根占桐守(鹿山)

ねじめ きりもり、と申します。もしくは鹿山(かやま)の名で活動しております。 素敵なアイコンは鳥海えな(@enasuskak)さまより。 角川ビーンズ文庫さまより私の作品、 「ルール・ブルー 異形の祓い屋と魔を喰う殺し屋」が【2月1日発売】となっております。

根占桐守(鹿山)

ねじめ きりもり、と申します。もしくは鹿山(かやま)の名で活動しております。 素敵なアイコンは鳥海えな(@enasuskak)さまより。 角川ビーンズ文庫さまより私の作品、 「ルール・ブルー 異形の祓い屋と魔を喰う殺し屋」が【2月1日発売】となっております。

最近の記事

「常夏姫と冬蛇の王」第15話 伝説のはじまり

 城門で会ったベルーガによると、シムルグは一人、駆蛇ノ原へと向かったようだった。  リーザは駆ける足を一度も止めることなく、駆蛇ノ原を目指す。すると、駆蛇ノ原へ続く立派な門扉の前に立つ、シムルグの後ろ姿を見つけた。  シムルグが視界に入ったのと同時に、リーザは大きく叫んでいた。 「シムルグ!」  シムルグはすぐに振り返ってくれる。それが嬉しくて、リーザは駆ける足をさらに速めるが、今にも転んでしまいそうな危なっかしい足取りになってしまう。 「おいおい……!」  シムルグ

    • 「常夏姫と冬蛇の王」第14話 不変の冬の呪い

       リーザの宮廷霜祓いの試しの儀から数日が経ち。  シムルグは突如現れた王霜蟲について調査するため、ベルーガと共に城の外に出ていることがほとんどで、リーザはしっかりと話すことがなかなか出来ずにいる。  スカラ城の中庭にて。リーザは先日の試しの儀で起きた出来事について、ラースタチカと話をしていた。 「わたし、シムルグをきっと怒らせた。……お話、しづらい」 「あのシムルグ兄者が怒るなんて、相当珍しいことだが……それほど、リーザ殿の身を案じていたんだろう。今はもう怒ってなどいないと

      • 「常夏姫と冬蛇の王」第13話 七度打たれど燃えぬ君

         霜蟲の大群が、リーザを覆いつくそうと群がってくる。リーザはシィと短く息を吸うと、駆ける足も止めることなく、右腕を伸ばした。 『堕ちて、唸れ——夏の轟歌』  リーザが三つ、指を鳴らす。すると、たちまちリーザの指から火の雷が走って、次々と霜蟲たちを地へ叩き堕とした。しかし、それでも無数の霜蟲が群がってくる。 (木円盤がないから、木霊と共にちゃんと夏を呼べない……!)  リーザが肌身離さず持ち歩いていた木円盤は現在手元になく、離れた所で既に霜蟲群に覆われている。夏呼びの手

        • 「常夏姫と冬蛇の王」第12話 向日葵の熱情

           草原にぽつんと立つ、ひょろりとした樹木の下。リーザはその些か頼りない幹に身体を預けるように膝を抱いて座っていた。  少し離れた横隣に、誰かが腰を下ろす気配を感じる。リーザは立てた膝に埋めていた顔を僅かに上げて、ぽつりと声を漏らす。 「ごめんなさい。いきなり、変なことしゃべって、泣いて……。嫌な思い、させた」 「別に。何も思っちゃいねぇ。というか」  横から聞こえてくるシムルグの低い声は、やはり淡々としていた。 「俺が気に障ることを言ったなら、言え。人心には疎いから、わ

          「常夏姫と冬蛇の王」第11話 あなただけを見つめる

           木円盤の中心部へと乗ったリーザは眼を伏せ、深く息を吸い込み、細く連ねるように吐き出した。 『舞えよ、舞え。夏色娘たち——シダーの名のもとに。剣の葉を持て、薔薇を持て』  リーザは木円盤の上で、トーン。トーン、と軽やかに踵を鳴らして跳ぶ。すると、音が鳴る度に木円盤から紫紅の火花が飛び散った。 『高く舞え。いざや歌おう。シダーの御霊に応え、猛き王に見える踊り子と成ろう』  トーン、トーン。木の音が鳴る。  辺りに散った紫紅の火花は針のような形となり、リーザの周りをぐるぐ

          「常夏姫と冬蛇の王」第11話 あなただけを見つめる

          「常夏姫と冬蛇の王」第10話 駆蛇の試しの儀

           駆蛇ノ原には、もう春先だというのに未だ霜蟲が数多く湧いていた。  リーザは木円盤を抱える手に微かに力を込めながら、緊張して速くなってゆく鼓動を落ち着かせようとする。すると不意に、前を歩いていたシムルグが素早くこちらを振り向き、分厚い革手袋で覆われた手でリーザの胸倉を掴んで引き寄せた。  リーザは驚いて声を上げる。 「んわ!」 「ボケッとすんな」  シムルグの低い声と共に、蟲の羽音が聞こえる。まさかと思い、シムルグの視線の方向を振り返ると、さっきまでリーザが居た場所のちょ

          「常夏姫と冬蛇の王」第10話 駆蛇の試しの儀

          「常夏姫と冬蛇の王」第9話 第一王子と第三王子

           スメイア国周辺は、霜蟲による凍霜害が年々酷くなっているという。更に冬は長く、夏は短くもなっているらしい。  そのため、霜祓いは重宝される。そして、スメイア王族の認可が下りた宮廷霜祓いとは、スメイア国の宝である〝駆蛇〟に取り憑く霜蟲を祓うことが出来る者だけが成れる、選ばれし霜祓いなのだと。  つまり、今からリーザが受ける〝試しの儀〟とは。駆蛇に取り憑く霜蟲を祓えるか否かで、宮廷霜祓いに成れるか否かが決まる、試練であるのだった。 「クジャ? ってなに?」 「〝駆蛇〟はスメイ

          「常夏姫と冬蛇の王」第9話 第一王子と第三王子

          「常夏姫と冬蛇の王」第8話 初めての夫婦二人きり

           中庭にいるリーザとシムルグのもとへ、息を切らしたラースタチカが駆け寄ってくる。 「すまない! 他の霜祓いたちの応援を呼びに行っていて遅れた……! シムルグ兄者、リーザ殿。無事か!?」 「おー。流石はラース。出来る仕事が速ぇ。こっちは問題ねぇよ、気にすんな」  シムルグは屈めていた身体を起こして、ラースタチカを振り返る。リーザも慌てて涙をぬぐいながら、ラースタチカに小さく頭を下げた。 「ラースタチカさん、ありがとう。本当に、助かる。わたしの小さな夏呼びだけじゃ、あの霜蟲

          「常夏姫と冬蛇の王」第8話 初めての夫婦二人きり

          「常夏姫と冬蛇の王」第7話 初めての言の葉

           リーザはシムルグを待つ間、ラースタチカに連れられてスカラ城内の中庭を見渡せる吹き抜けのような場所にいた。  ラースタチカと共に軽く話をしながら、吹き抜けの一階部分に設置された長椅子に並んで座り、中庭を渡って城内を行き交う人々の流れをそれとなく目で追う。 「それで、どうだった。リーザ殿——君の夫となった、シムルグ兄者は」  ふと、ラースタチカが視線だけを中庭からリーザに移して、そんなことを尋ねてくる。リーザはぎゅっと拳を握ると、少しばかり前のめりになりながらラースタチカに

          「常夏姫と冬蛇の王」第7話 初めての言の葉

          「常夏姫と冬蛇の王」第6話 初めての夫婦対面

          「おはよう、シムルグ」  茫然と第一王子にしばらく見惚れていたリーザは、いつの間にかすぐ隣に立っていたソーカル王の声で我に返った。  ソーカル王の呼び掛けからして、この第一王子の名は「シムルグ」というらしい。そんなことを考えながらも、慌ててリーザは木円盤を腕に抱えて、ソーカル王の二歩後ろへと控える。 「もう、夏が来たか。……国内外の情勢、今年の凍霜害の方はどうなってる? ソーカル」  シムルグはソーカル王へと慣れたように尋ねながら、眠たげに片手で両の目尻を抑えてすっとそ

          「常夏姫と冬蛇の王」第6話 初めての夫婦対面

          「常夏姫と冬蛇の王」第5話 冬蛇の目覚め

           東塔の堅牢な扉が開け放たれた。  中には壁伝いに螺旋階段が上へ上へと続いているのが見える。そして、円柱型の塔の底——冷たい円状の石床の中心。そこに石像の如く坐したままの、〝たったひとりの彼〟が居た。 「……霜蟲?」  リーザは一歩、東塔の中に踏み入ってそう小さく声を漏らす。彼は、大量の霜蟲に覆われており、その肌さえも見ることが出来ない状態であった。  常人であれば既に死んでしまっている状態だが、彼からは確かに、凍えているような震える寝息を感じる。  それを一瞬で見極めた

          「常夏姫と冬蛇の王」第5話 冬蛇の目覚め

          「常夏姫と冬蛇の王」第4話 不変の第一王子

           汪夏北都をソーカル王たちと共に発って、三日が過ぎ。  四日目にしてようやく、リーザたちはスメイア国の王城へと辿り着いた。リーザは幼い頃から乗馬の心得もあったので、道中新しい馬を与えられ、現在はラースタチカと共にソーカル王の後ろを並んで進んでいる。スメイア国の王城、スカラ城へと続く門をくぐると、王の帰還を知らせる角笛が高らかに鳴り響いた。  リーザとラースタチカが城門をくぐってすぐ馬を降り、城の者に馬を任せていると、既に馬を降りたソーカル王が声を掛けてくる。 「リーザ君、さ

          「常夏姫と冬蛇の王」第4話 不変の第一王子

          「常夏姫と冬蛇の王」第3話 恩返しと王命

          「ちょっと~見てた? ラース君。僕の渾身の王様的演技! 最っ高に王様してたよね!?」 「黙れ。危うく本当に戦となるところだったんだぞ」 「いいじゃない、戦。二年前には、汪夏側からちょっかいかけてきてたんだし。うちの子たちも皆戦に飢えてきた頃でしょ」 「その〝ちょっかいの詫び〟を帝都で聴き入れた帰りが今だろう。これ以上厄介事をむやみに増やそうとするな。あと、戦に飢えているのは貴方だけだ、この暴君が……」  リーザはまた、眩暈を引き起こしてしまいそうなほどに困惑していた。  今

          「常夏姫と冬蛇の王」第3話 恩返しと王命

          「常夏姫と冬蛇の王」第2話 蛮族の王

           リーザは見世物屋の主人が見世物料を収集し終わるのをしばらく待っていた。  下僕の証である両手にはめられた鉄枷と鎖をぼーっと眺める。すると不意に、観衆たちの塊から聞こえてくる喧騒がさらに大きくなったので、視線を上げた。 「貴様か! 妙な妖術を操る異邦人とは!」  観衆の人々を搔き分けて、数人の男たちがリーザの下へと迫ってくる。男たちの服装を見て、思いがけずリーザは息を呑んだ。男たちは、汪夏帝国の国章付き軍服を身に纏った帝国兵であったのだ。 (そんな、どうして北都に帝国兵

          「常夏姫と冬蛇の王」第2話 蛮族の王

          「常夏姫と冬蛇の王」第1話

          霜蟲と呼ばれる蟲によって大地が凍てつく北大陸の汪夏帝国に渡ってきた異邦の娘、リーザ。 リーザは己の「夏を呼ぶ」特異な体質を活かし、霜蟲を追い払う「霜祓い」となることを夢見ていた。 しかし、不運が度重なったリーザはとある日、汪夏帝国兵に捕らえられてしまう。 そこでリーザは騎馬民族国家「スメイア国」の王に助けられる。己の命を救ってくれたスメイア王に恩返しを申し出たリーザは、スメイア王の王命によって、三百年を生きると云われるスメイア国が第一王子シムルグへと嫁入りすることになってしま

          「常夏姫と冬蛇の王」第1話

          自己紹介。物書きです。

          はじめまして。 根占 桐守、と申します。物書きです。 いつか、自分の生んだたくさんの物語を世に広く深く、面白く伝えることを夢見ております。 書いている物語は、ライトノベルから純文学まで幅広く。詩なども書きます。短編、中編、長編、いずれもよく書きます。 好きなジャンルは大河ファンタジーや群青劇。しかし、少年漫画風のバトルものも大好きです。少女漫画や少女小説も好きです。好きなものはたくさんな、雑食系なのかもしれません。 趣味はやはり物語を書くこと。そして、音楽鑑賞や映画鑑賞、

          自己紹介。物書きです。