで現地に向かうと伝えたところ、「もう一人バンコクから同行者がいるからバンコクに車で迎えにいく」とのこと。そわざわざ申し訳なさすぎる…と思ったのだが、私一人のために来てくれるわけではないので少し安心した。

通訳付きの旅

前回のランパーン訪問から12日後。
その間にチェンマイ・バンコクと別仕事での所用を済ませ、いよいよペッチャブーンに向かう前日の9/22。ビーさんから突然、「わたしの先生から連絡がいきます」とメッセージが入った。
直後に知らない女性からLINEのメッセージが入った。
「私も一緒にバンコクからペッチャブーンに行きます」
そしてその後電話がかかってきた。
「初めまして。私はビーの学生時代の英語の先生です。彼女は英語が苦手なので、私が通訳として同行することになりました。また明日会いましょう」
同行者は同業者ではなく、私たちのための通訳だった。恩師を通訳として呼び寄せるとは、やっぱりわざわざ申し訳なさすぎる…!

バンコクを出発

そしてやってきた訪問当日の9/23。
ドンムアン空港近くの道路脇のバス停で待ち合わせ。指定されたオレンジ色のバンを見つけ、乗り込んだ。屈強で寡黙な男性が二人、運転席と助手席に乗っていた。
助手席にいたのは、一番最初にやりとりをしていたパヤオ県の農園オーナー・チャナさんだった。パヤオからバンコクは車なら最低でも10時間はかかるはずだ。今回タイに来るまでは農園を見たことのない、日本の小さなメイカーであることを知っているはずなのに、わざわざ来てくれるなんて。なんだかやっぱり申し訳ない…という気持ちに加え、緊張と不安がどんどん大きくなってしまった。
そうこうしているうちに、先生とも合流。4人でペッチャブーンに向け4時間のドライブが始まった。

不安でちょっと吐きそうになりながら、出発

ペッチャブーン到着、さらに増える関係者

バンコクの長い渋滞を抜け、昼過ぎにようやく県南部のウィチャンブリー地区に到着。車は大きな屋外レストランに停まった。そしてそこにはビーさんの会社の従業員や、国内から集まった同じカカオ農家仲間が10人ほどが待機していた。
(多っ…)と思わず圧倒されながら、総勢10数名で大きなテーブルを囲むランチが突然始まった。

レストランは「ガイヤーンターペー」というタイの焼き鳥の有名店で、昼から大勢の人で賑わっていた。
みんな手掴みでわしわし食べている。そして「これ美味しいよ」と手掴みで渡してくる。衛生面とか気にしていたらここでは何も出来ないなと観念し、郷に従って私も手掴みでわしわし食べることにした。

農園仲間は北部のナーン県の人もいて、日本人がやってくると聞いてわざわざスケジュールを合わせて来てくれたらしかった。
皆にこやかで優しいけれど、日本でも最小級の無名のチョコレート屋の私に一体何を求めてこんなにしてくれるんだろう。私は皆に合わせてにこにこしつつ、内心疑心暗鬼になっていた。

つづく

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