見出し画像

登-11 登記って内容は真実なの?

不動産登記法は登記の手続き関する法律とお話ししました。

登記法は登記する権利は4つ定めています。

  • 新しい不動産の登記(表題登記)

  • 新しい不動産の所有権登記(所有権の保存登記)

  • 不動産の権利の変更登記(所有権の移転登記)

  • 不動産の滅失の登記(滅失の登記)

この中で新たに土地・建物が生じた時や、土地・建物の物理的状況が変化(地目変更や建物増築等)が生じた時は、所有者に一ヶ月以内の変更登記申請する義務を課しています。
表題登記と滅失の登記については、登記申請の義務がありますが、所有権の保存、移転については義務はありません。(現状)

そのため、登記を忘れたり、故意に申請をしなかったことにより所有者が曖昧になっている登記はかなりの数あります。
特に相続は相続人に意志で登記をしないケースもあり、社会問題になっています。そのため、相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行)が始まり、相続により(遺言による場合を含みます。) 不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。(これについては別な機会に解説します)

所有権については義務がないため、実際の取引と登記情報は必ずしも一致しないことが多々あります。
一般的に売買契約では登記を調べ、所有者を確認します。
それ以外にも抵当権等の所有権以外の権利の登録状態などを調べた上で売買契約を締結しますが、登記情報を信じて売買契約をした場合はどのようになるのでしょうか。

登記の公信力

公信力とは登記情報を信じて取引を進めた者に対して、その信頼通り(記載内容)の効果を認める力を言いますが、登記にはその公信力がありません。
これは重要なことです。
「えっ、登記を確認して契約したのに・・・。」と嘆いても民法では保護されません。
ただし、判例で推定力は認めています
登記に書かれた権利関係が存在するものと推定される効力のことで、推定力に基づいて取引された者は無過失とされます。
ただし、これも民法では保護されません。
そのため、取引が完了していても覆されることがあります。

これを踏まえて次の問題でポイントを確認しましょう。

登記を確認しない取引

よく試験に出される問題で、「抵当権設定があったことを知らずに・・・。」と言う出題があります。
このような場合、登記を事前確認しないで取引を行った人は過失があると判断されます。
「・・・知らずに」は過失があった場合にと読む必要があります。

Aさんが物件に抵当権が設定されていることを知らずに、普通賃貸借契約をしました。
抵当権が履行され所有者が変わった時、Aさんの賃貸借契約は有効でしょうか。

原則、大家さんとAの関係は人と人の契約です。
大家さんの所有権が無くなった以上、Aの賃貸借契約は終了します。
もちろん、新しく取得した方が賃貸借契約を新規に契約する選択をすることも可能です。
退去してくださいと言われれば出ていくしかありません。
ただし、生活の場をいきなり奪われると困ります。
そこで、6か月間の退去猶予期間を与えられます。

では、この時、敷金返還請求は誰にするでしょうか。
敷金を定めている契約は賃貸借契約です。
当然、契約書に記載がある大家さんに返還請求をします。

一見、不条理なように思えますが、Aさんは賃貸借契約時に抵当権の設定の有無を確認すべきと言うのが民法の考え方です。(実際、賃貸借契約でそこまで確認する人は皆無でしょうけど}
Aさんは契約時に過失があったとなり、退去することになります。
抵当権が設定されていれば競売により所有者が代わることも想定でき、それを承知で契約をしたと見なされます。
猶予期間があるのは弱者を救済するために定められています。

登記を確認しない過失の問題は、いろいろな過去問でも組合わせて出題されます。
登記を確認せずに不動産契約をした人は「過失がある」と覚えておきましょう。

もうひとつ、賃貸借契約は人と人の信頼関係で契約されます。
敷金を預けるのも大家さんを信用して預けます。
大家さんが代わっても敷金の返還義務は元の大家さんになることも覚えておきましょう。

最後に登記に記載されている権利は、あくまでも申請者が権利を示す証拠を提出することで登記官が登録した記録であって、その権利が正しいかどうかは確認していないと言うことも覚えてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?