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うちの親父はお人好し

田舎で料理屋などしていると、この時期は地元のばあさんが畑で収穫した野菜を売りに来たりすることがたまにあります。

今日もまた(というか最近いつもうちに来る)ひとりのばあさんが里いもを持ってきました。


また来たかぁ…


正直あまり嬉しいものではないんです。

こういっては失礼ですが、素人が作る野菜なんて形も不揃いなら味もそこそこ。

「見た目は悪いけど味は変わらないよ!」なんてよく言いますが、やはり農家さんが納めるものとは味も全然違います。

それだけ農家さんってすごいんですよね。

(きっと農家さんも同じ意見だと思うんですが)


実はこのばあさん、これまでも何度か野菜を持ってきたのですが、これがなんともしたたかなばあさんなんですよ(笑)

ハッキリ言ってちょっとくせ者。

「スーパーで買うより安いがね(安いですよ)」


何度か買ったせいか、味をしめてまた売りにきた感じがしました。


正直今日は昼からご予約があったので、さすがに親父も断るだろうなと思っていたんですが、

「はいはい、じゃあそれくれてくんねかの(いただけますか?)」ですって。


えっ、買うの?それどうすんのよー?

里いもはもうあるじゃないの…


「いくらだの?(おいくらですか?)」

「そうやんねー(そうですねー)、300円」

この人いつも売値があいまいなんです。

しかも「はいじゃあこれ」と渡すと、

「あ、もうしゃけねっけ(申し訳ありません)あと消費税♪」

(はぁ?このばさ(ばあさん)なに調子こいてんだよ)

と一瞬イラッとしましたが、当の親父はニコニコして

「あっ、そう(笑)」

「これじゃ全然安くねぇのぉ(安くないねぇ)」


結局、またばあさんの良いカモになってしまいました。 



でも、そんなところが親父の良さなのかもしれません。

他にもうちの親父は托鉢で回ってくるお坊さん(田舎にはまだそういう光景が見られます)にもお米やお金を渡したりもします。

僕なんかの世代は「それ本当にお坊さんなの?」ってちょっと疑っちゃいますよね。

野菜を持ってくるばあさんにしたって全然可愛げがないし。

毎度持ってこられても困るなぁなんてつい思ってしまいます。


もしかしたら親父にとってはそれが本物のお坊さんじゃなかったとしても構わないのかもしれませんし、ばあさんがつけ上がっても良いのかもしれません。


どんな形であれそれがその人の役に立つなら。


もしかしたらそんな風に思ってるのかもしれません。

人相もコワモテですし、口下手な親父です。

きっと相手の方から寄ってきてくれるのが嬉しいのかもしれませんね(笑)


こうやって振り返ってみると、この田舎ですら時代と共にそういった光景はどんどん少なくなってきています。


なんだかそういうのも悪くないかもな。


不揃いの里いもとお人好しな親父の姿を見てふと、そんな風に思ったのでした。

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高橋 優介@越後妻有の料理人タカハシ
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