39℃。頭はボーッとし、身体は鉛のようだ。 大学入学と同時に一人暮らしを始め、引っ越し3日目に風邪を引いた。 下宿先は駅から遠く、おまけに坂道だらけでこんなところに1週間も住めば足腰が鍛えられそうだ。 節々の痛みと寂しさで死にそうになりながら母に電話すると、片道2時間の距離を飛ばして来てくれた。 手には肉と野菜、そして寸胴鍋。おお、なんと勇ましい。 母は手際よく部屋を片し、大量の筑前煮を作って帰っていった。子どもの頃から、よく作ってくれた筑前煮だ。母が大学時代に住んでいたアパ
苦節七年。「不合格」の文字を見た回数、数知れず。 大学を卒業してからNHKの子会社に就職し、3年半勤めた。26歳の時に実家に戻り、家業を手伝う内に税理士の仕事に興味を持ち、私は試験勉強を始めた。 甘く見ていた。最初、税理士になるのがこんなにも大変だと予想もしていなかったのだ。税理士になるには、5科目を合格しなければならない。毎年、本番のプレッシャーに負けてしまい、ケアレスミスや凡ミスを繰り返し落ち続けた。私は5科目の内、たった1科目も合格することが出来なかった。一年毎に、プレ