演劇:人間関係の二人芝居「実弾生活デュエル2」の楽しみ方 - ビジネスやマネジメント視点で演劇を見て感想を考える
12月8日から開幕した、連作短編二人芝居 実弾生活デュエル2ですが、早いもので残すところ、あと4公演となりました。
12月11日の公演は一部売り切れがありますため、実際に「飛び込み」含めて会場観劇の機会はあと3回です。
さて、舞台公演などでよくある、アンケートやSNSへの感想をください!という主催側からの勝手なお願いですが、今回の作品、もしかしたら上手く感想にまとめられない部分があるかもしれないと思っています。
投げっぱなしで「言ってください」というのも親切ではないので、今回は新しい試みとして、アンケートや、ご意見をいただき、考えてみたので、
「連作短編二人芝居 実弾生活デュエル2 感想の言い方」を考えてみました。
少しだけお付き合いください。
▼連作短編二人芝居 実弾生活デュエル2とは
オムニバスコントライブ、実弾生活の別シリーズ、二人芝居の短編集です。
派手な演出も行わず、そこにあるのは、2つだけ。
・人間関係
・言葉の掛け合い
・相手への素直な感情
だけです。
最もシンプルな人間関係のみで作品は構成されています。
▼どんな人がどんな風に出てくるの?
連作短編二人芝居 実弾生活デュエル2には以下のキャスト様がそれぞれの立場で出てきます。当日パンフレットにも書いてあるので、これはネタバレではありません。
【1話 修学旅行の夜】
ある、修学旅行の宿での出来事。引率する教師2人の会話劇です。
高木素子(女性教師)
出演:
チーム実 - 新谷真弓(ナイロン100℃)
チーム弾 - うえのやまさおり
奈良一義 - インコさん(両チーム共通)
ここで描かれているのは、職場での同僚としての2名の距離感です。
生徒の前では、1人の大人としての教員ですが、修学旅行という誰もがドキドキワクワクするシチュエーションでは、2人の関係は単なる同僚ではなく、1人の大人としての存在に変化します。
仕事仲間として相手をどう見えているのか、そこでの割り切りが無くなった時に、2人は何を話すのか、一線を引いて大人の会話をするのか。それとも、腹を括ってお互いに思っていることを話すのか。
職場でもありますよね。オフィスでの関係と居酒屋での無礼講の違い。でも、人はどこか相手を心から信頼して全てを委ねるのかは、その後の関係を考えると、なかなか難しい。
観劇する方には、そんな2人が距離を縮めていくのか(恋愛的にとかではなく、1人の個人として)、それとも、職場でのお互いの生活やこれからを考えて相手に気を遣い言いたいことを素直に言えずになぁなぁで済ましていくのかという緊張感を、それぞれのキャラクターを演じる役者のコミカルなやり取りから普段の皆さんの「職場」という場所での近そうで遠い相手との関係に置き換えて見ることができると思います。
●感想のポイントお互い何でも話せるのか、そうでもないのかという距離感を感じて欲しい!そんな出来事があればぜひ教えて欲しい。
【2話 夕方の編集部】
とある月刊漫誌の編集部オフィスでの編集者と漫画家の会話劇です。
国枝由希子(女性編集者)
出演:
チーム実 - 宝保里実(コンプソンズ)
チーム弾 - 中尾ちひろ(おなかポンポンショー)
まりのもり(漫画家)
出演:
チーム実 - 新谷真弓(ナイロン100℃)
チーム弾 - うえのやまさおり
ここでの2人の関係性は、「クライアント(お客様)」と「クリエイター(漫画家)」。ディレクションする立場と、それを依頼を受けて創る人という関係です。
一言で言えば、仕事相手です。
皆さんが普段仕事をする中では、相手に対しては「必要なことができていればいい」「契約書の中身にあることをきちんと納品すればいい」で終わると思います。
実際、社会での評価はそこだけです。それ以外は私情とされる場合が多い。
この2年リモートワークをしたり、オンライン会議が増えたりして、「直接話すこと」「会って話すこと」の機会が減った時に、相手ときちんとコミュニケーション、取れているか不安だったりするでしょう。
コロナ禍で直接会わなくなる前から顔を合わせていれば、相手のことはだいたい把握していて、全て言葉にしなくても伝わる部分があったかと思います。
でも、オンラインでのやり取りが増えるにつれてどんどんコミュニケーションの中から、「必要なこと」以外の余白がなくなって、やり取りがシンプルになる代わりに、知らないことが増えていきます。
ここでの2人は相手のことを仕事の必要なこと以外は知りません。なぜなら、国枝さんは本来の担当の代打だからです。とにかく自分が任せられた仕事をスムーズに終わらせることを目的に話をします。
漫画家のまりのもり先生は、あまり会ったことのない相手からの要求に、少し戸惑います。なぜなら、がっちりとタッグを組んでいた戦友ではない相手と大きなお仕事の決断を迫られるからです。
皆さんも身に覚え、ありませんか?自分が手塩にかけて育ててきた仕事を、あまり知らない人に全部お任せできるのか。そんな感情をもしかしたら漫画家の先生は持っているかもしれません。
でも、相手の立場に立って考えると、仕事として割り切って作品を世に送り出す決断をしなければいけないかもしれません。
一方の編集者の国枝にとって大切なのは、「自分がいかに仕事で成果を出すか」です。
会社や上司から与えられた結果を与えられなければ、生活の種を失うことになります。そこで一番大切にするのは「目的の達成」です。
あまり知らない相手と、感情のやりとりの中でどうやって気持ちを合わせていくのか。それが全くタイプの異なる職業や性格、立場の相手にどこまで寄り添って自分のやりたいことから妥協しながらお互いを知っていくのか。そんな話です。
皆さんも「やりたい仕事」と「やるべき仕事 / やれる仕事」の違いに悩んだことがあると思います。やりたい仕事で生きていければそれは幸せかもしれませんが、なかなかそうは行かないのが世の常です。我慢が美徳でもないですが。
そんな2人が感情を重ね合わせていくところを楽しんで欲しいと思っています。
●感想のポイント
仕事相手に対して、どこまで自分の立場や哲学を貫けるのかを感じながら普段の皆さんのお仕事や立場に置き換えてみて欲しいなと思っています。
【3話 芸能事務所の午後】
とある芸能事務所でのマネージャーと所属タレントのやりとりです。
村井ゆき(元アイドルの役者)
出演:
チーム実 - 長島美那
チーム弾 - 柚木尚子
※長島さんの怪我により、12/11以降は柚木さんが両チーム出演となります。配信公演ではチーム実は長島さん出演会を見ることができます。
長島さんの一早い回復を願っています。
柿崎宏伸(マネージャー) - もっち(両チーム共通)
ここでの2人は、所属タレントと、管理するマネージャーの立場からの「これから」と「自分たちの夢」をどう折り合いをつけていくかです。
芸能に限ったことではないのですが、上司が部下を持った時、よく「マネジメントが大事」と言われますよね。ここでは、柿崎を上司と仮定して話をします。
管理することが果たしてマネジメントなのか?という視点で考えてみましょう。
柿崎のメインとなる仕事は芸能事務所のマネージャーなので、「所属タレントを売り出すこと」です。村井の役割は、所属タレントなので、「与えられた仕事をきちんと行い、結果を出すこと」です。
シンプルな話ですが、少し考えてみましょう。果たして、それぞれの役割をこなしていき、うまいこと結果を出すだけで関係は成立すると思いますか?
上手くいっている時はきっと、お互いの存在に感謝をして、事は上手く進んでいくでしょう。ここで出てくる2人は、少しだけ苦労しています。夢と現実の間で揺れ動いています。
皆さんは、やりたい仕事、できていますか?そんな方はもしかしたら一握りかもしれません。でも、少しくらい夢見たいですよね。毎日の大半は仕事で過ごすのだから。
そんな時に、並走してくれる上司、仲間はいわば「戦友」です。自分にとって、実弾生活の仲間はそんな関係です。(増田はマネージャーではないですよ)
では、マネジメントというのは単に管理して、目的に向かって邁進すればいいのでしょうか?
マネージャーでありタレントを抱える柿崎のポジションからしたらきっと彼の会社での評価は、タレントの村井を売り出す事です。でも、村井は悩んでいます。自分の過去と未来と今に。
そこで、お互いの気持ちをどのようにぶつけていくことで、これからを見ていけるのか。そんな視点で見てもらえると嬉しいです。
特に、部下や同僚、お客様を上手く誘導することができずに悩んでいる人たちに見て欲しい!
●感想のポイント
自分が職場の年下や部下に対してどう振る舞えば悩んでいるのかという柿崎の視点。村井の立場からしたら「もしかしたら上司ってこんな気持ちで頑張っているのかな」という目線で相手を見てみた結果を出してくれたら嬉しいです。
きっとマネジメントの形って色々とあるって知ってもらえると思います。
【4話 折部の部屋 夕方】
月刊漫誌の編集者の自宅での出来事。
妹の編集者と兄である脚本家の兄弟会話劇です。
折部かおり(女性編集者)
出演:
チーム実 - 宝保里実(コンプソンズ)
チーム弾 - 中尾ちひろ(おなかポンポンショー)
折部史郎(かおりの兄。脚本家) - インコさん(両チーム共通)
2話に登場する、国枝の同僚である。実弾生活デュエルでお馴染みのスーパー意識高い女子、折部が登場します。デュエル1をご覧の方にはお馴染みのあの編集者折部です。
話の流れは、折部が担当する漫画家の作品について、兄の史郎も関わるという部分があります。その中で、妹の部屋に兄がやってきます。
2話で、国枝は折部の仕事を一部引き継いでいます。その理由は、作品で知っていただければと思うのですが、ここで見て欲しいポイントは、家族で仕事をしてくことです。
普段、当たり前のように家族というのは血縁や何かしらの事情で人生で切っては切れない縁の中で生きています。なかなか逃れられない存在です。
ここでの2人は、妹の担当案件に兄が脚本家として関わっています。
かつ、兄はあまり売れていません。
しかもお馴染み折部は、まさにキラキラとした世界で自分で人生のサーフィンをうまいことやりながら生きていきたい、「楽しい人生」を当たり障りなくできるだけ苦労せずに生きていきたいタイプの人です。
国枝と近い部分もあるのですが、もっと自分のこれからの人生の幸せの欲求に対して素直です。
当たり障りなく生きるって、何かを創造していくよりもよっぽど難しいですよね。本当に上手く生きれる人っているんですよ。
特に流されるまでもなく、自分の意思をきちんと伝えながら、周りを上手く使いながら暮らせる人。
折部はまさにそんなタイプのやり手です。
それとは反対に、兄の脚本家の史郎は、自分の創造にこだわりにこだわり、上手く世間の波に乗ることのできない職人のようなクリエイターです。
そんな2人を結びつけるのは、血縁です。
相手の立場に立って考えたら何かしらのアドバイスもするし、でも、相手が求めていない意見は、ただのお節介です。
「あなたのために!」は時には「自己満足」で終わることがあります。
皆さんはどうでしょう。「君のためを思って今から怒るけどさ」と言っていたりします?
若手や身近な人に対して、本当は望まれていないことを「それを言っている自分」に酔いしれたくて言っていたりしませんか?それが家族だったりしたら、甘えてしまって何をしてもいいとかないですか?
そんな普段を見つめ直すきっかけになれば嬉しい作品です。
●感想のポイント
相手のことを思っている意見が実はお節介になっていないか、考えるきっかけになったらそんな出来事を教えて欲しいなと思います。
親しき中にも礼儀あり。という言葉がありますが、まさにそんな出来事です。
と、まぁ長々と書いてみましたが、どう感じるかは自由です。
もちろんストレートに表してしまうと、見ていて辛い人間関係になるので、実弾生活なりのコメディやモチーフがたくさん登場します。笑えます。
ぜひ心の余裕を持って楽しんでください。
見終わった後に、「相手には悪気がないけれどそんな人がいて、これからの自分はどう接していけばいいのかな」って気持ちになってくれたら嬉しいです。
残りわずかな劇場公演と、その後の配信公演でのポイントを書いてみました。
なんか、演劇なのにマネジメントや人間関係のお話ですねこれ。
【当日会場で観劇したい方はこちら】
当日券のご案内は実弾生活のTwitterをご覧ください。
【間に合わないので配信で見ます!の方はこちら】
余談ですが、会場で利用されている音楽のご紹介です。
▼開場中の音楽
KDさん
キイチビール&ザ・ホーリーティッツにてヴォーカル、ギターを担当。2022年よりソロ、バンドtenbinOとして活動予定。
インスタグラム:@kd.kb_ht
https://www.instagram.com/kd.kb_ht/
楽曲制作依頼などはインスタグラムのDMにてとのことです。
そんなKDさんのバンド、キイチビール&ザ・ホーリーティッツが年内解散です。12/30のラストライブは売り切れですが、大阪公演はまだ見ることができます!大阪のHoliday Records主催のイベントで解散前の最後の関西ライブです。東京の最後は売り切れのため、実際にライブを見れるのはこれが最後です。新バンドのライブ予定は来年です。
▼エンディングテーマ
平理央 / 「告白」
1999年生まれのシンガーソングライター。主に首都圏を中心に活動中。
15歳の頃、当時好きだった女の子に告白するためにギターと作曲を始める。失恋に終わるが、音楽は継続。2019年9月、音楽活動を開始する。
2020年12月、1st EP『さよならラプソディ』(Demo)をEggsにて配信リリース。2021年11月、初のバンド音源となる『告白』をMVと同時に配信リリース。「告白」はSpotifyでの注目の新人に3週連続で選ばれています。
インディーズサイト、Eggsでは1位を獲得。各地のラジオチャートでもランクイン中。
こちらが平さんのTwitterです。
今後、ライブ活動があるので、ぜひ。
2022年1月12日(水曜) 新宿ロフト
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新しいzine作るか、旅行行きます。